「ジェンダー・ギャップ指数と少子化対策」 | 紙風船

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中学校と高校で社会科を教えています(いました)。街探検や銭湯が大好き。ピクトグラムや珍しいものが好き。でも一番の生きがいは、子どもたちに「先生の授業、たのしい」と言ってもらえることです。

6月21日世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF,「The Global Gender Gap Report 2022」を公表しました。

その中に各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)があります。

 

この指数は,「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから作成されて,総合的にジェンダー・ギャップ指数を算出しています。

日本の順位は125位/146か国 

(データは「内閣府男女共同参画局総務課」より)

なんと先進国の中では最低レベル。

アジア諸国の中でも中国や韓国,東南アジア諸国にも低い結果が続いています。

昨年度は116位/146か国,一昨年度は120位/156か国と横ばい。

 

一目で分かるように,

特に,政治分野のジェンダー・ギャップが酷すぎます。

健康は平均寿命を思えば女性優位。

教育だって,進学率に男女の差は少ない。

大学(学部)への進学率は,女子48.2%,男子55.6%と男子の方が7.4%ポイント高い。 しかし,女子は全体の8.9%が短期大学(本科)へ進学しており,これを合わせると,女子の大学等進学率は57.1%となる。

 

ともかく政治分野。

日本は133位で女性国会議員比率は15.4%。

参考までにサウジアラビアは同ランキングで98位,女性議員比率は19.87%であり,ほんの数年前まで女性に参政権がなかった国よりも圧倒的に低い結果になっています(サウジに関してはデータがアヤシイ可能性がありますが)。

 

●内閣官房2022年4月1日付け発表

国家公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合は

過去最高!…って37.2%ですよ。

 

 

「目標である35%以上を達成するとともに,本フォロー アップの開始以降,最高数値となりました」と高らかに謳っておりますが,おいおいまだ1/3でっせ。何をはしゃいでおるのやら。

 

●内閣人事局2022年7月発表

国家公務員の管理職における女性比率は過去最高!

って。「指定職」に占める女性の割合は5%,▽課長や室長級が7%,▽国の地方機関の課長や本省の課長補佐級が14%。

いやぁダメでしょ。

 

 

――― さて,そこで何を言いたいのかというと。

この人たち,国会議員や高級官僚たちが「少子化対策」をひねりだしているわけですよ。

男性超優位業界の皆さんたちが

 

少子化対策…結局のところ子どもを出産するのは女性です。

女性のことは男性に分かるはずはないなんて言えば,

これはまた差別的発言になるのかもしれません。

けれども,どうでしょう。

 

毎度書いていますが,少子化対策3兆円で女性が出産しやすくなる,子育てをしやすくなる環境を整備するとは,言い方はソフトですが,結局は「カネをやるから産めよ,殖やせよ」の発想でしかないわけです。女性に努力を強いているわけです。

 

この政策の向かう先には,〈結婚しない女性,子どもを出産しない,できない女性〉に対する社会的偏見がはびこる社会が見え隠れしませんか。

 

歴史を長い目で見ると,出生数が増加し続けている社会には共通点があるような気がします。

―― それは,その社会に住む人々が〈明るい未来〉を感じられているということです。

 

何だか漠然とした書き方だし,そんな情緒的なことで社会が動くのかと疑問に思う方はいるでしょう。

 

近代日本を例にとってみましょう。

江戸時代から明治時代に移る頃から,人口は急速に伸び始めます。この時代に外国からの人口流入はないので,人口の伸びは自然増,すなわち出生数が大幅に増加したのです。

 

この時期に起きた変化をいくつかあげてみましょう。

「身分制度」が廃止されました。居住・移転及び職業選択の自由が生まれます。

大名領が消滅することで関所や通行手形も廃止されて日本全国の交通が自由になります。

農業が圧倒的だった社会に,工業という新しい産業が登場します。土地を持たない人びとに現金収入の道が開けます。

 

義務教育が開始されて,女性も男性と同じく学校に通うことができるようになりました。製紙・紡績などの花形産業に女性が進出して,現金収入の道が開けます。

 

さらに,戦後の民主化により,女性も参政権を獲得します。家父長制の廃止など両性の平等を前提とした法整備が進みます。

 

明治維新,戦後の民主化という日本歴史の大転換点は,

女性の地位向上,社会進出と大きく関連しているのです。

 

そして,

「明るい未来」を感じることができた人々は,

国家が「産めよ殖やせよ」と旗を振らなくても,

自然と子どもを産み育てていき,人口は増加していったのです。

 

現在,日本は「歴史上初めての人口減少社会」に突入しています。

これを「人口増加社会」に転じることは不可能と思った方が良いでしょう。

しかし,これを「社会変革のチャンス」に転じることは可能です。

目標は「少子化対策」ではなくて「社会変革」です。

 

その一つの,そして大きな方向性として,ジェンダー・ギャップの解消があげられると,ボクは思います。

 

あなたはどう思われますか。