ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシア軍の装甲車を撃破 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシア軍の装甲車狩りにいそしむ 歩兵ごと粉砕

 

 

 ロシアがウクライナで拡大して2年4カ月目に入る戦争で、ロシア軍は兵士を戦場に送り込む2つの装甲車両、装甲兵員輸送車(APC)と歩兵戦闘車(IFV)も大量に失ってきた。オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」が視覚的に確認しているだけで、撃破数は約4300両にのぼる。毎月160両ほど撃破されている計算だ。
 ウクライナ軍のAPCとIFVの損失ははるかに少なく、撃破された数は合計で1200両ほどにとどまる。
 ロシア軍のAPCとIFVの損失は5月に急増した。この戦争の装備の損害を独自に集計しているOSINTアナリストのアンドルー・パーペチュアによれば、撃破された数は計288両に達した。パーペチュアは「これはあくまで、わたしたちが見て数えたものだけだ」と強調している。
 なぜそうなったのかは明らかだ。ウクライナの1000kmにおよぶ戦線のなかでもとくに激しい戦闘が繰り広げられている東部のアウジーウカ正面で、ウクライナ軍が優れた車両を用いる一方、ロシア軍の車両は劣化しているからだ。両者が相まみえると、ロシア側の車両は手ひどくやられている。
 この1カ月あまりの間にソーシャルメディアで共有された2つの動画は、両軍の車両のそうした優劣をまざまざと示している。どちらの場合も、ウクライナ軍の米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍の装甲兵員輸送車と対決し、破壊している。ロシア側は2つの小競り合いで計数十人が戦死した可能性がある。
 ひとつめの動画は、5月2日かその少し前に行われた戦闘の様子を映している。長期保管施設から引っ張り出され、自爆型のドローン(無人機)対策のケージ装甲を取り付けたロシア軍の老朽化したMT-LB装甲牽引車の一両が、車上に歩兵6人ほどを乗せて、アウジーウカ西方のウクライナ側の陣地に向けて走ってくる。1990年代に製造され、米国から300両あまり供与されたウクライナ軍のM2の一両がそれを迎え撃つ。
 これは不公平な戦いだった。重量約12tの装軌車両であるMT-LBは元来、支援車両として設計されているので、装甲は薄く、軽武装だ。兵士を戦場に直接運び込むという用途は想定されていなかった。しかし、より重量のあるBMP歩兵戦闘車を数千両失ったロシア軍は、MT-LBを前線でAPCとして使わざるを得なくなっている。
 対して重量約30tの装軌車両であるM-2は直接戦闘用に設計されており、精確に高速で射撃できる25mm機関砲や、乗員や兵員を守るのに役立つ装甲を装備する。

動画では、M2の乗員がMT-LBを見つけて射撃を始める。ロシア軍の歩兵が飛び降りたあと、MT-LBの脆い車体に25mm弾が何発も撃ち込まれ、MT-LBは爆発・炎上する。ウクライナ国防省は「M2ブラッドレーが手本を見せる」と誇っている。
 1カ月後の今月2日ごろ、似たようなことが起こった。今度はロシア軍のBTR-82装甲兵員輸送車2両が、アウジーウカ郊外のウクライナ側の陣地に向けて進んできた。やはりケージ装甲に覆われた車上に、歩兵が合わせて20人かそこら乗っていたようだ。
 重量15tほどの装輪車両であるBTR-82はMT-LBより新しく、より重武装でもある。だが、M-2との直接戦闘ではほとんど無防備に等しい。ウクライナ軍のドローンがBTR-82のペアを発見すると、M-2は待ち伏せ攻撃に有利な場所に陣取る。2両が遮蔽物のない開けた平原を進んでくると、M-2の乗員は射撃し始める。
 交戦の様子を捉えた動画では、25mm弾がBTR-82の上に乗っている歩兵に直撃し、その身を切り刻んでいる。1両でおそらく発煙弾がクックオフ(周囲の熱による発火・爆発)し、遺体が空を舞う。生き残った歩兵が散開するなか、M2はBTR-82や歩兵にさらに弾を浴びせる。砲撃跡の穴にかがむ兵士の姿も見える。
「現代的なテクノロジーを活用し、米国製の装備を上手に使いさえすれば、戦場で大きな優位性を得られる。われわれはそれをまたしても証明した」。第47独立機械化旅団は通信アプリ「テレグラム」のチャンネルでそう述べている。
 そのとおりだ。ウクライナ軍は昨年初めから受け取り始めた300両あまりのM2のうち、約40両を失っている。ただ、この車両の扱いに慣れるにつれて、損失数は月平均2両ほどで安定するようになっている。
 ウクライナ軍でM2を運用する部隊はこれまで第47旅団だけだった。だが、5月に米国から新たに100両かそこらのM2が供与されたことで、ウクライナ軍参謀本部は2個目の旅団に配備できるようになった可能性もある。実現すれば、ウクライナ軍が車両面でロシア軍に対して優位に立てる正面が増えるだろう。
 米国がウクライナにさらに多くのM2を送れない理由はない。ウクライナが使っているモデルのM2は、米陸軍ではすでに退役している。このモデルは、カリフォルニア州の施設にある約500両を含め、米陸軍でおよそ1000両保管されているはずだ。