拳闘論① | ボクシング原理主義

ボクシング原理主義

ボクシングの原理原則に則っとりながら技術論や方法論を分析考察。技術や意識の向上を目指したい、いちボクサーの見識メモ。
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 「大興奮の名勝負となったルスラン・プロボドニコフマイク・アルバラド

アンチョビファンからすれば、勝利至上の方法的・技術的な注文をいくらでもつけることが出来る内容だったかもしれないが、そういう綻びの中にこそエキサイトメントというのは介在するようだ。


 この試合の構図は短絡的に言えばファイター対ボクサー

 


まさにジャック・デンプシージーン・タニー



シュガー・レイ・ロビンソンジェイク・ラモタといった風な内容であった。」




                    「アルバラドはダウン取られるまではうまく戦ってたと思うけど?」
 

 「そうだね。

試合結果は10回でアルバラドにストップがかかるプロボドニコフの勝利だったが、もし判定までもつれ込んでいたなら、ある意味ブラッドリー対マルケスのような割れ方をしていたかもしれない。」


 

「というと?」

 
 
  「つまり、ポイント的にアルバラドと見る人も少なくなかったろうし、彼に票を入れるジャッジだっていただろうという事さ。


ボクシングというのは、
両の拳を相手の急所にぶつけるという実に単純明快で合理的な格闘競技だ。

しかし、同時にとても多様な奥深さを持つ。


 今回の試合を観てもわかるが、アルバラドはそれなりにテクニシャンだ・・・でもなんだか危なっかしい印象を受ける。

それは、相手の捨てパンチやある程度のコンビネーションブロー、有効打に対しての防御能力を持つが、最も重要である致命打への防御能力というのが欠落しているからだ。


勿論これは、攻め手の致命打を繋げる能力にも関係するが。」



「確かに、アルバラドはボクシング知識や資格能力は高いと思うが、ボクシングセンスが高いとは思わないな。」 
 


 「逆にプロボドニコフは、相手を追い回す割りに特定のパンチへの回避能力やカウンターやリターン、リアクションパンチにおいてはセンスを感じさせ、立て続けに攻めながらも被害を抑えているんだからね・・・遠征から遠征を続けた正に騎馬民族といった戦法だった。


ところで、
サークリングという動きがあるが、相手を中心にリングを旋回する事だ。

これは今回ボクサータイプであるアルバラドによって使われ続けたようにボクサータイプが重宝する行動だ。

ただ、当然サークリングがボクサーのみのスタイルというわけではない。

東洋やアフリカといった基本的にファイタータイプの多い土地でも、正面突破の難しい相手や火力の高いボクサータイプをカウンターするためにファイターも跳ねたり歩いたりして活用する動きでもあるわけだ。

 ここで私が証明しようとしている事は、
一選手におけるスタイルとタイプのズレだ。


自論を言えば、アルバラドボクサースタイルのファイタータイプという事になる。
逆にプロボドニコフファイタースタイルのボクサータイプだ。」


「そういえば、プロボドニコフは一発の重いパンチ力というよりは速射砲のようなクイックなパンチャーで強く放つ事よりも巧く当てる事でパンチを効かしている印象だ。 

しかも、前傾のプロボドニコフにアルバラドが肩でスマザーしていたが、それをプロボが右手で押して体を入れ替えてから左フックを入れていたな。

あれはメキシカンのボクサータイプがよくやるインファイト捌きだ。なぜかファイターがボクサーにそれをしていたのを観て、何となくアルバラドのボクシングスタイルの付け焼刃感というか、中途半端さを感じた。」


 「要するに、ボクサーであるはずのアルバラドよりファイターであるプロボドニコフのほうがバランスを崩さなかったという事だ。ボクサーがバランスとフットワークでファイターをオフバランスにするのがボクシングの伝統という事を考えれば、実に面白い現象じゃないだろうか?

とてもおもしろかったのが、ダウンがあったラウンド。
ダウン後にアルバラドが後ろ脚重心でL字をやったけども、ロープを背負っていたからプロボドニコフが捌く動きを行使できなかった。

理由は二つ。
手で押すべき土台が存在しなかったのと、其れをつくりに自ら潜り込んだとしても、ロープを自ら背負うようにメリットが無かった。

つまり、ボクサータイプからすれば、リング中央でのスマザーよりはロープを背負った状態での方がスマザーの効果が生まれるという事だろう。リング上の位置に関係する種類の技術という事だが、これがリングジェネラルシップに関係があるのは自明の理なのだろう。

今回の記事は、
ボクシングと採点との関係について踏み込んでみようという試みの前置きですが、なかなかの難題ですな。」



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