金正恩国務委員長が日本国の総理大臣に見舞い電 | すずくるのお国のまもり

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お国の周りでは陸や海や空のみならず、宇宙やサイバー空間で軍事的動きが繰り広げられています。私たちが平和で豊かな暮らしを送るために政治や経済を知るのと同じように「軍事」について理解を深めることは大切なことです。ブログではそんな「軍事」の動きを追跡します。

◎金正恩国務委員長が日本国の総理大臣に見舞い電

 

 

【平壌1月6日発朝鮮中央通信】朝鮮民主主義人民共和国国務委員長である敬愛する金正恩同志が5日、日本国の岸田文雄総理大臣に見舞い電を送った。
 見舞い電は、日本で不幸にも新年の年初から地震による多くの人命被害と物質的損失を被ったという報に接して、総理大臣と総理大臣を通じて遺族と被害者に深甚なる同情と見舞いを表した。
 また、被災地の人民が一日も早く震災の悪結果をなくし、安定した生活を回復するようになることを祈願すると指摘した。--

 

◎경애하는 김정은동지께서 일본국 총리대신에게 위문전문을 보내시였다

 

 

도꾜
일본국 총리대신
기시다 후미오각하
 나는 일본에서 불행하게도 새해 정초부터 지진으로 인한 많은 인명피해와 물질적손실을 입었다는 소식에 접하고 당신과 당신을 통하여 유가족들과 피해자들에게 심심한 동정과 위문을 표합니다.
 나는 피해지역 인민들이 하루빨리 지진피해의 후과를 가시고 안정된 생활을 회복하게 되기를 기원합니다.
조선민주주의인민공화국 국무위원장
김정은
주체113(2024)년 1월 5일
평 양(끝)

 

 

 

◎金正恩委員長が岸田首相に見舞い電報 「閣下」呼称まで

 

 

 統一研究院のホン・ミン研究委員は「北が韓国に超強硬姿勢を見せながら、日本には融和的な態度の可能性を示唆し、韓米日協力を弱めるための方法の一環かもしれない」と述べた。
 北朝鮮は過去にシリアやキューバなどいわゆる反米国の災難状況に見舞いの電報を送ってきた。金委員長は5日にも大規模爆弾テロが発生したイランに対し、ライシ大統領あてに見舞い電報を送った。
 北朝鮮は2011年の東日本大震災当時、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長の名義で在日本朝鮮人総連合会に見舞い電報を送った。1995年の阪神・淡路大震災当時には姜成山(カン・ソンサン)首相が村山富市首相に電報を送った。

 

◎金正恩氏、岸田首相宛て見舞い電に「3つの政治的意図」
編集委員 峯岸 博

 

 

