日本で栽培されているかぼちゃの種類は、「日本かぼちゃ」「西洋かぼちゃ」「ペポかぼちゃ」の3種類ですが、現在では、食生活の洋風化に伴い、甘みが強く、粉質でほくほくした味わいがある西洋かぼちゃが生産量の90%以上を占めています。茨城県の主力品種は「えびすかぼちゃ」と「みやこかぼちゃ」ですが、種類は「西洋かぼちゃ」になります。これらの3種のかぼちゃは全く異なった種類なので、お互いの間で普通には交雑はしません。しかし、日本かぼちゃと西洋かぼちゃ、あるいはぺポかぼちゃとの間では、品種の組みあわせによっては雑種ができる場合が稀にあります。種類間でも交雑があるぐらいですから、各種類の中にある品種間では交雑が起こり得ます。ですから、ブランドかぼちゃとして育成し、品質を維持して、継続的に栽培を続けるためには、この「交雑」をさせない栽培が品質管理に欠かせません。日本のかぼちゃづくりはこれに挑戦し続けています。このため、これはという固定ブランド品種ができたら、慎重に交雑を避けるように栽培をします。その結果、日本には地域ごとに個性豊かなブランドかぼちゃが誕生して市場に出回っています。かぼちゃとは地域より狭い、地区の努力の成果が色濃くでている作物なのです。茨城県内にはこうした努力で生まれたブランドかぼちゃが地区ごとにあります。今回は茨城県が誇る個性豊かな「地区限定ブランドかぼちゃ」を紹介します。
<かぼちゃの種類と品種>
かぼちゃには3種類27品種があります。一般的な緑色のかぼちゃからオレンジ色や黄色のかぼちゃ、丸いかぼちゃから細長いかぼちゃやひょうたんのようなかぼちゃなど見た目も様々ですが、味や食感もそれぞれです。種類とその中の品種の一部を記します。
(1)日本かぼちゃ「7品種」:1800年代に西洋かぼちゃが導入されるまでは日本で
一般的
ると食感はね
西洋かぼちゃに比べ
どには最適です。
① 「菊座かぼちゃ」:粘性の強い日本かぼちゃの代表です。最大の特徴はそ
の見た目、
② 「鶴首かぼちゃ」:名前の通り鶴の首のような見た目のかぼちゃ。古くか
ら愛知県で伝統野菜として親しまれています。
③ 「小菊かぼちゃ」:手のひらサイズのかぼちゃ。菊座かぼちゃのように菊
に見えることが名前の由来となっています。
④ 「黒皮かぼちゃ」:希少価値の高い、日本料理の最高級食材として人気の
高い品種
されるなど、宮崎県を代表する野菜です。
(2)西洋かぼちゃ「14品種」:強い甘みが特徴です。その甘みは日本のかぼちゃ
の倍とも言われています。栄養価も高くカロテンなども豊富に含んでいま
す。食感はホクホクとしたものが多い。形もバラエティに富んでいて、小
さくて可愛らしいものや細長いかぼちゃ、更にはひょうたんのような形の
かぼちゃまで見た目も楽しいものが多いです。
① 「黒皮栗かぼちゃ」:外見から見た総称。品種としては「みやこかぼちゃ」
「えびす
ます。特に1980年
は、日本のかぼちゃ生産量
す。1kg程度の大きさで横幅の
性のある粉質でホクホクとしたとこ
すかぼちゃ」と認知されています。
② 「赤皮栗かぼちゃ」:外見から見た総称。身は赤肉で大きさが1kg前後、皮
が薄くて
は食感がややね
木赤皮甘栗」という品
③ 「坊っちゃんかぼちゃ」:手のひらサイズのかぼちゃ。これでしっかり一人
前の大
ちゃかぼちゃ
④ 「ロロンかぼちゃ」:ラグビー型のユニークな形が特徴的なかぼちゃです。
2009年
ます。
⑤ 「長かぼちゃ」:ヘチマのような形状のかぼちゃです。様々な種類があり、
飛騨高山
の「ごっちゃん長
な種類があります。
(3)ぺポかぼちゃ「6品種」:ハロウィーンで良く飾られているオレンジ色のかぼ
ちゃが「アトランティックジャイアント」です。主に肥料用に栽培されて
