為末大「日本人の足を速くする」を読みました。
最近の私の興味は、「日本人の体に合った走り方」です。その探求に、ランニングの際には飛脚の棒を担いてみたり、散歩にワラジを履いてみたりしています。これらは、古い日本人が経験的に編み出した体の使い方にヒントがあるように思うからです。
そんな私に本書のこのタイトルが飛び込んできました。
先日読んだ本「ナンバ走り」で、短距離ランナー末續慎吾選手のナンバ的な「腕ふり」について書かれていました。短距離ランナーの走り方にも興味が広がりました。世界陸上のメダリストである為末さんは「日本人が速く走る方法」をどう教えてくれるのでしょうか?
少し話がそれますが、以前、私は為末大さんのトークセッションを観に行って、生でお話を伺ったことがあるのを思い出しました。
そのときのブログ→
https://ameblo.jp/suzukiyappan/entry-12284262078.html
為末さんのカッコいいところは、走ることを考えることを通じて、どう生きるか、ということにまで示唆をくれるところです。
さて、本書では為末さんが競技人生で培ってきた「日本人が速く走る方法」について教えてくれています。それは、いわゆる「筋トレ」が苦手な私にも参考になる内容でした。
コケそうになる感じが大切
コツを覚えれば、だれでも足が速くなります。
最大のポイントは、走るときの意識を変えることです。
走る、というよりも、コケそうになるのをこらえる、という感じで走ると、早く走れます。
自然に真っすぐ立って、ほうきが倒れるように体全体を前に倒してください。重心が前に移動し、体重がつま先にかかって倒れこみそうになり、足がひとりでに前に出るはずです。この動作を連続して早く行うのが「走る」ということです。
腿を高く上げようとか、地面を強く蹴ろうとか、自分の力で速く走ろうとしてはいけません。あくまでも倒れこんでいく力を利用していく意識が重要です。
「カール・ルイスだってアサファ・パウエルだって、そんな変な走り方はしていない。胸を張って腿を高く上げて、力強く大地を蹴って走っているじゃないか」と反論が聞こえてきそうです。しかし、あれは彼らにとって最も速く走れる走り方なのであって、日本人には向いていません。
何故かと言うと、欧米人と日本人では、うまれつき、骨格が違うからです。
【私の感想】
私が知りたかったことが、わかりやすく書いてありました。欧米人には、筋トレで速く走るトレーニングをすることが有効なのだ、と。私は、筋トレが苦手なので、打ってつけの教えです。
先日は、これを思い出してランニングしてみました。ゾウリが引っ掛かり、本当にコケそうになりました。このように走ってみると、いつもよりスピードがでます。それで、辛くなるのは脚ではなくて、心肺機能。心臓がついていかないような感覚でした。
日本人は足が遅い?
日本人に「摺り足」が向いているのは、骨盤の角度に起因します。
欧米やアフリカ人がおおむね骨盤が正面を向いているのに対して、日本人の骨盤はやや上を向いています。そのため、日本人が欧米人と同じように走ると、前へ進む力が斜め上に逃げてしまいがちです。
車で言うと、日本人の体は、サイドブレーキを引いたような状態に例えることができるでしょう。骨盤の角度が、走るスピードを減速するような役割を果たしてしまいます。
骨盤を前へ、そして下へ、傾ける意識を持つことがサイドブレーキの解除に相当するというわけです。
伊東浩司の「お辞儀走法」。これはお辞儀したまま走っているような極端な前傾姿勢で走る方法です。伊東さんの独特な走法は、一見異様でも、実は日本人が速く走るために最もふさわしい方法だったのです。この走法は、今では末續選手らに受け継がれています。
【私の感想】
なぜ、「コケそうになる感じ」がいいのか。その理由がわかりやすく書かれていました。為末さんの書かれていることが理にかなっていて、納得できます。
これをやるには、体幹がしっかりしていること=「腰が入っている」ことが必要です。為末さんが言う、「速く走れる日本人」は、「へっぴり腰」にならず、背中が軽く曲がって(猫背に見える)、あごが上がって見える人。末續選手や為末選手もそういう骨格だそうです。
従来の背筋を伸ばして、あごを引く、という姿勢を良くするという常識をひっくり返すお話です。「コケそうになりながら」走る方法は、下っ腹を中心に体を一本に保つ「腰を入れる」のがポイントのようです。私が苦手なスクワットとかの「脚の筋トレ」をせずに走れる道が開けた感じがしています。
自分で考えるのが最高に面白い
専任コーチがいない、という為末さんのスタイルは、欧米も含めて珍しいものです。
中学高校の部活動から、何かを強制されることがありませんでした。おかげでグランドを何十周走るというような、ありがちな「苦しむための練習」を経験することなく、毎日部活動を楽しみ、成長することができました。
自分の体を一番しっているのは自分。どんなパフォーマンスを理想とし、そこに向かってどんなトレーニングをしていくべきか、わかるのは自分であるはずです。
自分の脳で突き詰めたトレーニングは、上から降りてきたメニューをこなすのとは、効力が雲泥の差になるのです。私は自分で考えるという最高に面白い作業を、もったいなくて人に渡したくないのです。
【私の感想】
私の趣味のランニングも、最近始めた園芸も、自分で考えて、本などで情報を集めて、試行錯誤していくのが楽しいです。月に何キロ走るとか、10キロを何分で走るとか、そんなところにばかりこだわっていては全く楽しくありません。
為末さんの自分で考えて、試行錯誤を楽しむ、というところにも大いに共感しました。
オマケ
私が息子と一緒に読んだ、幼児向けの体の本に「走り方」が載っていたので、比較してみます。
【絵本にのってる内容】
・はしるときにだいじなのは、あしのきんにく
・はやくはしれるようになるこつ
① あごをひく②うでをしっかりふる③たいじゅうをまえに④いっぽをおおきく
・はやくはしれるようになるれんしゅう。ももをたかくあげて、そのばではしってみよう。
【為末さんの走り方】
・速く走るのに大事なのは、下っ腹。
・速く走れるようになるコツは
① 身体を前に傾ける②手足は力を抜く③体重を前に④摺り足
・速く走れるようになる練習は、腹筋を中心に一本の棒のようにすること。
【私の感想】
私が子供の頃は、速く走る方法を教わったことはなかったように記憶しています。天性の能力で優劣が決まって、私は当時、すっかり運動が嫌いになってしまっていました。
今、40代後半になって、持って生まれた才能ではない身体能力に、自信も感じてきています。
コツコツ自分で学んで身につけた健康法から、「動ける身体」が身についてきた実感があるからです。
息子とは、絵本に載っている内容で、走る練習をしてみました。本に書いてある内容を実践してみて、体験して学ぶことを教えたいので。だれかと比べて速いとか、よりそういう自分で考えて、学ぶ姿勢なら、私が子供に見せてあげられると思っています。
私は、為末さんが教える方法を自身で実践して、体験していきます。
ありがとうございました。