ISBのセカンド『5000 Spirits』のオープニング・ナンバー、”Chinese White”のご紹介です。ISB本にこの歌の歌詞の解説が詳しく載っていたんですが、歌詞自体も解説もめちゃめちゃ難解でほとんど何がいいたいのか分かりませんでした。「肩をぐいと引っぱる太陽によって数字の上を登っている」という部分の原詩は「climbing up these figures / the sun is tugging at my shoulder」です。もちろん’figure’には数字以外にいろんな意味があるので、普通は文脈から判断できるもんなんですが、ここでは1行1行の歌詞が文脈もクソもなく唐突に出てくるので判断のしようがないんですね。おまけにISB本には解説の横に当時誰かが描いたらしい挿絵が載っていて、これが本当に太陽に肩をつかまれて、数字がたくさん貼りついた山をニイチャンが登っているんです。「折り重なった雲のクリームに浸してごらん」のところは、タイトルの’チャイニーズ・ホワイト’というのが絵具の色であることから、チューブからチュルチュルっとパレットに出して筆か何かに浸すことらしいです。そんなもんわかるかい!ほんでこれは最初の’曲がった小枝と花びら’とともに、中国か日本の版画のことを指し示しているのかもしれんそうです。’鍬’は豊穣や潤沢の象徴として使われているんでしょうか。全体には物質を超越したいと希求する作者の思考がテーマとなっているということなんですが、かなり分析者の主観も入っているようないないような・・・ですね。とりあえずどうぞ。夜の闇の曲がった小枝
朝の花びらへと成長する
夜明け前に鳥たちが歌っているところを彼らに見せる
折り重なった雲のクリームに浸してごらん
僕は鍬を自分の思いどおりにできない
なぜなら枯れつつあるから
でも僕ははかない望みに抱きつき
それに邁進しよう
ああ 君の魔法のクリスマス・ツリーは輝くのかい?
だんだんと 一様に
数字の上を登っている
太陽が僕の肩をぐいと引っぱっている
一歩登るごとに
僕の足が年を取っていると思う
水晶の夢が徐々に見えてくるのがわかる
僕はその本から目を離さないでいることなんてできない
なぜならそれは朽ち果てているから
でも僕ははかない望みに抱きつき
それに邁進しよう
ああ 君の魔法のクリスマス・ツリーは輝くのかい?
だんだんと 一様に
【子どもたちの階級闘争/ブレイディみかこ】
いやあ、いよいよやっとこさRCA期突入しましたよ。やはりどうせならと、もういい歳こいた大人なのでせこいCDではなくUKオリジナル盤を手に入れました。意味不明ですね。まだこのへんは状態のいい原盤でも5ケタはいかないので、今のうちっす。でもひと昔前からするとけっこう高くなってきましたよね?数年後には5ケタいくんじゃないでしょうか。シングルジャケで歌詞つきインサート付属です。アルバムのコンセプトについてはキンクスファン以外にもそれなりに耳タコだと思うのですっ飛ばすとして、楽曲/サウンドに注目してみたいと思います。これが自分の中では一般的評価ほどいいとは思わない『マスウェル・ヒルビリーズ』よりもずっと琴線に触れる曲が多くて、レイ節復活してるじゃないの、と思いました。今さら。やっぱりこの頃のレイって、アメリカンでブルージーなヤツ目指すとどこか借り物っぽく聞こえませんか?そのへんが『ヒルビリーズ』の個人的評価につながっているんだと思います。その点この作品は一部を除き、ほぼ全体にわたってブリティッシュの香りムンムンなんですよね。中では異色といえる”Money & Corruption”はクラシカルなプログレッシヴ・ロックさえ浮かんでくるし、メロディはもろブリティッシュ・トラッドです。ザ・バンド(リチャード・マニュエル)を思わせるピアノも出てこなくなったし、いい意味でふっきれたっちゅうか同時期のマイナーな英国のSSWやフォークロックに近い雰囲気があっていいっすね。やはり聴き物は”Sweet Lady Genevieve”と”Sitting In The Mid-Day Sun”ということになるんでしょうが、それら以外にも『ヴィレッジ・グリーン』期を喚起させるような楽曲けっこう入ってます。まあ『ヴィレッジ・グリーン』構想を発展させた作品なので、当然レイのソングライティングもある程度その頃に戻った面もあると思います。次はおそらく難敵の『第2幕』に挑戦です。2枚組なのでおそろしいっす。
