METライブビューイング2022-23 第4作「フェドーラ」を観てきました音譜

 

METライブビューイング 記念すべき150作目、MET上演 25年ぶり、そして新演出ということで、今シーズン最も楽しみにしていた作品の一つですニコ

 

 

作曲者は「アンドレア・シェニエ」で有名なウンベルト・ジョルダーノ。トスカと同じサルドゥの原作をもとに、サンクトペテルブルクとパリ、スイスを舞台に、激しくも悲しい恋物語が展開されます。

テーマは「愛と裏切り」!メラメラロマノフ王朝時代の帝政ロシアを背景に、ドラマはサスペンス仕立てに進行し、第1幕の初めから、観客を物語の世界に引きずり込んでいきます。

 

ヒロインの皇女フェドーラは、凛とした気高さと脆さを併せ持った女性として描かれています。結婚前夜に婚約者の大尉を殺され、その悲しみから犯人への復讐を決意しますが、やがて婚約者の裏切りを知り、犯人であるロリス伯爵の一途な愛に打たれて、伯爵を愛してしまいます。愛を誓い合った二人は、スイスアルプスでつかの間の幸せな時間を過ごしますが、フェドーラがロリスとその兄をかつて秘密警察に告発していた手紙が引き金となって、悲劇への歯車が一気に回り始め、悲しい結末へと向かっていくのです。

 

 

フェドーラを演じるのは、現代を代表するスターソプラノのソニア・ヨンチェヴァで、METの看板的な歌姫だったネトレプコが様々な事情で出演できなくなった今、METを背負う代表的なソプラノ歌手の一人としてますます円熟味を増してきました。

今回の作品では、ヒロインが運命に翻弄されながら、悲しみや憎しみから愛へと激しく移り変わる感情を細やかに表現しながら、美しく豊かな歌唱で観客の心をつかんでいたと思います。特にクライマックス・シーンでの熱唱には感動しました。

 

ロリス伯爵を演じたピョートル・ベチャワも、最近のMETでの活躍が目ざましいテノール歌手の一人ですが、甘く伸びやかな歌声と役に入り込んだ演技が、以前から素晴らしいと思っていました。今回の役にもとてもはまっていて素晴らしかったです。

 

 

どちらかと言えば悲劇的な展開が続くこの作品の中で、唯一コミカルで明るい雰囲気で和ませてくれるのが、オルガ伯爵夫人と外交官デ・シリエの掛け合いの場面です。

オルガを演じた、コロラトゥーラ・ソプラノのローザ・フェオラは、昨シーズン「リゴレット」のジルダ役の素晴らしさで注目するようになりましたが、ジルダとは正反対のコケティッシュで大人の色気も秘めたオルガを生きいきと演じていて、ますますファンになりました。
 

この作品の魅力は、音楽の素晴らしさ、ラブ・サスペンスとしてのストーリーの面白さ、演じる歌手の魅力はもちろんですが、それに加えて、舞台セットや衣装の豪華さ、時代考証をしっかりと踏まえた演出の素晴らしさにもあります。

悲劇ではありますが、観ているだけで目も耳も幸せを感じるような美しい作品だと思います。もしお時間がありましたら、映画館へ足を運んでみてはいかがでしょうかラブラブ

 

 

(写真は全てMETライブビューイングのHPより拝借いたしました)