美花です！
【蓮キョｄｅ都市伝説】第３弾です。
読書傾向がひっそり猟奇的な私、都市伝説も大好きです。
キョコたんが新人ＯＬさん、敦賀さんが…な、お話の続編です。
蓮キョだからこそのお話つくりをしておりますが、ええええと思われる蓮キョスキーさんが多いと思いますので、立ち入りには十分お気をつけ下さいませね。
元ネタをご存知の方も、ご存知でない方も、この手のお話がお好きな方にお楽しみいただけたらなと思います。
ではでは、どうぞ～
＊＊＊
「あ、最上さん？俺だけど」
残業続きだった一週間の終わり。
蓮がキョーコの携帯に連絡をすると、携帯越しに驚いたような彼女の声が返ってきた。
『わ、敦賀さん！今日はお仕事、もう終わられたんですか？』
目を丸くするキョーコの表情が今にも目に浮かぶようだ。
職場の駐車場に向かいながら携帯で話していた蓮は、そっと苦笑を零す。
彼女が驚くのにも理由がある。
このところの蓮は、携わっていた大きなプロジェクトにずっと掛かりきりで、毎日帰宅が０時を超えていたのだ。
今の時刻は夕方の６時前。蓮の状況を知っているキョーコが驚くのも、無理がなかった。
地下駐車場に着いたエレベーターから降りた蓮は、
「一応、一区切りついたんだ。それで、たまには早く上がろうって話になってね」
キーケースを取り出しながら、これまでの無味乾燥な日々を思い返す。
付き合ってもいない関係では、真夜中と言ってもいい時間の仕事上がりに連絡するのは、さすがに気が引ける。
おかげでこの一週間、蓮は殆どキョーコと話す機会がなかったのだ。
彼女に片想いしている蓮にとって、話すことすらままならないこの一週間は十分に長い時間だった。
だからこそ、飲みに行こうと言う同僚の誘いも笑顔で交わして、こうして彼女に連絡を入れていた。
キョーコの声が聞きたかったし、久々に彼女の顔が見たかった。
そう思った蓮は、
「あのさ、最上さん。もし今夜」
これから時間が空いていたら、食事に行かない？
早速そんな彼女不足を埋めるべく、そう続けようとしたのだけれど…
『あっダメよう、お肉は特売品の割引シールがある方にしてー！すぐに食べちゃうんだから、そっちの方がお得だわ！』
…いきなりそんな声が飛び出して来て、驚いた蓮は瞳を瞬かせてしまった。
『特売品』？『すぐに食べちゃう』？
耳を澄ませば、携帯の向こう側から人の気配と店内アナウンスのような声が聞こえてくる。
彼女はどうやら、今、どこかの店の中にいるらしい。
「…最上さん？」
名前を呼べば、慌てた様子のキョーコが声を上げる。
『あ、ごめんなさい、敦賀さん！えーとその、こちらのお話でした』
「最上さん…もしかして、今、誰かと一緒なの…？」
申し訳なさそうに謝るキョーコに、思わず蓮は、探るようにして問い掛けてしまう。
もしかしたら彼女は今、蓮の知らない男と一緒にいるのかも知れない。
そう思うと嫌な汗が滲んで、心が逸る。
いや、知っていようがいまいが、どちらにしてもそれは由々しき事態だ。
自分以外の誰かだなんて、考えただけで目の前が闇が降りたかのように暗くなる。
仕事ばかりにかまけていたこの一週間の間に、その隙を付くようにして他所の男が彼女に近付いていたら。
…そんな思いが過ぎった蓮は、瞬く間のうちに、後悔と強い焦燥に襲われてしまうのだけど…
『はい、そうなんです！実は今夜、お友達のモー子さんがうちにお泊まりに来てくれてるんです…！！』
そんな蓮の思惑を他所に、悲鳴に近い声を上げたキョーコに蓮は、あれ？と思う。
「えーと、『モー子さん』て」
『はい、同期入社の琴南奏江さんです！お隣の市にある支店に勤めている、し、し、親友なんです！』
『親友』と言う言葉を口にすることが照れ臭かったのだろう。
彼女から、きゃーっと言う、嬉しげなような、照れたような声がまた響いて…
「…女の子？」
思わず問うと、
『え、勿論ですよ？』
むしろ、他に何があるのだと言うような不思議そうなトーンの声が返ってくる。
確かにその通りだ。
キョーコの住むアパートは、女性専用で男子禁制の物件なのだ。
そういう決まり事を必ず守る彼女が、その手の違反をどんな理由があれ、するはずがない。
『今スーパーで、一緒にお夕飯のお買い物中なんです！これから一緒にご飯を作るんですよ！それで明日は、一緒にお買い物に行く予定なんです！』
そう言うキョーコの様子はいつになくハイテンションだ。