【レコ妖怪向けレビュー】
『スリープウォーカー』に続くアリスタ・レーベル第2弾です。ずっと邦題を『歪んだ肖像』だと思ってましたが、『歪んだ映像』だったんですね。今の今まで勘違いしておりました。結論からいいますと、『スリープウォーカー』の好調さが維持された大変すんばらしい作品やと思います。路線もサウンドもほぼ続行、ロックンロール・ナンバーもメロウ・ナンバーもいい出来です。オープニングのタイトル・トラック、”A Rock 'N' Roll Fantasy”、”In A Foreign Land”、”Live Life”、”Out Of The Wardrobe”、そして最後の”Get Up”あたりが特に好きですね。他もつまらん曲は入ってないので、前作と並んでキンクスの隠れた名作といえると思います。”Out Of The Wardrobe”はちょっとディランの歌い方を真似したんですかね?各曲の歌詞にはアルバム・タイトルの「社会不適応者」を象徴するような人が登場するっちゅう、レイならではの視点が発揮されたおもしろさがあるそうなんですが、残念がら所有のCDはボーナス・トラックが4曲追加された2010年の輸入もんです。けっこうカラー写真満載の分厚い豪華なブックレットで、原詩も載ってはいるんですけど対訳の載った国内盤がほしいっす。次作がたぶん『ロウ・バジェット』ですよね?ぎりぎりリアルタイムの中3の時の記憶残ってます。当時洋楽番組にたまにライヴ映像が流れたりして、ガキの私は「ジャンプなんかしてオッサンがんばってんな~」などと思いながら見てました。でもまだ30代前半だったんですね。40年前か・・・おそろしいっす。レイ・デイヴィスは、ロックバンドは生まれては消えていくがロックンロールは永遠に続く、みたいなことをいったそうです。しかしどうですかね?ある時期まではたしかにそうだったかもしれんですが、もうロックなんてとっくに死にましたね。でも過去には1人の人間が一生かかっても聴ききれないすんばらしい音楽が埋もれているわけですから全然大丈夫です。
名(迷)作『Flat Baroque And Berserk』に続く5作目です。京都のワークショップさんでついに安く見つけましたよ。タイトルは全裸ジャケの前科のあるロイのことなんで、『嵐のちんちん』っちゅう意味かと思いましたが、調べてみたらただの鳥の名前でした。ハーヴェスト・レーベルのセカンド・プレスらしいですがいちおうUKオリジナル盤です。これでロイの70年代までの10枚そろいました。実はこれもこないだ載せたドノヴァンの『HMS』と同じく、大昔に一度挑戦してさじを投げてしもたアルバムです。しかもその時もUKオリジナル盤だったはずです。まあこの人のレコはそんなに高くないのでそれほどの損失ではなかったんですけど、もったいないことをしたもんです。どうも『HMS』同様、1曲目でめげてしまったようですね。こちらも本領発揮は2曲目からなので最初の10分近くはウォーミングアップとして我慢せなあきません。そうです、全4曲で約40分、1曲平均10分です。どんな長いウォーミングアップか。まるでロイに「フッフッフ、最後までついてこれるかな」といわれているような1曲目は、基本的に同じメロディのくり返しですから、まずそこで眠気と戦わねばなりません。しかし2曲目からはまさにロイ流プログレッシヴ・フォークの嵐のちんちんです。この作品では前作までに聞かれた遊び、オフザケ部分が全くなく、全編気合入りまくっていて、アルバムを順番に眺めてみると、ここで頂点に達した感ありありっすね。そんなわけでロイの最高傑作はこれに決定!次が『Lifemask』その次が『Valentine』ですから、やはりこれを頂点に徐々に肩の力が抜けていって、と思ったらついには『HQ』でロックンローラーになるわけですね。『HQ』のCDは弟にくれてやったんですが、「全く平均的な曲ばっかりやけど、やっぱりヴォーカルが凄いな。これは日本人には無理やわ」と抜かしてました。
