「長老大丈夫?」


腕を支えながら、アイリは心配そうに尋ねました。



長老は辛そうに頷き、しかししっかりと歩いていました。


洞窟に入って、数十分は経っています。



暗くて先が見えないので、村人達はみんな不安そうな顔をしています。


「アイリ、ユナ。まだ着かないのか?」

「まだ、もう少しがんばって。上手くいってたら、迎えもくるはずだから」


何度か同じ会話を繰り返し、その度にアイリはみんなを落ち着かせようと、楽しいお話をしました。



「ユナ、まだかなぁ?」

村人達は何度も尋ねるので、アイリは疲れてしまいました。


「多分もう少しよ。キルアが来てくれると思うわ」

ユナは励ますように笑い、唄を口ずさみ始めました。不安そうに話し合っていた村人達は、その声に聴き



入って、洞窟のなかにはユナの歌声だけが響き渡りました。

そのまましばらく進むと、前の方から足音が聞こえてきました。



ユナは唄をやめ、村人達は武器を構えました。

「吸血鬼じゃないだろうな?」


村人の人がそう呟くと、他の村人達も怯えたように話し始めました。

「みな静かにするのじゃ」


見兼ねた長老が声をかけると、話し声は止みましたが、不安そうな顔で少し後ずさりました。

そっと様子を窺っていると、声が聞こえてきました。


「ユナ!アイリ!いるのかい?」

アイリはぱっと目を輝かせ、ユナは小さくため息をつきました。


「キルア!ここよ!」

ユナが声をかけると、足音はさっきより速く近いてきました。


「みんな、隣の村の人が来てくれたよ。私達を助けてくれた人」

アイリが説明すると、村人達はほっとしたような表情を浮かべて武器をおろしました。



長老だけは、一人複雑な表情を浮かべています。


「ユナ、アイリ。そっちも上手くいったんだね」


ようやく姿が見えるようになりました。

「キルアの方も?」


「もちろん。みんな待ってるよ」

 ユナは頷きました。


「よかったわ。紹介するわね。こちらが私達の村の長老よ」

「長老のユイじゃ。すまぬの」


「キルアです。こちらこそ、ご足労を」

そう言って、軽く頭を下げました。


「長と村人達が待っているので、行きましょう」

キルアは歩き出し、アイリ達は着いていきました。


初の(?)ブログ記事ですね。

 今日は3人でHQに参加してきました

黒蝶のワルツ

もちろん有名人とか問題の写真はありません

 と言うか撮れません(笑)(^^ )TVを見てもお楽しみです


結果は・・・準決勝落ち!(名前の上では・・・w
「というわけなんです」

ユナは話し終えて、

長老達の顔を見回しました。

みんな呆然としていて、声を出せずにいるようでした。

 ユナはわざと、

リーシャが生きていることを話しませんでした。

「ユナ……」

アイリはユナの服を握りました。

「大丈夫よ」

ユナはアイリの手を握り、

長老たちが落ち着くのをしばらく待ちました。

「ユナよ……」

数分後、長老はようやく二人を見ました。

「その日記を、見せてくれるかの?」

ユナが黙って日記を差し出すと、長老は震える手でページをめくりました。

読み終わると、長老は肩を震わせながら日記を返して、顔を手で覆いました。

「リーシャ…」

アイリは長老に近きました。

「長老」

「親友に全てを任せきってしまった……。

 私が行けばよかったのじゃ。リーシャは優しい娘じゃった……」

アイリはそっと手を握り、顔を覗きこみました。

「長老、隣の村に行こう?」

長老は首をふりました。

「リーシャに合わせる顔がない。

 もう、償うこともできないのじゃから……」

アイリはユナを見ました。ユナは頷いて、長老に一歩近づきました。

「長老、リーシャさんに償いたいですか?」

「あぁ、じゃがそれはもう……」

長老は息を吐きました。

「それなら、今から会いに行きましょう」

長老はぱっと顔をあげました。少し迷うように視線をさ迷わせ、

「リーシャは……」

それだけ言って、ユナを見ました。

「リーシャさん、生きてます。隣の村の長だそうです」

長老は目を見開き、アイリを見ました。

「リーシャさんに会いに行こう?きっと待ってるよ」

長老の頬を涙が伝い、ゆっくりと目を閉じて、頷きました。

「リーシャに、もう一度会って謝りたい……」

アイリはユナを見て、笑みを浮かべました。

「ではこのまま出発しましょう。大丈夫ですか?」

ユナは確認するように尋ねました。

「大丈夫じゃ。行こう」

村人達はアイリとユナを先頭に、洞窟に入って行きました。
「アイリ!?ユナ!?」

アイリとユナは自分達の名前を呼ぶ聞き慣れた声を聞いて、

 ゆっくりと目を開きました。

「長老……!」

そこにいたのは長老と村人達でした。

 みんな荷物を抱え、武器を手にしています。

顔にはみんなほっとしたような表情を浮かべ、

近くにいたユナのお兄さんは二人の頭をぐりぐりと撫でました。

「よく無事だったな」

ユナは頷き、アイリは驚いた表情のまま尋ねました。

「みんな、なにしてるの……?」

村人達は顔を見合わせ、苦笑しました。

長老がゆっくりと近いてきて、持っていた杖で二人の頭をぽかりと叩きました。

