北朝鮮向けビラ散布 韓国当局が民間団体に重ねて自制要請 | すずくるのお国のまもり

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◎北朝鮮向けビラ散布 韓国当局が民間団体に重ねて自制要請

 

 

【ソウル聯合ニュース】韓国統一部は23日、国内の脱北者団体など民間団体に対し、北朝鮮向けに体制批判のビラなどをまく行為を自制するよう改めて求めた。
 統一部が国内の団体に対し、北朝鮮に向けたビラ散布を自制するよう求めた。脱北者団体などは大型風船を使って体制批判のビラやマスク、薬などを北朝鮮側に飛ばしてきた(コラージュ)=(聯合ニュースTV)
 イ・ヒョジョン副報道官は定例会見で「政府がたびたび自制を要請しているにもかかわらず、一部の団体によるビラなどの散布が続いている状況に対し、政府は憂慮している」と述べた後、散布の自制を重ねて求めた。
 北朝鮮がこうして韓国側から飛ばされて来るものが新型コロナウイルス流入の原因だとして韓国側の責任を主張していることに触れ、「これは科学的な根拠がなく、全く事実でないことを今一度強調する」と述べた。また「北が事実の歪曲(わいきょく)とわが国民への報復措置などに言及することは大変不適切で、遺憾なこと」と批判した。
 イ氏は「政府は北のいかなる威嚇と挑発に対しても、強力かつ断固に対処していく」と言明した。
 統一部の立場表明は、北朝鮮が韓国の団体のビラ散布を口実に挑発に乗り出す可能性があることを警戒したものとみられる。北朝鮮の人権問題に取り組む韓米などの民間団体は25日から「北朝鮮自由週間」に入る予定で、韓国の団体がこれに合わせビラなどを散布する可能性も念頭に置いているようだ。

 

◎韓国政府「対北朝鮮ビラ散布自制」初めて要請…ビラめぐる尹政権のジレンマ(1)
 

 

 

 統一部が23日、民間団体に向け「対北朝鮮ビラ散布を控えてほしい」という立場を明らかにした。「表現の自由」などを理由に「対北朝鮮ビラ禁止法」(南北関係発展法改正案)に反対の立場を表明して発足した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権だが、南北境界隣接地域の住民らの安全など「状況管理」のためにはビラ散布を止めなければならないという悩みが反映されたと分析される。
◇「ビラ散布自制要求」
 統一部のイ・ヒョジョン副報道官はこの日の定例会見で「度重なる自制要請にもかかわらず、一部団体の対北朝鮮ビラなどの散布が続いている状況に対し韓国政府は懸念している。ビラなどの散布行為を自制することを改めて促す」と話した。尹錫悦政権が対北朝鮮ビラ散布自制を要求する公式な立場を別途に発表したのは初めてだ。
 これに先立ち5日に自由北朝鮮放送のパク・サンハク代表は報道資料を出し、前日に「大型風船20個に鎮痛剤5万錠、ビタミンC3万錠、マスク2万枚をともに北朝鮮に向けて飛ばした」と主張した。公開された写真によると、垂れ幕には「悪性伝染病の原因は対北朝鮮ビラ?」「金正恩(キム・ジョンウン)、金与正(キム・ヨジョン)を撲滅しよう」などの文言があった。
 これに加え韓米の北朝鮮人権団体などが25日から1週間にわたり共同主催する「北朝鮮自由週間」の行事期間中にまた北朝鮮へのビラ散布が行われる可能性もある。パク・サンハク代表はこの日中央日報との通話で「24日にスーザン・ショルティ北朝鮮自由連合代表が韓国に到着すれば北朝鮮自由週間中の対北朝鮮ビラ散布計画を話し合う予定」と話した。
 この行事は毎年4月に開かれているが、今年は新型コロナウイルスなどの影響で今月に延期された。昨年4月の行事の際には自由北朝鮮運動連合が10個の大型アドバルーンを利用して北朝鮮向けビラ50万枚を散布したと主張している。
◇「北の事実歪曲に遺憾」
 統一部はこの日「ビラ散布が実際に行われる場合、捜査当局で捜査するだろう」という立場を明らかにすると同時に、対北朝鮮ビラ散布に対する「強力な報復」を公言した北朝鮮に向けても強い警告のメッセージを出した。
 イ副報道官は「北朝鮮が新型コロナウイルス拡散の責任を対北朝鮮ビラに転嫁していることに対しても、これは科学的根拠がなく全く事実ではない点を改めて強調する。北朝鮮が事実歪曲と韓国国民に対する報復措置などに言及するのは極めて不適切で遺憾なこと」と話した。その上で「韓国政府は北朝鮮のいかなる威嚇と挑発に対しても強力かつ断固として対処していくだろう」と付け加えた。

 これに先立ち北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長は先月10日の全国非常防疫総括会議での演説で、対北朝鮮ビラを新型コロナウイルス伝播の原因である「目新しい物品」と指し示して「対応もとても強力な報復性対応を加えなければならない。ウイルスはもちろん、南朝鮮当局の連中も撲滅することで応えるであろう」と話した。
 同月18日の談話でも金副部長は「われわれの境内にいまも汚いごみを引き続き送り込んで(中略)『食糧供給』と『医療支援』などを言い散らすことこそ、わが人民の激烈な憎悪と憤激をいっそう恐ろしく爆発させるだけである」と明らかにした。
◇不必要な北朝鮮刺激避けるよう
 尹錫悦政権は対北朝鮮ビラ散布を法で禁止したり処罰するのは適切でないとの立場だ。ビラそのものに対して「猥褻的宣伝とフェイクニュースで埋められた」とし2020年12月に対北朝鮮ビラ禁止法を作り刑事処罰を可能にした文在寅(ムン・ジェイン)政権の路線とは違いがある。現行法である対北朝鮮ビラ禁止法は事実上死文化されたという分析が出ている理由だ。
 韓国政府消息筋は「尹錫悦政権は対北朝鮮ビラそのものに対しては表現の自由と北朝鮮住民の知る権利などを考慮し政府は価値判断できないが、南北境界隣接地域住民の安全に脅威となりかねない点は認めており、それにもかかわらずこれを法案と刑事処罰で防ぐのは適切でないため民間団体啓蒙を中心に対応するという立場」と話した。
 この日統一部の「対北朝鮮ビラ関連の立場」発表には、韓国政府が先月「大胆な構想」という対北朝鮮政策の枠組みを打ち出した中で不必要に北朝鮮を刺激する必要はないという判断も背景にあると分析される。2020年6月に北朝鮮は対北朝鮮ビラを口実にして開城(ケソン)南北共同連絡事務所を一方的に爆破した。
 梨花(イファ)女子大学北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「与党が文在寅政権時代に対北朝鮮ビラ禁止法に対し民主主義に外れると強く指摘した点などを考慮すれば尹錫悦政権としては対北朝鮮ビラ関連対応に多く悩んだだろう。結果的に政府は法を通じて散布を防ぐ代わりに民間団体説得と協力にウエイトを置くとみられ、現在対南挑発の名分を積み上げている北朝鮮に余計な口実を与えてはならないという判断」と話した。