英フォークロック、厳密にいえばアイリッシュ・フォークロックの大名盤が2年前に国内再発されていたんですね。きょう久しぶりにタワレコへ行ったら発見したので買ってきましたよ。帯には日本初CD化とあって、やっとこさというかもう遅すぎておそらく誰も、マニアでさえ見向きもしないような気がしますが、とりあえずめでたいことです。しかも2年たってからこのCDを知った自分もおめでたいことです。「名盤探検隊」というのが昔ありましたが(今もある?)、これは「名盤発見伝」っちゅうシリーズの1枚のようです。輸入盤の国内仕様ではなく、日本のユニヴァーサル・ミュージックによるリマスター音源でSHM-CDです。まあ自分にはSHM-CDの価値はわからないのでどうでもいいですが。それよりも詳しい解説と歌詞と対訳が載った日本盤のお手本のような作りがすばらしいと思いますね。90年代にたっかい金出して買うたUKオリジナル盤をかけながら、このライナーや歌詞対訳を読むというぜいたくな聴き方をしたいと思ってます。昔とりあげた彼らのベストCD『Lake Songs From Red Waters』に載っていたゲイ・ウッズの回顧録によれば、このアルバムの歌を書いたのは72年にアイルランドのミースという田舎に引っ越してからで、ほとんどの曲にうつ的な特徴があるといってます。それを念頭において対訳を読んでみるとたしかにそんな感じはしますね。だんなさんのテリー・ウッズがいっしょにいたわけですから、田舎で一人ぼっちの生活ではなかったとはいえ、都会育ちの女の子にとっては最初は新鮮でもだんだんと退屈していったんじゃないでしょうか。それにテリーがコンビニのバイトで家を出れば一人ぼっちになるわけですから。「ああ、今日は夜勤だからテリーは帰ってこないのか・・・」とか。って何の話か。とにかく祝CD化&次のアルバム『Time Is Right』のCD化も願って久しぶりにゲイテリ・ナイトっす。個人的には『Time Is Right』の方が好きなんすけどね。おわり!
【レコ妖怪向けレビュー】
60年代後半からサイケデリックなフォークロックで大ヒットを連発していたドノヴァンが71年になって原点回帰したようなフォーク・アルバム手に入れました。本当は2枚組ポスター付のUKオリジナル盤がほしかったですが、このCDでさえ今では4000円近くしますし、オリジナル・レコだとコンディションによってはその10倍くらいしますので、ちょっと手が出ませんでした。実はCDで買うのは2回目っす。たしか90年代にCD化された時に「ついに聞ける!」と思って手に入れたものの、最初のわけのわからない語りにがっかりしてしまい、しばらくして手放してしまいましたよ。まあ今でも一発目の長い語りはチンプンカンプン、おまけにルイス・キャロルやイェーツの詩に曲をつけたっちゅうコンセプトもチンプンカンプンなんですが、2曲目以降はすべてがたまらんブリティッシュ・フォークですね。ヴァシュティ・ヴァニヤンもやっていた”きらきら星”もやっています。全曲が本人によるアコギ1本のみのバッキングというわけではなく、ドラムスが2曲で、1曲ではエレクトリック・ギターも使われています。その”Homesickness”がまるで『バラバジャガ』期のようなクールなフォークロックでめっちゃカッコええです。全28曲中、ドノヴァン自身の作詞作曲は12曲も入っているし、キャロルは2曲、イェーツは1曲のみ、それ以外にもいろんな自分には聞いたこともない詩人たちの詩に曲をつけているので、キャロル、イェーツが特に引き合いに出されるのは、日本人にも比較的なじみのある名前だからということなんでしょうね。個人的ベスト・トラックはずばりこれぞドノヴァン節といえる”Henry Martin”っす。と思ったらこれトラッドか何か元歌があるみたいです。とにかくこのホーミーみたいな独特なヴィブラートが怪しくて好きです。しかしジャケを眺めながら聴いていると、やっぱりレコでほしくなってきますね。ポスター壁に貼りたいなあ。って現物は痛むのでダメっす!ちゃんとカラーコピーして貼りましょう。