それはそれで、ちょっと嫉妬の火種に火が点きそうになるけれど…
相手が女の子と聞いて、蓮は堪らず安堵の吐息を零す。
『モー子さん』と言う不思議な呼び名の同僚の名前は、以前より彼女から何度も聞いていた。
仲良くしている女の子で、勤務先が近いこともありよく会う友人とのことだった。
…全ては蓮の、疑心暗鬼だったのだ。
そもそも彼女が誰かと一緒にいるというだけで、相手が男だと思うのは随分と短絡的だ。
多分それは、蓮自身の彼女に対する自信のなさが招いたこと。
いまだ自信が持てず、つい勝手に心配事を作っては、嫉妬心ばかりが先に出てしまうのだ。
『私、これまで女の子の友達っていなくって、こういうことが初めてで…凄く、嬉しいんです』
携帯越しに、キョーコの柔らかな声が聞こえてくる。
今のキョーコは白い頬をほわりと上気させ、幸せそうな笑顔を浮かべていることだろう。
そんな彼女の表情を思い浮かべて、駐車場に停めた自分の車に辿り着いた蓮はそっと肩を竦める。
キョーコのこの様子では、蓮が自分に連絡を入れた理由に思い至るのは、きっと今より先のことだろう。
蓮には、彼女のそんな舞い上がり振りに水を差すことは出来なかった。
女の子同士の、そう言う時間も大事なものだ。
自分ばかりが彼女を独占したがるのはいいことではないし、そんな権利は今の蓮にはまだない。
「そうか…それは、楽しみだね？」
だから、そう自分に言い聞かせた蓮が苦笑交じりに微笑むと、
『はい、とっても！』
キョーコから、嬉しそうな、元気な声の返事が返る。
そんな声を聞くと、彼女に会うことが出来ない蓮までもが嬉しい気持ちになってくる。
彼女が幸せならば、それは蓮にとっても喜ばしいことだ。
（…またの機会はいつだってあることだし、ね）
それに、ゆっくりと関係を進めるつもりとも、心に決めている。
焦りは禁物だし、押し付けすぎはもっとよくない。
「じゃあ、また。楽しんで来てね、最上さん。帰りは女の子だけなんだから気をつけて」
予定のある中、余り長くキョーコを引き止めるのも迷惑だろう。
そう思った蓮は、名残惜しい思いで通話を切り上げる。
…そして、自分の車に背中を預けた蓮が大きくひとつ、溜息を吐いていると…
「あれー訳有りげに急いで帰った男がまだいるよ、どうしちゃったのかなー！」
声が掛かって顔を上げる。
そこにいたのは、同じチームの同期だった。
今から飲みに行くのだろう、チーム内の男女を引き連れて来ている。
「貴島君」
名を呼べば、人懐こい笑みを浮かべた彼が傍まで歩み寄って来た。
「もしかして、例の彼女に振られちゃった？」
「ちょっと…縁起でもないこと、言わないでくれるかな」
貴島の言葉に軽く顔を顰めた蓮は、携帯を片手にそっと肩を竦める。
人の恋愛事に興味津々な彼は、最近の蓮の行動にも抜かりなく目を配り、その手の話題で何かと他意のないからかいの声を投げてくるのだ。
蓮がキョーコのことをあまり語りたがらないからこそ、余計に興味は募るらしい。
そんな彼に、蓮は笑って頭を横に振る。
「ご心配なく。ただ、予定が合わなかっただけだよ」
そう、これは単にタイミングの問題だと思う。
キョーコにとっての優先順位が『モー子さん』と自分とで、彼女の中でどの辺に位置するのかは…
とりあえず、どうやらやきもちやきらしい自分は、考えないでおくべきだと思う。
すると、
「ふーん？そしたら予定はなくなったわけだ。どうする、一緒に飲みに来る？」
グラスを傾ける仕草で彼に問われて、
「ん、そうしようかな」
暫し考えた蓮は小さく頷く。
キョーコに習って、同僚と交流を深めるのもいいことだ。
すっかり彼女に会える気でいたからこそ、それが不発に終わった人寂しさも、実はあった。
「よーし、そしたら今夜こそは、敦賀君のコイバナ聞かなきゃね！」
「うーん。そこは貴島君の話のほうが、波乱万丈で聞き応えがあるんじゃない？」
キョーコにはまた明日の夜にでも連絡してみようと、話をしながら思いつつ…
蓮は同僚達と共に、職場を後にしたのだった。
…この後、彼女に起こる事件にも気付かぬままに。
≪ＳＩＤＥ．Ｋに続きます≫
事件発生のプロローグ編ですね。
敦賀さんの同僚は貴島さん、そして社さんは…
なんとなーく、都市伝説１に出て来たキョコたんの高校の担任の先生を想定していました。
どうでもいい裏設定ですが、高校教師…似合いそうです、社さんｗ
