僕ももう30代で
ボクサー定年は一般には37までらしい
昔、海外の都市部で総合のジムに通ったが、そこでは何でも出来た
そこにはもともといじめられっこだったが筋骨隆々になった地元王者とか、こっちが聞けばステロイド売ってくれると噂のヤツとか、人も本当に大勢いて怪しい奴もチラホラいたが楽しかった
スパーリングしていた一人にムッキムキの中国系がいて凶暴なようで気さくでいい人だった
全身に入れ墨が入っていたが職業?については皆んな知らないフリをしていた
背は小さかったが身だしなみも乗ってる車も金持ちって感じだったし何より本当にムキムキだった
ジムで思いっきりでは無いが本当にパンチ当てることで一目置かれていた俺にスパーを申し込んできたが手は俺が上、寝技は向こうが上というトントンの関係だった
たまにいる海外で簡単に手に入る大麻を買って密輸入してどうこうみたいなのじゃなく向こうのディーラーだった
皆んな彼を知っていたし、実力も俺とトントンくらいなのにみんなが彼を尊重した
ある日、違うジムの駐車場で銃撃されて亡くなってしまった
衝撃だったが皆んな一言悲しいとだけ言ってまた何事もなかったかのようだった
やがて思い切って好きなんだが厳しそうで怖そうで敬遠していたボクシングジムにいこうと思い立って、朝5時とか6時くらいにジムにいるボクシング専門の場合型のトレーナーのところでその人の負け越し中の選手のスパーリングパートナーとして無料でチームに入った
このコーチは元アマチュア選手にして元ボディビルダー、彼女の家から追い出されたミュージシャン崩れだったが、再起の譜を作曲しては詠ませてくれたし、皆んなのカウンセラーだった。メイウェザー推しだった俺にモズリーのチャンスを説き、スピンクスのクーニー戦を持ち出してはメイウェザーにおけるアリとスピンクスの複合のようなさがり方について説いた。
投げ銭と聞くとストリッパーやストリートのパフォーマーを連想するがバーで働く氏の元大家兼元カノは身体に刺繍がありずっと自分の髪を触っていた。向こうではストリッパーはイレズミを入れている。
毎朝スパーを終えると次の人達の為にジムを清掃して老夫婦のやってるレストランで皆んなで朝食をとっていたが今考えると掃除手伝ったりちょくちょく朝食奢ったりしてたら厳密には無料ではない。
ある時から店でいつも会うインド系がテーブルを共にするようになった。彼の働く会社で組合がストライキを決行したために生活が乱れた挙句微妙にだけ値上がりした給料の為に税金が上がり結果として損をしたという事だった
その彼がある日、向こうの隅で一人で静かに朝食をとっていた骨太だが痩せた白人男性にずっと睨みを効かせるというか、挑発的だった
その数年前に英国のたしかマーレー?とかいう選手が向こうの史上に残るような銀行強盗に成功してモロッコに飛んだMMAニュースが賑わったりしていてなんだかやだなぁと思っていたが、ちょっとそんな感じの風貌で、ジャケットの袖から入れ墨の走った手首がのぞいていた
するとコーチが耳元で、あれはキラーだから見るな、と言った。
またある時は友人とアジア料理店で食事をし
友人がタバコを吸う間一緒に店先で話をしていたら
パトカーのサイレンが聞こえて来て
店の中から出てきた入れ墨だらけのスキンヘッドの東洋人の男が袋からマシンガン?を
俺らの足元に落としたりもした。
やがて本格的に
ボクシングジムを探さねばとなった
近くにメイウェザーやハットンとやったマイナー王者もいたが酒臭かったり
元オリンピック代表のやってるジムもいったが遠すぎて通いつづけれず、場所も治安の悪い盗んだ車を売るような地域だった
どこのジムにも人は居なかった。
人が多く居たジムはボクササイズジムで
やがて最後に
君たちは勉強しなさい、数学などを勉強しなさい、今の弁護士達は馬鹿だと言っていた元裁判官のお爺さんのジムに行きだした。
そこにはまばらに、後にはそこそこ、人がいた。
新たなコーチに出会い何試合かし試合の度にジムのお金でチームで旅をした。
感謝の気持ちでいっぱいだ。
おまけ