『本当に仕事に戻らなくて大丈夫なんですか?』
石川さんは、私を家まで運び、食事まで作ってくれて・・・
本当に会社に戻らなくて平気なんだろうか・・・。
「うん、大丈夫。今の時期、暇なんだよ。それに、カオルコちゃんと一緒に居たいしね。」
『・・・どうも。』
そんなストレートに言われると・・・
私だって照れる。
「ん?照れてる?」
ニコニコと笑う。
『・・・初めて石川さんを見たとき、なんか胡散臭いと思いました。』
「え!?何?悪口?」
石川さんの悲痛な叫びは無視して話を続ける。
『なんか、作り物みたいな感じがして。いつも笑ってて。笑顔は素敵だけど、、、でも、目は笑ってない。』
「・・・悪口?」
『今は違います。とっても嬉しそうに、楽しそうに笑う。それと、、悲しい顔もしてる。ちゃんと感情があるんだって、分かったから。こっちの笑顔の方が素敵です。』
「・・・・。」
『照れてます?』
「照れてない!」
と言いつつも若干、赤面している。。
「・・・俺、小さい頃から、親の顔色とか周りの大人の顔色ばっかり伺ってきたんだ・・・親は出来のいい兄貴しか興味が無かった。」
ポツリポツリと話し始める。
「俺が勉強出来たり、ヒョウキンにしてると母親が笑ってくれるんだ。悲しい顔をしていると怒るんだ。だから、どんな時でも笑った。道化だね。そしたら、、、いつの間にか、本当に笑うことができなくなった。とりあえず、笑顔を作ってはいるけど、なんの感情もない。人間関係は上辺だけ。友達なんていない。」
・・・。
私は黙って彼の話に耳を傾けた。
「・・・誰にも嫌われたくない。でも、好かれたくもない。相反する感情がいつも取り巻いていて・・・でも、君に出会って、君と話して、君の笑顔を見ると、、、笑えるんだ。一緒にいるだけで、楽しくて。君にだけは、嫌われたくないし、好かれたい。そう思うんだ。」
と、優しい笑みを浮かべる。
『私、石川さんの笑顔、好きです。とっても、優しく笑うから。でも、石川さんが、怒ったり悲しくなっても、嫌いになんてならない。むしろ、一緒に解決したいと思う。友達なんだから当然でしょ?』
石川さんは、母親に愛されたかった。
道化を演じる事で、母親の愛が手に入ると思っていたんだ。
「・・・俺、やっぱり、カオルコちゃんが好きだよ。」
『私も好きです。』
「友達でもいいから傍に居たい。」
『石川さんは辛くない?』
「君が居ない方が辛いよ。」
とても切ない声で、切ない表情でそう言う・・・
胸が苦しくなったんだ。
「少し休んだら?」
『うん・・・』
どれくらい時間が経ったのか。
物凄い足音で目が覚めた。
「おい、カオルコ大丈夫か!?」
あれ?
潤さん?
『おかえりー。』
「おかえり!・・・じゃねーよ!!身体は大丈夫なのかよ?」
『うん、大丈夫。』
「顔色悪すぎだろ?」
心配そうな表情を浮かべている。
『潤さんこそ大丈夫?』
「俺は大丈夫。てか、俺の心配より、自分の心配しろよ。」
そういって、私の頭を撫でる。
「カオルコちゃん。」
石川さん!!
まだ居てくれたんだ!!
「彼も来てくれたみたいだし、俺は帰るよ。」
『今日は有難うございました。』
「こちらこそ。じゃあね。」
『下まで・・・』
「いいから。ゆっくり休むんだよ?」
『はい。』
結局、潤さんがエントランスまで石川さんを送ってくれた。
2人は何か話したんだろうか?
『潤さん、有難う。』
「ん。何か欲しいものあるか?」
また、優しく頭を撫でる。
・・・ドクターなんだから、少し落ち着いて!
どうみても何ともないし。
焦りすぎ!!
それほど心配してくれてる?
『・・・潤さんが欲しい。』
「・・・・んだよ、それは反則。」
私の身体をギュッと抱きしめた。
『身体も心も全部欲しい。』
「・・・そんなもん、カオルコに全部やる。だから俺にもくれよ?」
『もうあげてる。』
「まだ、身体もらってねー。今度もらうから。」
と意地悪そうに笑う。
「心は?くれんの?」
『もうあげてる。』
「・・・アイツ。」
『アイツ?』
「石川ってヤツ。アイツ、カオルコの事好きだと思う。オマエの・・・元カレ?元々彼?とか?」
『違うよ。会社の友達だよ。』
「本当に?」
『うん。』
「・・・ならよし!」
もしかして、嫉妬?
潤さんが私の事で嫉妬してくれたの?
不謹慎だけど嬉しい。
『私は潤さんが大好き。』
「俺も。」
2人で笑い合った。