【蓮キョｄｅ都市伝説】第３弾です。
読書傾向がひっそり猟奇的な私、都市伝説も大好きです。
キョコたんが新人ＯＬさん、敦賀さんが…な、お話の続編です。
蓮キョだからこそのお話つくりをしておりますが、ええええと思われる蓮キョスキーさんが多いと思いますので、立ち入りには十分お気をつけ下さいませね。
元ネタをご存知の方も、ご存知でない方も、この手のお話がお好きな方にお楽しみいただけたらなと思います。
ではでは、どうぞ～
＊＊＊
「あ、最上さん？俺だけど」
残業続きだった一週間の終わり。
蓮がキョーコの携帯に連絡をすると、携帯越しに驚いたような彼女の声が返ってきた。
『わ、敦賀さん！今日はお仕事、もう終わられたんですか？』
目を丸くするキョーコの表情が今にも目に浮かぶようだ。
職場の駐車場に向かいながら携帯で話していた蓮は、そっと苦笑を零す。
彼女が驚くのにも理由がある。
このところの蓮は、携わっていた大きなプロジェクトにずっと掛かりきりで、毎日帰宅が０時を超えていたのだ。
今の時刻は夕方の６時前。蓮の状況を知っているキョーコが驚くのも、無理がなかった。
地下駐車場に着いたエレベーターから降りた蓮は、
「一応、一区切りついたんだ。それで、たまには早く上がろうって話になってね」
キーケースを取り出しながら、これまでの無味乾燥な日々を思い返す。
付き合ってもいない関係では、真夜中と言ってもいい時間の仕事上がりに連絡するのは、さすがに気が引ける。
おかげでこの一週間、蓮は殆どキョーコと話す機会がなかったのだ。
彼女に片想いしている蓮にとって、話すことすらままならないこの一週間は十分に長い時間だった。
だからこそ、飲みに行こうと言う同僚の誘いも笑顔で交わして、こうして彼女に連絡を入れていた。
キョーコの声が聞きたかったし、久々に彼女の顔が見たかった。
そう思った蓮は、
「あのさ、最上さん。もし今夜」
これから時間が空いていたら、食事に行かない？
早速そんな彼女不足を埋めるべく、そう続けようとしたのだけれど…
『あっダメよう、お肉は特売品の割引シールがある方にしてー！すぐに食べちゃうんだから、そっちの方がお得だわ！』
…いきなりそんな声が飛び出して来て、驚いた蓮は瞳を瞬かせてしまった。
『特売品』？『すぐに食べちゃう』？
耳を澄ませば、携帯の向こう側から人の気配と店内アナウンスのような声が聞こえてくる。
彼女はどうやら、今、どこかの店の中にいるらしい。
「…最上さん？」
名前を呼べば、慌てた様子のキョーコが声を上げる。
『あ、ごめんなさい、敦賀さん！えーとその、こちらのお話でした』
「最上さん…もしかして、今、誰かと一緒なの…？」
申し訳なさそうに謝るキョーコに、思わず蓮は、探るようにして問い掛けてしまう。
もしかしたら彼女は今、蓮の知らない男と一緒にいるのかも知れない。
そう思うと嫌な汗が滲んで、心が逸る。
いや、知っていようがいまいが、どちらにしてもそれは由々しき事態だ。
自分以外の誰かだなんて、考えただけで目の前が闇が降りたかのように暗くなる。
仕事ばかりにかまけていたこの一週間の間に、その隙を付くようにして他所の男が彼女に近付いていたら。
…そんな思いが過ぎった蓮は、瞬く間のうちに、後悔と強い焦燥に襲われてしまうのだけど…
『はい、そうなんです！実は今夜、お友達のモー子さんがうちにお泊まりに来てくれてるんです…！！』
そんな蓮の思惑を他所に、悲鳴に近い声を上げたキョーコに蓮は、あれ？と思う。
「えーと、『モー子さん』て」
『はい、同期入社の琴南奏江さんです！お隣の市にある支店に勤めている、し、し、親友なんです！』
『親友』と言う言葉を口にすることが照れ臭かったのだろう。
彼女から、きゃーっと言う、嬉しげなような、照れたような声がまた響いて…
「…女の子？」
思わず問うと、
『え、勿論ですよ？』
むしろ、他に何があるのだと言うような不思議そうなトーンの声が返ってくる。
確かにその通りだ。
キョーコの住むアパートは、女性専用で男子禁制の物件なのだ。
そういう決まり事を必ず守る彼女が、その手の違反をどんな理由があれ、するはずがない。
『今スーパーで、一緒にお夕飯のお買い物中なんです！これから一緒にご飯を作るんですよ！それで明日は、一緒にお買い物に行く予定なんです！』
そう言うキョーコの様子はいつになくハイテンションだ。
