20250310




フカフカさん(翔ちゃん)は、
冬毛が抜けて、夏毛になった。


俺は可愛いと思うけど、本人はまだ気に入らないようだ。今日も鏡を覗き込んでは、溜め息を吐いてブツブツ言っている。


『カワウソみたい』  


確かに。そう言えば似てる。ぷぷっ。


『今笑ったか?あ?』


そんな、滅相もない。ぶんぶん首を振って、違いますアピールをする。


「フカフカさんは可愛いよ♡」
 

『お前に言われても、説得力無いしなあ』


「俺ってそんなに信用無いの?」


『だって、雅紀は俺のこと毎日可愛いって言うから……』


「そう思ってるんだから仕方ないよ。ほんとの事だもん」


『……わかってるよ。だから困るんじゃないか。この、くそっ……』


「ん?翔ちゃんどうかした?」


『何でもねえ!こっち見んな!』


どどどどと(照れて逃走


えーと。この場合俺はどうすればいいんだ?
うーん。まいったな。


とりあえず追い掛けるか。やれやれ。
オコジョの恋人も楽じゃないな。


やっぱり、すげえ可愛いけど。





「翔ちゃん?」


お気に入りのスリッパの中にも、カーテンの下にも、翔ちゃんの姿は無い。  


一体何処に隠れてしまったんだろうと心配し始めた頃、俺はある事に気付いた。


さっき閉めたはずの寝室のドアが開いてる。だけど、今の翔ちゃんに、このドアは開けられない。


どう言う事だ?俺達以外に誰か居るのか?


俺は足音を忍ばせ、息を潜めて寝室の中へ足を踏み入れた。そこには、予想外の光景が広がっていた。
 

「翔ちゃん……」 


ベッドの上には、人の姿をした翔ちゃんが、素肌に薄い毛布だけ巻き付け、辛そうに息を吐きながら横になっていた。


「翔ちゃん?いつ人間に戻ったの?辛そうだけど大丈夫?」


声を掛け、額に触ろうとして一瞬躊躇う。触ったからって、消えたりしないよね?それとも、またオコジョに戻っちゃうとか。


「……思ったより熱くないけど、やっぱり冷やさないと。アイス枕取ってくるね」


俺が翔ちゃんから離れようとすると、素早く伸びて来た翔ちゃんの手が俺の手首を掴んだ。


「雅紀、俺を一人にするな」


「翔ちゃん?」


掴まれた手首が緩く引かれるまま、翔ちゃんの上に覆い被さると、閉じていた花のような唇が、俺を迎える為に開かれた。





つづく