ウクライナ軍の最強戦車M1が前線に展開 | すずくるのお国のまもり

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◎ウクライナ軍の最強戦車M1が前線に展開 アウジーウカ西方で懸命の防衛戦

 

 

 ウクライナ軍の米国製M1エイブラムス戦車が戦闘を行っている。場所は東部ドネツク州アウジーウカのすぐ北に位置する集落ステポベ周辺だ。
 ウクライナ国防省が23日に公開した動画には、同国が保有する最高の戦車であるエイブラムスがステポベ付近の道路を移動したり、おそらくは夜間にロシア軍部隊を砲撃したりする様子が映っている。
 重量69トン・乗員4人のM1A1/SA(状況認識型)戦車は、昨年秋以降に31両が米国からウクライナに供与された。タングステン装甲、側面に取り付けられたM19爆発反応装甲、120mm滑腔砲、昼夜対応の光学機器などを備える。
 M1がウクライナの前線に姿を現すまでにはしばらく時間がかかった。1個大隊に相当する31両すべてを配備される部隊が、第47独立機械化旅団になるのは明白だった。第47旅団はM2ブラッドレー歩兵戦闘車や地雷除去用の工兵車両であるアサルト・ブリーチャー・ビークル(ABV)など、ウクライナ軍が保有する最上の米国製装甲車両の運用を中心的に担ってきた部隊だ。
 第47旅団は、まず戦車の入れ替えをする必要があった。同旅団はこれまでに何度か戦車を入れ替えてきたことで知られる。北大西洋条約機構(NATO)の訓練を受けたこの旅団は、編成当初、スロベニアから供与された28両のM-55S戦車を運用していた。旧ソ連の古いT-55戦車をイスラエルの協力で改修したもので、英国製の近代的な105mmライフル砲などを搭載する。
 ただ、M-55Sは防御力が低い。そこで、第47旅団は昨年夏の反転攻勢を主導するため南部に転用される前にM-55Sを手放した。東部ルハンシク州のクレミンナの森周辺に配置されていた第67独立機械化旅団に譲渡した可能性がある。第47旅団には代わりに、ドイツとポルトガルから供与されたレオパルト2A6戦車21両が配備された。
 レオパルト2A6は、M1A1に対応するドイツ製戦車だ。同様の装甲や光学機器、ほぼ同等だが砲身のより長い滑腔砲を装備する。
 だが、反転攻勢で第47旅団の戦車大隊は大きな損害を被った。少なくとも4~5個小隊相当のレオパルト2A6を失った。ほかのレオパルト2も損傷し、修理のためリトアニアへ送られている。反攻が秋に停止すると、第47旅団は再び東部に転用され、アウジーウカの北面を防御するためステポベのすぐ西に陣取った。
 第47旅団のM2は連日のようにステポベに進撃し、25mm機関砲でロシア軍の突撃部隊に砲撃を浴びせた。戦闘車両を支援することもあった。
 同旅団はステポベでさらに1両のレオパルト2A6を失った。遺棄されたこの戦車は、ロシア側に鹵獲される前にM2によって破壊されている。
 戦車大隊が中隊規模にまで縮小したため、第47旅団は2回目の戦車入れ替えに着手。残存していたレオパルト2A6を、アウジーウカの北80kmほどのクレミンナ方面で戦う第21独立機械化旅団に譲渡した。
 第21旅団に引き渡された12両前後のレオパルト2A6は9~10両のStrv122(スウェーデンによるレオパルト2A5の改良版)戦車と合流し、同旅団の戦車中隊は大隊に拡大した。
 一方、戦車がなくなった第47旅団は、近傍の旅団が保有していたT-64戦車やT-72戦車を回してもらったあと、今年1月ごろにようやくM1を手に入れ、前線に展開させた。
 アウジーウカは今月中旬、守備隊の弾薬が枯渇して陥落した。これは昨年10月以来、米議会でロシア寄りの共和党議員らがウクライナへの追加支援を阻んできた直接の結果だった。
 それでも、ウクライナ軍はアウジーウカの西でなお防御線を保持している。米下院の多数派を共和党が握る前にジョー・バイデン政権が供与を決めたM1が、この防御線を強固にしている。