METライブビューイング2022-23 第5作「ローエングリン」を観てきました音譜

 

ワーグナー初期の作品で、聖杯を守る白鳥の騎士と清純な姫との悲恋物語がモチーフとなっています。

これ以降に作曲された「楽劇」に対して、「ロマンティック・オペラ」と呼ばれる最後の作品で、劇中で有名な「結婚行進曲」が演奏されることでも知られています。

 

METがこれまで最も多く上演してきたワーグナー作品であることからも、この作品がオペラファンの間で人気が高いことがうかがえます。今回は新演出ということもあって、これは観にいかなくてはと期待でわくわくしていましたニコ

 

ワーグナーの作品というと、どうしても長くて難しい印象があって敬遠しがちでしたが、この作品は2回の休憩やインタビュー等を挟んで5時間弱と時間は長いものの、ストーリーは分かりやすく音楽も親しみやすいので、最後まで飽きることなく楽しむことができました。

 

以前に観た「さまよえるオランダ人」や「パルジファル」よりも、オペラ初心者向きなのかも…と思いました。

 

 

 

主演のローエングリンを演じるのは、今回がワーグナー作品デビューでロールデビューでもあるピョートル・ベチャワです。

繊細で輝かしい声に力強さも加わって、幕ごとに難しさが増していくこの役を見事に演じ切っていました。特に3幕の、ローエングリンが自らの素性を明かしてからの迫真の演技と歌唱には感動しました。

 

姫のピンチに突然現れて、また去っていくという謎の存在ですが、白鳥に導かれてどこかの惑星からやってきたような真っ白なシャツを着たスーパーヒーロー!?キラキラちょっと笑っちゃうようなカッコ良すぎる役ですが、ベチャワの真摯で温かさを感じる雰囲気がこの役にしっかりとはまっている気がしました。

 

 

 

ヒロインの公女エルザを演じたタマラ・ウィルソンは、思わず聞きほれるような伸びやかな美声で、純粋で清らかなエルザにぴったりの声だと思いました。アイーダやトゥーランドットも演じるドラマティック・ソプラノということなので、今後も幅広い役での活躍が期待されます。

 

 

 

この作品で最も強烈な存在感を見せつけたのが、ワーグナー作品での常連で実力派のクリスティーン・ガーキーが演じた魔女オルトルートです。最強の悪役で、物語を大きく動かす存在であるこの役を、余裕たっぷりに楽しんで演じているように感じました。舞台に登場するだけで空気を変えてしまうような圧巻の演技と歌唱でした。

 

ガーキーさんは、度々他の作品の案内役としても登場していますが、その明るくユーモアにあふれた人柄で楽しませてくれますし、今回もインタビューの場面では茶目っ気も発揮して大いに笑わせてくれました。

 

 

 

今回の作品の演出を手掛けたのは、以前のワーグナー作品でも幻想的で美しい演出が印象的だったフランソワ・ジラールです。

 

壮大な宇宙を舞台にしたSF映画のように、舞台の背景に大きく惑星の姿を映し出し、その地下世界(?)で起きる出来事を群集の衣装の色の変化や鮮やかな照明で表現しているのが美しかったです。ローエングリンとエルザの白と、悪役の赤の対比がはっきりと描かれているのも印象的でした。

 

また、この作品では大人数(130人!!)の合唱が様々な場面で活躍しますが、場面を埋め尽くす男声合唱の素晴らしさは圧巻でした。

 

とても見ごたえ,聴きごたえのある舞台で、ワーグナー作品初心者にも楽しめる作品だと思うので、ぜひお時間がありましたら映画館に足を運んでみてはいかがでしょうかウインクラブラブ

 

 

(写真は全てMETライブビューイングのHPより拝借いたしました)