創元推理文庫 2019年9月刊
自らの葬儀の手配をした当日、資産家の婦人が絞殺される。
彼女は殺されることを知っていたのか?
作家のわたし、アンソニー・ホロヴィッツは、
テレビ・ドラマの脚本執筆で知り合った元刑事のホーソーンから連絡を受ける。
この奇妙な事件を捜査する自分を描かないかというのだ……。
かくしてわたしは、きわめて有能だが偏屈な男と行動をともにすることに……。
7冠制覇『カササギ殺人事件』に続く、ミステリの面白さ全開の傑作登場!
全一巻478ページ。
先日、同じ作者の『カササギ殺人事件』上下巻を読了したので、
新作にチャレンジ。
全然余裕だろうと読み始めましたが、
またもや、ページぎっしりの小さな字。
そして、カタカナばかりの登場人物や地名。
やはり時間がかかる。
こんな時には、
自分で相関図を書くに限る!!!
さて、本作の名探偵は
元刑事、
現在は「警察のコンサルタント」のホーソーン。
その登場の第一作となるわけで、
キャラ設定に余念がない感じ。
ホーソーンは自分の仕事に自信満々、
他人への配慮など全くなし、
プライベートは秘密主義。
非常に自分勝手で
イヤ~な感じの人物として描かれています。
そんな彼に
自分の担当する事件を本にしないかと持ち掛けられたのが、
作家のホロヴィッツ、
つまり作者自身という設定。
このホロヴィッツに関する記述が
虚々実々、
どこまでがリアルで
どこからがフィクションなのか分からない、
これがこの作品の醍醐味なんでしょう。
まあ、しかしね、
とにかくホロビッツ自身に関する記述が長すぎる。
スピルバーグ監督やピーター・ジャクソン監督が登場、
映画「タンタンの冒険2」の脚本に関する話題を
10ページ以上にわたって展開。
(実際に「タンタン2」の脚本をホロヴィッツが書くことになっていたらしいが、
その話が流れたのをホーソーンのせいにしている!!)
こういう楽屋落ち的なネタ、
ファンには面白いのかもしれないけど、
私はしらける~
他にも作家としての苦労話、
著作権エージェントとのやり取りなど、
事件に直接関係ない部分が、
ページの1/3はあるんじゃないかと…
それがなければもっとテンポよく、
スピード感のある作品になったのではないかと。
まあ、
名探偵ホーソーンシリーズの第一作として、
ワトソン役のホロビッツのキャラ設定も重要なのかもしれませんが、
私にはホーソーンの嫌な奴ぶり以上に、
ホロヴィッツの出しゃばり感、
鼻高々な感じがイヤになったんですけど!!
それを除いたミステリーとしての主要部分は、
私には面白かった。
ちょっと猟奇的な描写が気になって、
作者、もともとが脚本家だし、
映像化狙ってる?とか思ったけど。
次回作以降は、
徐々にホーソーンの謎が明らかになって人間味が出てきたり、
今はお互いに距離のあるホーソーンとホロヴィッツの
「相棒」具合が縮まったり、
そんな楽しみもあるのかな。