村上春樹『街とその不確かな壁』 | applejamな休日

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せかせか暮らしてるのに、気が付けば何もせずに一日が終わってる…
ゆっくりとジャムでも煮ながらお休みの日を過ごしたいなぁ…
大好きな韓国のドラマや音楽、その他もろもろについて書いてます

新潮社 2023年4月刊

全655ページ。
久しぶりの長編書下ろし。
上下巻2冊にすればよかったのに、
と思うボリューム。
最近老眼が進んで、
なかなかピントが合わず、
楽な姿勢で読み続けることが厳しい。
すぐ疲れてしまう。
だから、1冊が軽い方がいいんだけど…

 

しかも、少しずつしか読み進めないから、

すぐにストーリーを忘れてしまって、

何度もページを戻る。

行っては戻り、行っては戻り。

全然進まない…

読もうとして読み終わるのに

2か月くらいかかった。

トホホ。


そんな私の個人的な事情などとは無関係に、
本作も今まで通りの村上ワールド。

17歳のぼくと16歳のきみ。
きみはぼくに高い壁に囲まれた街の話をし、
「本当のわたし」はその街にいるのだと言う。
ぼくは「本当のきみ」に会いたいと強く願う。
「何もかもぜんぶ、あなたのものになりたいと思う」
きみはそう言った。
しかし、突然に、君からの連絡が途絶える。

「ぼくときみ」との物語と、
互い違いに進む「私」の物語。
「私」は「本当のきみ」を求めて
高い壁に囲まれた街に入り込んだ「ぼく」のように思われる。
しかし、明言はされていない。

その街で私は16歳の少女に出会う。
少女は「きみ」であるようだ。
既に「ぼく」ではなくなったおとなの「私」は
その街の図書館で古い夢を読む仕事をしている。

単角獣やら
壁に囲まれた街やら、
図書館で夢を読む話やら、
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と
共通するモチーフが多数。

「あとがき」によると
作者は1980年に
「街と、その不確かな壁」という本作の元となる小説を発表。
しかし、その作品に満足できなかった作者は、
その対応として
『世界の―』を仕上げたものの、
別の対応として『街とその不確かな壁』を完成させた。

原案から40年かけて仕上げた作品。
多分、作者自身の変化が
作品に影響しているのではないかと思う。
本作には、
今までの村上作品には感じられなかった
「初恋への郷愁」を強く感じた。
私が、韓国ドラマの見過ぎなのか?
主人公が川(時?)を遡って若返っていくところの描写も、
妙に生々しく感じたのは、
私自身が最近老いの自覚を強めているからか?

「今まで通りの村上ワールド」と最初に書いたけど、
「少しずつ変化していく村上ワールド」といった方が正しいのか?

作者と同じ時代を生きて、
作品の変化をリアルタイムで感じることができるのは、
現代小説を読むもう一つの楽しみかも…





 

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