いることが多いです。身をほぐすと糸状になる種類のかぼちゃ「そうめん
かぼちゃ」そして「ズッキーニ」もここに入ります。
<かぼちゃの生産量>
1. 世界のかぼちゃ生産量ランキング
1位中国838万t(36.6%)、2位ウクライナ135万t(5.9%)、3位ロシア120万t(5.2%)・・・日本は27位(17万t)です。(2019年)・・・桁が違います。
2.国内のかぼちゃ生産量ランキング
1位が北海道92,300t(49.5%)2位鹿児島7,500t(4.0%)3位長野6,520t(3.5%)・茨城6,510t(3.5%)です。(2020年)・・・桁が違うけど茨城県も頑張っています。
<かぼちゃの豆知識>
1. 交雑かぼちゃはどんなかぼちゃになるのか?:
カボチャの果実は偽果といって、食べているのは子房をとり巻く花床の肥
大した部
ぼちゃとの間で交
た花粉の影響を受けません。
いたとしても、実るカボチャは変わら
世代用として使えないということです。交雑し
かりませんから、農家さんは種を毎年、種専門の業者さ
培をスタートしています。
2. 美味しいかぼちゃの選び方:かぼちゃの食べごろは、ヘタを見れば分かりま
す。ヘタ
皮が硬くずっしり
いるものならば、種が大き
ものが完熟した美味しいかぼちゃ
3.かぼちゃの栄養素:かぼちゃは、多くの栄養成分を含む「緑黄色野菜」です。
かぼち
ンが多く含
るビタミンEとビタミンC・ビタミンB群・食物繊維などが、バランスよく
含まれています。かぼちゃの場合、これらの成分がでんぷん質に保護され
ているため、熱を加えても壊れにくいというのが特徴です。加熱によって
栄養素に変化が起こる食材も多い中、かぼちゃは様々な調理方法で楽しめ
る食材です。
4.保存方法:かぼちゃは皮が分厚いため、長期保存に適した野菜のひとつです。
まるごとであれば、3ヶ月程度保存が可能です。まるごと保存するには、新
聞紙で包み、風通しのよい冷暗所に置きます。切った場合は、種やワタの
部分から傷みはじめるため、まずはこれらを取り除きます。切った断面が
空気に触れないよう、ラップでぴったりと包み、野菜室で保存すると、1週
間程度は保存できます。
5.かぼちゃを安全に切る技:まずは、包丁の刃先を使ってヘタの周りに円を描くように切れ目を入れ、ヘタをくり抜くようにして取り除きます。次に、ヘタを取り除いた部分に包丁を入れて手前側半分を切っていく。切れたらかぼちゃを逆にして、反対側も切っていくと、かぼちゃが安定して比較的切りやすいです。
6.煮崩れを防ぐ方法:えびすかぼちゃは煮崩れしやすいので、弱火でじっくり煮
ると表面のデンプン質が固まって煮崩れしにくくなり、さらに旨み成分が
ゆっくり生成されるので、美味しさアップです。砂糖は柔らかくする効果
があり、カボチャが煮崩れしやすくなるので、実を締めて崩れにくくする
効果がある「みりん」で煮るのがおススメです。煮崩れの原因はカボチャ
のカットされた表面のデンプンが熱せられることで、柔らかくなるからで
す。あらかじめ水に30分程度つけておくと、デンプンが流れるので、煮崩
れしにくくなります。栄養分が流れますが、つけておいた水をそのまま使
えば大丈夫です。
<茨城県の地区ブランドかぼちゃ>
茨城県では古河市/稲敷市/八千代町/那珂市/石岡市/笠間市/つくば市/筑西市/鉾田市/結
城
1.ブランド力ナンバーワンの「江戸崎かぼちゃ」