「お前さんたちを探しに行こうとしていたんじゃよ。

 あれほど洞窟には近くなと言い聞かせておったと言うのに」

アイリはぽかんとしたあと、ユナを見て満面の笑みを浮かべました。

「ユナっ、聞いた?私たちを探しにだって!」

アイリの嬉しそうな顔を見て、ユナも微笑みました。

「よかったわね」

「うんっ」

ユナはアイリの頭を撫でて、長老を見ました。

「長老、お話しなければならないことがあります」

長老はユナを見て頷きました。

「なにがあったのか話してもらおうかのぅ。

 言い付けを守らなかったのじゃから、お仕置きもなぁ」

アイリは驚いてユナを見ましたが、ユナは平然としていました。

「全てお話します。事実と私たちの考えを。

 だから全て話し終えるまで、口を挟まないでくださいね」

ユナは念を押して話し始めました。

私は桜が好き

だって綺麗だから

でも桜は嫌い

すぐに散ってしまうから


私は花火が好き

だって綺麗だから

でも花火は嫌い

すぐに消えてしまうから


私は満月が好き

だって綺麗だから

でも満月は嫌い

すぐに欠けてしまうから


私は雪が好き

だって綺麗だから

でも雪は嫌い

すぐに溶けてしまうから


世界は変わって

綺麗なものはすぐに消えてしまう

だけどそのはかなさも

美しいのかもしれないね
「この洞窟、結構長いよねぇ」

アイリは疲れたように言いました。

アイリとユナは、

 長老たちに事情を話して着いて来てもらうために、

キルアと別れて自分達の村へ洞窟の中を歩いていました。

「そうね、大きな山を通っているから。

  でも昔の人はすごいわね。 
 
 こんなに長い洞窟を掘っちゃうんだから」

ユナは楽しそうに言ってアイリを見ました。

「大丈夫?疲れたなら休暇する?」

「大丈夫だよ。ユナって案外体力あるよね。

あんまり運動してるの見たことないのに」

アイリは羨ましそうにユナを見て、溜め息をつきました。

「これでも運動してるわよ。

 毎日お散歩してるから、歩くのは得意なの」

ユナは笑って、唄を口ずさみました。

 アイリはもう一度、いいなぁと言ってユナの唄を聞きながら歩きました。

「あっ」

アイリが急に声を上げたので、ユナは少し驚きました。

「どうしたの?」

「あれっ」

アイリは洞窟の奥を指差しました。

その先には、光りがありました。

「出口だよね?」

「そうね、もう少しよ。みんななにしてるかしら?」

アイリはうれしそうに跳びはね、くるりとユナを見ました。

「ユナが帰ってきたってわかったら、みんな……、あ……」

アイリが急に悲しそうな表情で俯いたので、ユナは不思議そうに首を傾げました。

「どうしたの?」

アイリは呟きました。

「みんな心配なんてしてないのかも……」

「どうして?」

アイリは顔を上げると、ユナの服を掴みました。

「ユナが吸血鬼探しに行ったかもって言ったら、

 諦めるしかないっていったんだよ……?」

ユナは少し考えて言いました。

「仕方ないわよ。吸血鬼がいるって信じきってるんだもの。

 ほら、大丈夫よ。行きましょう?」

ユナは手を差し出し、アイリは小さく頷いてその手を握りました。

二人はゆっくりと出口に向かって歩き、

 太陽の眩しさに目を細めて洞窟の外に出ました。
帰り道

君が隣にいる

なんて話しかければいいのか

わからなくて

ちょっと俯いて歩く


もうすぐ分かれ道

焦る僕は

俯いている君の横顔を見て

ちょっとだけ君に近寄る


あっ


ほんの少しだけ触れた指

ほんのりとが暖かい

顔を上げると

視線が交わる


桜色に染まった頬

恥ずかしそうな上目遣い

鼓動が早くなって

視線を外す


また少し俯いて歩きだす

分かれ道

僕は右

君は左



小さな声で

またね

背中を向けて

歩きだす


明日こそ

明日こそ

この気持ちを

君に
「でも、ユナあんまり驚いてないね」

アイリは不思議そうにユナの顔を覗き込みました。

「まぁ、キルアの話し方から

 なんとなくそうじゃないかって思ってたから」

ユナは微笑みました。

アイリは感心したように目を見開きました。

「アイリはすごいなぁ。

 じゃあさ、二人を会わせるにはどうしたらいいと思う?」

ユナとキルアは顔を見合わせました。

「そうね。長老だけを連れてくるのは、

 あまり体によくないと思うわ。

 アイリみたいになっちゃったら困るし……」

そう言って眉を潜め、目を閉じました。

「もし君達の村の長老がこっちにくるなら、

 昔のこともちゃんと話して謝らないといけないね。

 きっと村同士で交流を持つようになるから、

 長老はそうすると思うけど」

キルアは首を傾げ、

ねっ?というふうに微笑みました。

「交流?そうだわ。これを機に、

 村同士で交流を深めましょう。

 別に長老だけを連れてくる必要はないわ。

 吸血鬼がいないことにも気づいてもらえるし、

 村も今より栄えるかもしれない」

ユナは声高に言って、アイリとキルアを見ました。

「アイリ、キルア。協力してくれる?」

「もちろん」

「当たり前でしょっ」

二人は大きく頷きました。