この「家」という作品は、木曾にある小泉家と橋本家という二つの旧家の衰亡を描いた小説ですが、蜂の子が登場するのは上巻の最初の方で、小泉家から橋本家に嫁いだお種のところに、弟の三吉が東京から来て、仕事を終えて帰る時にちょっとだけ出てきます。
『三吉と姉も名残を惜むという風で、
「お前さんに食べさせてもやりたいし、持たせてもやりたいと思って、今三人掛りで、この蜂の子を抜くところだ。見よや、これが巣だ。えらい大きな巣を作ったもんじゃないか」
五層ばかりある地蜂の巣は、漆の柱を取離して、そこに置いてあった。
お種はお仙やお春と一緒に、子は子、親に成りかけた蜂は蜂で、一々巣の穴から抜取っていた。
この地蜂は、蜜蜂などに比べるとずっと小さく、土地の者の珍重する食料である。
三吉も少年の時代には、よく人について、この巣を探しに歩いたものである。
「母親さん、写真屋が来ましたから、着物を着更えて下さい」
こう正太がそこへ来て呼んだ。
「写真屋が来た?それは大多忙しだ。お仙――蜂の子はこうして置いて、ちゃっと着更えまいかや。お春、お前も仕度するがよい」
とお種は言った。』
木曽の馬籠込で生まれた藤村は、幼少の頃から蜂の子をとびっきりのご馳走として食べていたのでしょう。
蜂の子を巣から抜き取る作業って、けっこう手間もかかるし根気もいるんですよね。(笑)
彼の小説には、こんなふうにしばしば蜂の子が登場しますヨ。
時間のある方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
=>鈴木養蜂場 はちみつ家
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