ロシア軍、北朝鮮製ミサイルでウクライナの兵站基地爆破 | すずくるのお国のまもり

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◎ロシア軍、北朝鮮製ミサイルでウクライナの兵站基地爆破 対応難しく

 

 

 ロシアはウクライナとの国境のすぐ北の陣地から、北朝鮮製の弾道ミサイルをウクライナに撃ち込んでいる。
 ミサイルはKN-23短距離弾道ミサイルとみられ、すでにウクライナ側に大きな損害を与えた可能性がある。あるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)アナリストは、ロシアが使い始めた北朝鮮製のミサイルによって最近、ウクライナ軍の兵站基地2カ所が攻撃され、貴重なタンク車少なくとも9両が撃破されたとみている。
 KN-23は500kgほどの弾頭を搭載する重量およそ3400kgの固体燃料式ミサイルだ。ロシアによるKN-23の入手は、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争が大幅にエスカレートしたことを意味する。ウクライナは同様の兵器で反撃することはできないかもしれない。
 北朝鮮が自国製のミサイルを輸出することは国際的な制裁で禁じられている。だが、ウラジーミル・プーチンと金正恩という2人の独裁者がそれぞれ支配するロシアと北朝鮮の政権が、制裁をあからさまに無視し、戦争を拡大したところで、ウクライナやその支援諸国から重大な対抗措置を招くことはないと踏んでいるのは明らかだ。
 米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は先週の記者会見で、北朝鮮がロシア側にミサイルのほか発射機も提供したことを明らかにしている。慣性誘導の弾道ミサイルであるKN-23は通常、装輪の輸送起立発射機(TEL)から発射される。射程は640kmかそこらで、照準点から32m以内に着弾するとされる。
 KN-23は超強力な兵器というわけではない。というより、おおむねロシアのイスカンデル弾道ミサイルに似ている。ウクライナ軍は、保有する最高の米国製防空システムであるパトリオットPAC-2地対空ミサイルシステムで、イスカンデルをたびたび撃墜している。
 だが、ウクライナにはパトリオットの発射機が3基しかない。おそらく首都キーウ、南部の港湾都市オデーサ、東部の主要都市ハルキウに1基ずつ配備されている。ほかの都市は弾道ミサイルに対して無防備な状態にある。実際、カービーの説明では、ロシア軍によるKN-23を用いた最初の攻撃で目標にされたのは南部の都市ザポリージャだった。ザポリージャはパトリオットでカバーされていない。
 北朝鮮はKN-23の提供によってロシアのミサイル在庫数を増やし、先月以来、ロシア軍がウクライナに対して過去最大規模のミサイル一斉攻撃を続けるのを手助けしている。ロシア側の狙いが、防空兵器の供給が限られるウクライナ側が迎撃できる以上のミサイルを発射することにあるのは明らかだ。

 ウクライナはKN-23の発射機を攻撃目標にできるかもしれないが、攻撃の手段が問題になる。ウクライナ国産のトーチカU弾道ミサイルの射程は120kmほどにとどまる。ウクライナは英国とフランスから空中発射型の巡航ミサイル、米国から地上発射型のミサイルを供与されているものの、これらについてはロシア国内の攻撃に使わないことを支援国側に保証している。
 ウクライナは長距離攻撃用のドローン(無人機)を製造しているほか、古いS-200地対空ミサイルシステムを射程480kmの地対空兵器に改造してもいる。しかし、いずれも地上のKN-23ミサイルシステムを破壊できるほどの迅速さと精度で攻撃できるのかは不明だ。
 そもそも、KN-23の発射機を直接狙うとすれば、ウクライナ側はミサイルの発射前、あるいは発射後十分早い時点で探知する必要があるが、それができるのかどうかすらわからない。
 ウクライナは占領下のクリミアなど国内のロシア軍の後方地域への攻撃を強めることで、非対称的に対抗することもできるかもしれない。しかし、やはりその手段が問題になる。ウクライナが自国で生産している遠距離攻撃用の弾薬は月に数えるほどだ。残りの弾薬ニーズは支援国に頼っている。だが、支援国は当てにできない。
 最悪なのは米国だ。米国は昨年、射程が160kmあるATACMS地対地弾道ミサイルを20発かそこらウクライナに供与したが、それ以降、ATACMSの補充を拒んでいる。
 ホワイトハウスが最も強力な兵器類のウクライナへの大量供与に消極的なのは問題である。ただ、それよりもはるかに大きな問題は、米議会のロシア寄りの共和党議員らが、ホワイトハウスによる610億ドル(約8兆8000億円)規模の対ウクライナ支援予算案の採決を何カ月も拒んでいることだ。
 共和党がロシアではなくウクライナを支えると決断するまで、ロシアは弾頭と合わせれば4t近くの重さになる北朝鮮ミサイルを、防御が薄くなってきているウクライナに撃ち込み続けることができる。ウクライナ側には、反撃する手段がほとんどなくなってしまうだろう。