泥沼のミャンマー国軍、民間の犠牲は拡大の一途 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎泥沼のミャンマー国軍、民間の犠牲は拡大の一途 自作の迫撃砲で抵抗する民主派武装組織も クーデター3年

 

 

 ミャンマー国軍によるクーデターから2月1日で3年となる。国内各地で少数民族武装勢力や民主派武装組織「国民防衛隊(PDF)」が抵抗を続け、自ら武器を製造する部隊もある。苦戦する国軍は、1月末で期限が切れる非常事態宣言を半年間延長する見通しだ。戦闘に巻き込まれる民間人は後を絶たず、内戦終結への道筋は見えない。(バンコク・藤川大樹)
 ミャンマークーデター ミャンマー国軍は2021年2月1日、前年の総選挙での不正を口実に、民主派指導者アウンサンスーチー氏らを拘束。非常事態を宣言して全権を掌握した。市民の抗議デモは武力闘争に発展し、各地で国軍との戦闘が続く。
 「最近では軍部隊はゲリラ攻撃を恐れ、拠点から出てこなくなった」
 北部ザガイン地域が拠点の小規模なPDF部隊に所属するタキンジー氏(24)が戦況を説明する。前哨基地から出てくる国軍を待ち伏せ、他のPDF部隊と協力しながらゲリラ攻撃を展開しているという。
 タキンジー氏の部隊には約30人が所属するが、自動小銃は3丁しかない。武器不足を補うため迫撃砲やロケットランチャーなどを自作している。製造方法は、海外の動画投稿サイトを見たり、連携する他の部隊から教えてもらったりして学んだ。鉄パイプなど身近にある材料やひそかに調達した火薬を使い、試行錯誤を繰り返しながら精度と射程を向上させてきた。
◆「軍政を倒せるかもという希望も」
 タキンジー氏は、中国と国境を接する北東部シャン州で少数民族武装勢力が昨年10月に始めた一斉攻撃「1027作戦」が転機になったと指摘する。「多くの市民に『軍政を倒せるかもしれない』という希望を与えた。われわれの部隊の士気も高まった」と話す。
 1027作戦では、軍事政権の打倒などを掲げるミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)など三つの武装勢力が、400以上の国軍の前哨基地を占拠した。さらにシャン州コーカン自治区の中心地ラウカイなど十数の町を掌握した。
 戦線は北西部チン州や西部ラカイン州、北部ザガイン地域など各地に拡大。国軍と3武装勢力は今月11日、中国の仲介により一時停戦で合意したものの、その後も戦闘は続いている。
◆抵抗勢力の制圧に空爆、砲撃、民家焼き打ち…
 国軍は制空権を握り、都市部を中心に支配を固めてきたが、多正面作戦を強いられて苦戦する。国軍部隊の降伏も相次ぐ。現地関係者は「高官を含む部隊の降伏や亡命は一般兵士の士気を低下させており、政権支持者はミンアウンフライン総司令官の統治能力に疑問を抱いている」と明かす。
 この関係者は「クーデター以降、国軍は最大の試練に直面している」とも話す。国軍は抵抗勢力の制圧に向け、空爆や重火器による砲撃を多用し、民家の焼き打ちも辞さない。
◆増え続ける民間人の犠牲
 そのため民間人の犠牲は増える一方だ。国連人道問題調整室(OCHA)によると、クーデター以降に故郷を追われた避難民は昨年末時点で約230万人にのぼる。このうち62万8000人は1027作戦以降の発生と推定される。
 また、調査団体「データ・フォー・ミャンマー」によると、昨年末までに7万8737戸の民家が焼失した。PDFメンバーのチョージー氏(26)は国軍による民家焼き打ちについて「軍は住民とPDFの分断を狙っている。『PDFがいるから、家を燃やされるんだ』と住民を脅し、PDFへの支援をやめさせようとしている」と憤る。