ウ軍のストライカー装甲車、北東部の都市でロ軍歩兵を撃退 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎ウクライナ軍のストライカー装甲車が本領発揮 北東部の都市でロ軍歩兵の撃退続ける

 

 

 米国は2023年初め、米陸軍の退役したストライカー装甲車200両近くをウクライナに供与した。ストライカーは機関銃や擲弾(てきだん)発射器で武装し、乗員2人のほかに兵員9人が乗り込める重量20t弱、8輪の車両だ。ウクライナ軍参謀本部はそのほとんどを新編の第82独立空中強襲旅団に配備した。第82旅団は、ウクライナ軍の精鋭軍である空中強襲軍(空挺軍)の精鋭旅団だ。
 それから1年数カ月後、この機敏な戦闘車両はついに、米陸軍と米ゼネラル・ダイナミクス社が1990年代に開発した際に想定していた戦闘エリアに投入された。都市である。
 具体的には、ロシアが2週間前にウクライナ北東部ハルキウ州で始めた攻勢の現在の中心地、ボウチャンシク市だ。第82旅団については、ロシア軍がウクライナ第2の都市、ハルキウ市の北の国境を越えて攻め込んできた直後、ボウチャンシクの守備隊の増援に急派されたという情報が流れていた。
 22日、第82旅団はソーシャルメディアに動画を投稿し、ボウチャンシクに展開していることを認めた。ドローン(無人機)の空撮映像や兵士がヘルメットに装着したカメラの映像を編集した動画には、同旅団の部隊がボウチャンシク中心部の市街地で戦闘を繰り広げる様子が映っている。兵士がストライカーの上面のハッチから身を乗り出し、対戦車ミサイルを発射する姿も見える。
 エストニアの軍事ブロガー、WarTranslated(@wartranslated)が引用し、字幕翻訳を付けている別の動画では、第82旅団に所属する軍人が「防御陣地を確保し、敵を撃退するのが任務でした」と説明している。まさにこれこそ、第82旅団にふさわしい任務だ。
 米軍のストライカー部隊で初めて戦闘に臨んだのは、陸軍第2歩兵師団の第3旅団だった。
 2003年10月、この部隊は米国を中心とした国々によるイラクに対する戦争で、不穏な情勢だった北部の大都市モスルに派遣された。米陸軍のウォルター・グレイ2世少佐は「(ストライカー)部隊は複数の任務に従事した。ストライカーは機動力、速度、静粛性からモスル市街地での襲撃や巡回、包囲・捜索作戦に適していたので、兵士の間でたちまち高い評価を得るようになった」と2017年の論文に書いている。

 意味するところは明らかだ。ウクライナ軍もまた、ストライカーを運用する旅団は市街戦にこそ投入すべきなのだ。
 反対に避けるべきなのは、ロシア軍の機械化旅団や戦車旅団とは直接戦わせることである。ストライカーよりも重い戦車やその他の装軌戦闘車両が、より優れた長射程の火力を発揮できる、開けた地形ではなおさらだ。ストライカー部隊の「主な役割はロシア軍の車両編成を撃破することではない」とグレイも言及している。
 第82空中強襲旅団は昨年夏に初めて戦闘に参加したとき、まさにこうした間違った地形で、間違った敵と戦わされた。ウクライナ南部の開けた土地で、壕(ごう)に車体を隠したロシア軍の機械化部隊とまみえたのだった。その結果、オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」で確認されているだけで、ストライカーを少なくとも8両撃破されている。
 南部の戦線が安定し、ロシア軍がウクライナの東部と北東部の都市部に兵力を集中させるなかで、第82旅団はようやく、みずからの得意とする地形で戦う機会を得た。
 第82旅団の第一陣がボウチャンシクに送られたとき、この増援に懸かっているものは非常に大きかった。ロシア軍の新たな軍勢はボウチャンシクを攻略してハルキウに向かうルートを切り開く狙いとも考えられた。北方に集まってきたこの部隊も、ウクライナのほかの前線で有効だった歩兵先行の突撃戦術を採用していた。
 ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は「突撃部隊、通常は小隊規模(40人程度)の集団が拠点を攻撃し、その後ほかの突撃部隊と合流する」と解説している。「こうすることで、目標に接近する際に損害を抑えられる半面、前進ペースは遅くなる」
 ロシア軍の複数の小隊がボウチャンシク中心部の中間地帯に散開したため、最前線はあいまいになり、第82旅団のストライカー部隊は360度全方向の戦いを強いられた。同旅団の前出とは別の軍人は「われわれは円形防御を維持した。彼ら(ロシア軍部隊)はあらゆる方向から向かってきた」と語っている。

 ストライカーの集団は円状に陣取って戦うのに適している。車高が約2.7mあり、上部にセンサー類や火器を搭載するストライカーは優れた監視・射撃プラットフォームにもなり、ロシア側が忍び寄るのは難しい。
 それ以上に重要なのは、ストライカーは1両で9人の歩兵分隊を運べることだ。ストライカーが4両あれば、40人近い歩兵小隊を展開できる。ウクライナ軍の別の部隊に配備されている米国製のM2ブラッドレー歩兵戦闘車はストライカーよりも重装備だが、兵員スペースは狭く、歩兵小隊を運ぶにはもっと数が必要になる。グレイがストライカー部隊は「下車戦闘部隊として運用するのが最適」と述べているのももっともだ。
 第82空中強襲旅団がボウチャンシクでの市街戦にしっかり対応できる状態にあったのは明らかだ。ロシア軍部隊は北東部攻勢の最初の数日で数km前進したものの、ボウチャンシク中心部で第82旅団とそのストライカーを含むウクライナ側の強固な防御にぶつかり、ほぼ足止めされることになった。
 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは先週時点で、この方面のロシア軍について「足場を築こうとさらに南の森林や建物への侵入を続けているようだ」と分析しつつ、「南へ奥深く前進できるのかは疑問だ」としている。