それはそれで、ちょっと嫉妬の火種に火が点きそうになるけれど…
相手が女の子と聞いて、蓮は堪らず安堵の吐息を零す。
『モー子さん』と言う不思議な呼び名の同僚の名前は、以前より彼女から何度も聞いていた。
仲良くしている女の子で、勤務先が近いこともありよく会う友人とのことだった。
…全ては蓮の、疑心暗鬼だったのだ。
そもそも彼女が誰かと一緒にいるというだけで、相手が男だと思うのは随分と短絡的だ。
多分それは、蓮自身の彼女に対する自信のなさが招いたこと。
いまだ自信が持てず、つい勝手に心配事を作っては、嫉妬心ばかりが先に出てしまうのだ。
『私、これまで女の子の友達っていなくって、こういうことが初めてで…凄く、嬉しいんです』
携帯越しに、キョーコの柔らかな声が聞こえてくる。
今のキョーコは白い頬をほわりと上気させ、幸せそうな笑顔を浮かべていることだろう。
そんな彼女の表情を思い浮かべて、駐車場に停めた自分の車に辿り着いた蓮はそっと肩を竦める。
キョーコのこの様子では、蓮が自分に連絡を入れた理由に思い至るのは、きっと今より先のことだろう。
蓮には、彼女のそんな舞い上がり振りに水を差すことは出来なかった。
女の子同士の、そう言う時間も大事なものだ。
自分ばかりが彼女を独占したがるのはいいことではないし、そんな権利は今の蓮にはまだない。
「そうか…それは、楽しみだね？」
だから、そう自分に言い聞かせた蓮が苦笑交じりに微笑むと、
『はい、とっても！』
キョーコから、嬉しそうな、元気な声の返事が返る。
そんな声を聞くと、彼女に会うことが出来ない蓮までもが嬉しい気持ちになってくる。
彼女が幸せならば、それは蓮にとっても喜ばしいことだ。
（…またの機会はいつだってあることだし、ね）
それに、ゆっくりと関係を進めるつもりとも、心に決めている。
焦りは禁物だし、押し付けすぎはもっとよくない。
「じゃあ、また。楽しんで来てね、最上さん。帰りは女の子だけなんだから気をつけて」
予定のある中、余り長くキョーコを引き止めるのも迷惑だろう。
そう思った蓮は、名残惜しい思いで通話を切り上げる。
…そして、自分の車に背中を預けた蓮が大きくひとつ、溜息を吐いていると…
「あれー訳有りげに急いで帰った男がまだいるよ、どうしちゃったのかなー！」
声が掛かって顔を上げる。
そこにいたのは、同じチームの同期だった。
今から飲みに行くのだろう、チーム内の男女を引き連れて来ている。
「貴島君」
名を呼べば、人懐こい笑みを浮かべた彼が傍まで歩み寄って来た。
「もしかして、例の彼女に振られちゃった？」
「ちょっと…縁起でもないこと、言わないでくれるかな」
貴島の言葉に軽く顔を顰めた蓮は、携帯を片手にそっと肩を竦める。
人の恋愛事に興味津々な彼は、最近の蓮の行動にも抜かりなく目を配り、その手の話題で何かと他意のないからかいの声を投げてくるのだ。
蓮がキョーコのことをあまり語りたがらないからこそ、余計に興味は募るらしい。
そんな彼に、蓮は笑って頭を横に振る。
「ご心配なく。ただ、予定が合わなかっただけだよ」
そう、これは単にタイミングの問題だと思う。
キョーコにとっての優先順位が『モー子さん』と自分とで、彼女の中でどの辺に位置するのかは…
とりあえず、どうやらやきもちやきらしい自分は、考えないでおくべきだと思う。
すると、
「ふーん？そしたら予定はなくなったわけだ。どうする、一緒に飲みに来る？」
グラスを傾ける仕草で彼に問われて、
「ん、そうしようかな」
暫し考えた蓮は小さく頷く。
キョーコに習って、同僚と交流を深めるのもいいことだ。
すっかり彼女に会える気でいたからこそ、それが不発に終わった人寂しさも、実はあった。
「よーし、そしたら今夜こそは、敦賀君のコイバナ聞かなきゃね！」
「うーん。そこは貴島君の話のほうが、波乱万丈で聞き応えがあるんじゃない？」
キョーコにはまた明日の夜にでも連絡してみようと、話をしながら思いつつ…
蓮は同僚達と共に、職場を後にしたのだった。
…この後、彼女に起こる事件にも気付かぬままに。
≪ＳＩＤＥ．Ｋに続きます≫
事件発生のプロローグ編ですね。
敦賀さんの同僚は貴島さん、そして社さんは…
なんとなーく、都市伝説１に出て来たキョコたんの高校の担任の先生を想定していました。
どうでもいい裏設定ですが、高校教師…似合いそうです、社さんｗ