 朝鮮労働党の重要会議に出席した金正恩総書記(2023年12月)=朝鮮中央通信・ロイター
能登半島地震の発生を受け、岸田文雄首相に見舞いの電報を送った北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の一手が波紋を広げている。朝鮮労働党の重要会議で今年の軍事偵察衛星の追加打ち上げや核兵器の増産計画を宣言した直後だけに、その真意を読み解くことが重要になる。
 見舞い電は北朝鮮国営の朝鮮中央通信が6日に公表し、日本政府が追認する形をとった。党機関紙「労働新聞」も4日付と5日付で能登半島地震の発生と被害状況を伝え、6日付で見舞い電を掲載している。「普通の国」の国家指導者を内外にアピールしたい金正恩氏が隣国の大規模災害で人道主義的な振る舞いを強調した面がうかがえる。
 それだけではない。見舞い電からは3つの政治的メッセージが読み取れる。
①韓国を排除する「通日封南」戦略
 見舞い電に敏感に反応した国がある。韓国だ。電報の付日である5日は同国との海上の南北軍事境界線に近い海域で、北朝鮮の朝鮮人民軍が200発程度の砲撃訓練を実施し尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権を威嚇していたからだ。砲撃訓練は7日まで続いた。韓国軍も5日に北側に砲撃するなど朝鮮半島では緊張が高まっている。
 見舞い電と砲撃――。金正恩氏が日韓にみせた対照的な2つの動きは、タイミングを「重ねた」というのが日韓双方の政府関係者や専門家の一致した見方だ。北朝鮮が見舞い電の事実を明らかにしたのは、震災発生(1日)から5日も経過した後だった。
 金正恩氏の狙いについて、韓国政府のシンクタンク、統一研究院の徐輔赫(ソ・ホヒョク)研究委員は、韓国を排除して日本と直接対話に乗りだす「通日封南」戦略の一環とみる。「北(朝鮮)が人道的問題を名分に韓米日の対北制裁の枠組みを弱体化させ、韓国を孤立させようとする動きに韓国は対応しなければならない」と警鐘を鳴らす。
 日米韓3カ国の安全保障協力は2023年8月の米キャンプデービッドでの首脳会談を契機に飛躍的に強化されている。その脅威を受ける北朝鮮が3カ国の中で最も崩しやすいとみて日本を使って風穴を開けようとしているわけだ。日朝間のわずかな変化でも、北朝鮮への圧力路線を貫く尹政権は神経をとがらせる。「日朝が動きだした場合、もろ手をあげて賛成できないが、韓国政府は日本の拉致問題に協力すると言ってきたので表だって反対もしにくい」(韓国政府関係者)とのジレンマを抱える。
②韓国野党に援護射撃
 金正恩氏の一手には日韓の離間策に加え、4月の総選挙に向けて与野党攻防が過熱する韓国内の政局にも影響を与える狙いがみえると北朝鮮情勢に詳しい平岩俊司・南山大教授は話す。
 見舞い電は、革新系野党「共に民主党」が尹政権を攻撃する口実になり得るという。平岩教授は「韓国が北朝鮮に厳しい姿勢で臨んできている一方で、日本は構造的に拉致問題を含めて北朝鮮との対話を求めている。日本にとって大変な問題である地震が北朝鮮からすれば日韓の立場の違いを利用する格好のチャンスと映ったのだろう」と指摘。そのうえで「尹錫悦政権が一生懸命に日韓関係を進展させているにもかかわらず、日本が北朝鮮との関係改善を模索しているとイメージさせることで、韓国国内で野党から『尹政権は日本に裏切られている』と批判され、対日政策の失敗という話に連携させていこうとしているようにみえる」。
③日本に投げたボール
 電報の中身をおさらいしてみよう。「日本で不幸にも新年のはじめから、地震によって多くの人命被害と物的損失を被ったという知らせに接し、あなたと、あなたを通じて遺族と被害者に深い同情とお見舞いを申し上げる」「人々が一日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活を回復することを祈る」
 日本の大規模災害時に北朝鮮が見舞いの電報を送ること自体は東日本大震災時を含めて珍しくない。とはいえ、最高指導者が日本の首相宛てに送ったのは今回が初めてだ。日米韓の情報分析の担当者は、日本の首相を初めて「閣下」と呼称したのと合わせて電報の丁寧な表現ぶりに着目している。
 人道的な問題での対話や接触を進める北朝鮮側の強い意思を示すもので日本側にボールを投げた――。こんな分析が3カ国の政府内にある。
 林芳正官房長官は6日の記者会見で金正恩氏の見舞い電に「感謝の意を表したい」と述べた。岸田首相は北朝鮮をめぐる懸案に言及するたびに「私の決意をあらゆる機会を逃さず金正恩氏に伝え続ける」と繰り返してきた。政府の震災対応がある程度落ち着いたところで金正恩氏に返礼の形をとりつつ、金正恩氏に直接メッセージを送ることも可能になる。そのときに何をしたためるか。書簡の往来を重ねながら政府間の接触が始まっていく展開も考えられる。
〇岸田首相とのパイプの意味
 北朝鮮指導部は平壌から日米韓をはじめ世界情勢をつぶさに把握している。岸田首相がかねて金正恩氏との首脳会談に向けた日朝間のハイレベル協議の開催を呼びかけており、今回の電報はそうした首相の胸中を突いたともいえる。

 支持率が急落する岸田首相の劇的な政権浮揚策は日朝問題くらいしか見当たらない、との声が政界につきまとう。対北朝鮮強硬派がそろう自民党安倍派が裏金疑惑で身動きがとれず、内閣の司令塔である官房長官も安倍派の松野博一氏から岸田派の林氏に交代した今こそ日朝を動かす好機だと北朝鮮側がとらえているという分析もある。
 一方で平岩教授は「岸田政権がもう少し積極的に働きかけをすれば違った展開があるかもしれないが、北朝鮮からすると今の日本国内の状況をみて、どこまで真剣にイニシアチブをとって動くかは疑問だ。今後、日朝間で接触はあるだろうが、北朝鮮が本格的に交渉に乗りだすのは難しいのではないか」と慎重な見方を示す。
 最近、軍事工場を視察した金正恩氏は韓国を「我々の主敵だ」と断じ、戦争も躊躇(ちゅうちょ)しないとして兵器生産の拡大を指示。尹政権への対決路線のアクセルを踏み込んだ。韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件や延坪島砲撃事件が相次いだ李明博(イ・ミョンバク)政権期の2010年当時と似た流れができつつある。
 北朝鮮外交が大きく転じるとすれば、11月の米大統領選以降というのが常識的な見方だ。そうだとしても、北朝鮮にとって、強硬派の米韓両政権と絆を深める日本とパイプをつなぎ、政治的なツールにする利点は小さくないということだろう。