「江戸崎かぼちゃ」は西洋かぼちゃで、品種はえびすかぼちゃです。平成27年に「夕張メロン」、「神戸ビーフ」などとともに農林水産省の地理的表示(GI)保護制度の第1号に登録された本県を代表する野菜です。最大の特徴は、一般的なカボチャより長く畑で育てて完熟させていることです。通常は着果から約45日で収穫しますが、江戸崎かぼちゃは10日ほど長い約55日後に収穫します。農家の方は「完熟採りですから、花が咲いた後45日目あたりから、実に栄養がどんどん持っていかれるのでかぼちゃの木がかなり疲れてくるんです。有機質肥料を使用している畑の木は根張り(ねばり)がいいので、疲れた状態でもそこからもうひと頑張りしてくれる。有機質肥料を使用していない畑の木は弱りやすく、最後のひと頑張りがききにくいんです。」これが江戸崎かぼちゃがおいしい秘密です。元々は収穫時期が過ぎてしまったカボチャを出荷したところ「おいしい」と好評だったことが着想の原点だそうです。現在は、稲敷市の江戸崎地区や牛久市で24人が栽培しています。江戸崎かぼちゃは収穫後も手間がかかります。水洗いをして乾かし、傷や重さ、形状などからA~C、規格外にランク分けして箱詰めしますし、出荷前には専門の検査員が部会内全ての品質検査を行っています。この検査はわずかな傷でランクが下がるほど、1箱1箱厳しく検査しています。専門検査員と役員が二重にチェックしており、過剰ともいえる検査体制だからこそ、長年にわたって江戸崎かぼちゃのブラントを守ることができているのです。
2.一つる一果、完熟採りの「那珂かぼちゃ」
JA常陸那珂地区かぼちゃ生産部会(部員数17名)は、茨城県内でも有数のカボチャ産地のひとつで、30年以上前から栽培が行われています。那珂かぼちゃの栽培は、一般的な多収栽培方法とは異なり、つるを一本仕立てにし、一個のみ着果させる「一つる一果の完熟どり」で行われます。この栽培法は収量が少ない反面、一つの実に養分が集中するため、大きくて高品質なカボチャが栽培でき、これが那珂かぼちゃの美味しさの秘訣となっています。那珂かぼちゃも、完熟させてから収穫するためおいしさがギュッとつまっています。少しの塩と砂糖で煮つければ本来のおいしさがわかります。出荷時にも厳しい検査が行われ、合格品には金色のシールが那珂市ブランド「那珂かぼちゃ」の証として貼られます。色艶に優れた外見に加え、中身は栗のようなホックリとした食感と完熟した強い甘みが特徴的で、県内を中心に高値で取引されており、贈答品としても人気があります。さらに那珂市の特産認証品指定も受けており、名実ともに那珂市を代表する農産物の一つです。そして、近年はかぼちゃ焼酎などの6次産業化への取り組みや、消費拡大に向けたイベントも強化しており、産地の維持発展に向けて精力的に活動しています。
3.受け継がれる100年の歴史「総和みやこかぼちゃ」
茨城県古河市総和地区のかぼちゃ栽培の歴史はなんと100年近くにのぼります。この地域は稲、大豆、粟の産地として栄えましたが、後に農閑期対策としてかぼちゃの栽培が始まりました。当時は、「えびすかぼちゃ」を主流に複数の品種を栽培していましたが、昭和58年にさらなる食味の良さを求めて「みやこかぼちゃ」に特化した部会が設立されました。昭和63年には茨城県の青果物銘柄産地に指定、他の産地に栽培方法を指導するなど、県内を代表する産地の一つになりました。「総和みやこかぼちゃ」は、繊維が少ない粉質の鮮やかな黄色い肉質のかぼちゃでほくほくとした栗のような甘みが特徴です。今日でもそのブランド力は衰えることなく、市場の信頼の厚さはもちろんのこと全国に多くのリピーターがおります。部会では味の向上と品質の統一を図るためにJA茨城むつみが指定した有機質肥料セットの使用を勧めていますが、独自に土壌改良研究に取り組んでいる意欲的な部員が多くいます。通常は収穫後10日~2週間ほど風通しの良い場所に置き、追熟させてから出荷しますが総和みやこかぼちゃは、畑で完熟してから収穫するので果肉の色が濃く、実がぎっしりと詰まっていて甘さが強いと評判です。量販店の試食販売でも、余分な味付けはせずお客様に素材そのままの味を味わってもらっているそうです。金色のシールが光る甘くてほくほくな総和みやこかぼちゃをぜひご賞味ください。
