北朝鮮の汚らしい戦争練習 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎汚物風船にGPS撹乱…北朝鮮の汚らしい戦争練習

 

 

 

 北朝鮮が28日夜から2日間に260個余りの「汚物風船」を飛ばしたと韓国合同参謀本部が29日、明らかにした。北朝鮮は同時に衛星利用測位システム(GPS)撹乱(かくらん)電波攻撃も敢行した。
 韓国社会に混乱を誘発し、非軍事的攻撃に対する韓国軍の対応能力を試してみようとする金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の「汚らしい予行演習」と解釈される。
 風船はソウル・京畿道(キョンギド)・江原道(カンウォンド)・慶尚道(キョンサンド)・全羅道(チョルラド)・忠清道(チュンチョンド)など全国で回収された。ソウル鍾路区(チョンノグ)政府ソウル庁舎屋上や外交部庁舎周辺でも風船が発見された。最も遠方に現れた場所は慶尚南道居昌郡(コチャングン)だった。
 高高度ミサイル防衛(THAAD)体系部隊がある慶尚北道星州(ソンジュ)より南側の地域にも汚物風船が到達した格好だ。
 韓国軍関係者は「北朝鮮は過去にも対南ビラを散布したことがあった。ただ、一日に200個を越える風船を飛ばしたのは初めて」と話した。これに先立ち、北朝鮮のキム・ガンイル国防次官は26日、「紙くずと汚物が近く韓国国境地域と縦深地域に散布されるだろう」としながら汚物散布を予告した。
 風船は高さ3~4メートルの大きさで、ここに括り付けられたビニール袋の中に汚物などが入っていた。過去の事例を見ると、風船の重さは少なくとも数十キロと推定される。2016年には車両・住宅の屋根が破損したこともある。風船とビニール袋の連結部分には風船を爆発させるための起爆装置・タイマーもついていた。風船の滞空時間などを考慮して被害を最大化しようとする目的だったことが推定できる。地上に落とされた風船を回収するために、韓国軍は化学兵器迅速対応チーム(CRRT)と爆発物処理班(EOD)を投じた。
 北朝鮮は29日、南側に対してGPS撹乱電波も放射したことが確認された。この日午前5時50分ごろ、西海(ソヘ、黄海)延坪島(ヨンピョンド)と江華島(カンファド)、京畿道坡州(パジュ)、仁川(インチョン)海上でGPS撹乱電波が確認された。海洋水産部は西海航行警報を発令した。
 北朝鮮は今年3月4~14日に「フリーダムシールド(自由の盾、FS)」(韓米合同演習)期間にもGPS撹乱電波を数回放射した。今月入ってGPS撹乱は行っていなかったが、汚物風船を飛ばすと同時に再開した。今回の妨害電波は直前より高出力だったという。
 北朝鮮が「ビラ挑発」をした名目は南側市民団体が飛ばした対北ビラに対する正面対抗だ。だが、直前に軍事偵察衛星の打ち上げに失敗した北朝鮮が韓国に腹いせの意味を含んだデモを行ったのではないかとの観測もある。北朝鮮は27日午後10時44分、平安北道鉄山郡東倉里(ピョンアンブクド・チョルサングン・トンチャンリ)西海衛星発射場から「新型運搬ロケット」を利用して軍事偵察衛星を打ち上げたが、1段エンジンが2分後に空中爆発した。

◇衛星失敗で「対南心理戦」…金与正(キム・ヨジョン)「贈り物、送り続けるだろう」
 金委員長は28日の国防科学院の演説で失敗について追及したり問責したりするのではなく、科学者を督励しながら「失敗を通してより多いものを知り、さらに大きく発展する方法」としながら「今回の発射は1階段(段階)発動機(エンジン)の非正常による自爆体系によって失敗した」と話したと朝鮮中央通信が29日、伝えた。
 金委員長が言及した自爆システムは、通常衛星やミサイルの各タンクに搭載されて飛行中に問題が発生した場合に作動する。地上に被害を与えたり周辺国が回収して分析したりするのを防ぐのが目的だ。昨年2回失敗した衛星打ち上げ時も、北朝鮮は該当システムを活用して発射体を爆破させたと話した。金委員長は偵察衛星の保有について、絶対に諦められない課題だと強調し、北朝鮮の衛星打ち上げに対応した韓国軍の空中打撃訓練を「ヒステリー的狂気」「容赦できない火遊び」等と規定して「圧倒的な、断固とした行動で自衛権の行使は確実にすべきだ」と主張した。
 空中爆発の映像が日本メディアと韓国軍を通じて公開されたことで「最高尊厳」金委員長の威信に傷がついた側面がある。汚物風船は韓国に対する攻勢を通じて視線を外部に転じるようにして内部結束を固めようとする試みの可能性もある。大規模な汚物風船は民間に直接的被害を与えることから、大衆の混乱と不安を誘発する心理戦という目的もある。
 これと同時に、今後類似の挑発に対する韓国軍の対応能力を確認し、風船の最大到達範囲を推測しようとする予行演習の性格も持っている可能性がある。実際、北朝鮮はこの日260個余りの風船を時間をずらして飛ばしながら、風向きや風速などにより韓国のどの地点まで風船が到達できるのか、実証的データを収集できたものとみられる。金委員長は28日の演説で「作戦初期の韓国傀儡軍隊の基本攻撃力と下部構造、指揮体系」に言及して「我々はこれを崩壊させることができる圧倒的力量を保有した」と述べた。
 特に北朝鮮が「ミサイル攻撃+風船テロ」と合わせて、軍事挑発に非正規戦要素を混ぜるハイブリッド戦のために予行演習を行った可能性もある。最近、イスラエル・ハマス戦争でもこのような様相がみられ、北朝鮮の「学習効果」が懸念されるところだ。ハマスはイスラエル領土を奇襲してロケットと同時にブルドーザー・ハンググライダーを利用した非正規戦法をミックスさせた。
 北朝鮮が風船に汚物ではなく神経毒素VXや炭疽(たんそ)菌などをつけて飛ばせば、状況はさらに深刻化する場合がある。キム・ガンイル次官も対北ビラに対する正面対抗を予告して「器具を使った散布行為は特異な軍事的目的でも利用することができる危険な挑発」と話した。韓国軍が万が一の事態に備えて風船回収時に化学兵器迅速対応チームを投じた背景だ。韓国政府と米国国務省は北朝鮮が2500~5000トンの生化学武器を保有中と推定している。
 金与正労働党副部長は29日、朝鮮中央通信を通じて配布した談話で「(対南汚物風船は)『表現の自由保障』を叫ぶ自由民主主義の幽霊どもに送る心のこもった『誠意の贈り物』」としながら「これからもずっと拾い集めなければならないだろう」と明らかにした。韓国政府が対北ビラが表現の自由として禁止できないとしたことを皮肉って、自分たちもこれに対応して汚物風船を送ったという詭弁だ。金副部長は「今後、韓国のものが我々に散布する汚物量の何十倍で、1件当たりに対応するだろう」と話した。