4.ピンクオレンジ色が特徴の「里川かぼちゃ」
里川カボチャは、常陸太田市の里見地区の里川町で栽培されているピンクオレンジ色が特徴の日本かぼちゃです。標高600~800mの高地という環境が生みだす寒暖の差により、非常に甘味のある、舌触りのなめらかなかぼちゃです。昔から「里川の土手かぼちゃ」として地域で作られてきましたが、長い歴史の中で様々な品種のかぼちゃと交雑して原種が失われつつあったため、平成21年度から里川かぼちゃ研究会(22名)を中心に、里川かぼちゃの品種の復活と固定化に取り組んでいます。定植は4~6月、収穫は9~11月下旬頃までです。県内のかぼちゃ産地よりも栽培時期が遅く、また里川地域でしか良い食味のかぼちゃが栽培できないため、貴重な存在です。里川かぼちゃは、常陸太田市内にある道の駅等の直売所の他、茨城県民の日に県内のイオン店舗で販売されています。また、常陸太田市の認証特産品に認定され、常陸太田市のホームページでも購入することができます。購入の際には、料理のレシピが記載されているパンフレットを付ける等、消費者が購入しやすいよう工夫をしています。その他、地元の醸造元で焼酎を作ったり、パウダーに加工したりと、より多くの消費者に里川かぼちゃを知ってもらうため、様々な形での販売を展開しています。
5.甘味が強い早生品種「味平かぼちゃ」
八郷地区を中心に栽培しているのは「味平(あじへい)」と呼ばれる品種で、昔から一般に親しまれてきた表面の溝が浅い粉質の西洋かぼちゃです。班員28名と共に年間約2万5千ケースのかぼちゃを関東の市場へ出荷しています。果肉は濃いオレンジ色をしており、特筆すべきはその甘さ。糖度は17度近くになることもあります。一般的なりんごの糖度は13度程度なので、どれくらい甘いかが想像できるでしょう。加熱すると栗のような芳醇な香りと上品な甘さが楽しめると人気があります。先輩農家から受け継がれてきた「やさとの味」を大切にしながらも常にいいものは柔軟に取り入れ吟味を重ねる。そんな自由な発想が、さらなる高品質の「やさとの味」を生み出すことにつながるのでしょう。やさとのかぼちゃは、7月中旬が出荷開始です。お箸でほろほろとほぐれる王道の煮物からポタージュや夏野菜のお味噌汁など、食卓を彩る旨味たっぷりのかぼちゃを皆さんもたくさん味わってくださいね。
6.期間限定の日立市特産品「茂宮(もみや)かぼちゃ」
茂宮かぼちゃは、日立市南部の茂宮地区の特産品です。西洋カボチャの「錦芳香」という品種で、20軒余りの農家が栽培しています。甘みが強く、栗のようなホクホクとした食感が特徴です。低農薬栽培とミツバチ交配などで丁寧に育てられており、6月下旬から7月下旬にかけてしか収穫できない日立市の特産品です。春先の天候が出来栄えを左右するそうです。茂宮かぼちゃのおいしさを最大限楽しむには、早めに食べることと、水と味付けは少なめで煮ることです。栄養と旨みをたっぷりと蓄えていますが、そのぶん、長期保存には向きませんので、おおよそ2週間以内には食べきるようにしてください。「茂宮かぼちゃ」は日立市大和田町にある、JA常陸の直売所「旬味満菜館」、JA常陸みなみ直売所で販売されるほか、水戸市の市場に出荷されるということです。
紹介してきたように茨城県のかぼちゃは完熟出荷が多いです。このため、北海道産と比べると値段が高いです。でも、それだけの価値があります。
かぼちゃの旬の時期は9月~12月です。この時期に是非、茨城県のブランドかぼちゃをご賞味あれ!