なぜ、私たちは、ペンキや塗装(塗料)材料にもこだわるのか! | スズキ建築設計

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スタッフの日頃感じていること

私たち人間は、一般的に人生の約90パーセントの時間を屋内で、生活するといわれていますが、世界中をパニックにさせている「中国・ニューコロナウイルス」の影響で、住居の中で、日常生活をより長い時間過ごさなければならない状況になっています。

 

特に、住まいは、「第3の皮膚」(*1)と言われ、住まいの内部で生活する私たちにとって、健康で、安全で、毒性のない素材や有害なガス、揮発性物質をを発生させない素材、さらには、環境に悪影響の及ぼさない素材や建材で作られていなければなりません。

 

しかし、私たちが、日常生活している住宅は、もちろん、仕事で勤務しているオフィイスや店舗、その他の商業空間、診療所、病院などの施設は、建設時の施工スピード、コストを優先し、石油化学系の建材が大量に使用されています。

 

そのため、室内に使用されている建材からの、揮発性有機化合物(VOC)(*2)の影響で、私たちの健康面では、シックハウス症候群、アレルギー性疾患の増加(アトピー性皮膚炎を含む)などの問題があり、環境面では、製造過程で発生する環境汚染の、空気汚染や水質汚濁などによる公害病(四日市ぜんそく、川崎病、水俣病、イタイイタイ病など)や、地球温暖化への影響、そして、石油は、限りある鉱物資源です。

 

 

私たちの、屋内、および居住空間で、体に身近に触れるたり、生活空間にある建材としては、天井材、内壁材、床材ですね。

 

今、このブログを、事務所や住まいで読んでいただいている方は、現在のいる空間を天井から床までを、見回してください。

 

私たちの日本の事務所や商業建築物等では、一般的に、

天井は、化粧石膏ボード、ロックウール化粧吸音板、塩化ビニルクロス、アクリルまたは、ウレタン樹脂系塗装等。

 

内壁は、塩化ビニルクロス、アクリルまたは、ウレタン樹脂系塗装等。

 

は、複層ビニル床タイル、ナイロンカーペット、硬質塩化ビニルシート、フローリングでは、UV抗菌耐摩耗防滑塗装・特殊加工化粧シート貼り複合フローリングなどが使われています。

 

それでは、ご家族の健康と安全を守る、住宅ではというと、

天井は、塩化ビニルクロス、化粧石膏ボード、ロックウール化粧板

 

内壁は、塩化ビニルクロス、化粧合板(プリントまたは化粧シート張り、または、突板化粧合板、アクリル、またはウレタン塗装、ごく少数派で、各種左官仕上げ。

 

は、表面部分は木目が印刷されたシート貼りの複合フローリングややはり表面に化粧単板(1㎜以下)を貼り付けた複合フルーリングが一般的です。

無垢材のフローリングを施工していることも少しずつ増えてきていますが、輸入材のパフローリングの中には、臭化メチルやTBZ(チアベンダゾール)などのような防カビ剤で処理されているものも多いのです。

また、クッションフロアーと呼ばれる床用のソフトな塩ビ系の塩化ビニールシートを施工する住まいも多いのには驚きです。

 

幅木や廻り縁、サッシ枠、ドア枠や木製建具枠、木製建具なども、シートに木目を印刷されたシート建材が多く使われているのが、一般的になってきていりことに、石油化学建材である、塩化ビニルシートの製造時の問題や、これら製品にに添加されているか素材の危険性に気づかずに使用していることに注意すべきです。

 

*住まいの一例

*マンションのLDKの内装

木質調で、内装されていますが、全てが、塩化ビニル内装材です。

 

内装材の、塩化ビニル建材については、以前、塩化ビニル建材について、アメブロで、書いていますので、今回は、塗料・塗装について、問題提起をします。

 

塩化ビニル建材についての過去のブログ

https://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/entry-11993639453.html

 

https://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/entry-11990569045.html

 

https://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/entry-12166881805.html

 

私たちの住まいには、塗装が使用されています。

そして、私たちは、様々な色彩に囲まれて生活しています。

 

暗闇の中ならいざ知らず、太陽の下では、山々に広がる緑や空の青さを見れば分かるように、地球は色彩にあふれ、その色彩が私たちの生活にきわめて大きな影響を与えると共に、私たちの精神面や健康面にも大きく影響しているのです。

 

色彩は、イメージや雰囲気、感情を表現するものであり、人々にそれらを与えます。

赤、オレンジ、黄等の暖色は、積極的で、躍動感があり、若々しく見えますが、緑、青、茶、グレー、土色等のような寒色は、受動的で地味に見えます。

 そのため、私たちは、住まいの内装にも様々な色を使用したり、あるいは、汚れないための防止、保護の面から、室内の内装部分に塗装を施します。

 

しかし、デザインや色彩計画、あるいは素材の汚れなどからの保護、又は、耐水・耐候・耐久性の向上などの目的で使用される、「ペンキ」「塗料」から私たちの環境や人間の体に影響を与えていることが少なくな いのです。

 

これら塗料に使用される原料、材料、添加剤の防腐剤、防カビ剤、有機溶剤(トルエン、シンナー等)や重金属等の様々な物質が揮発し、室内の空気を汚染し、私たち人間への生理と肉体に影響を与えつつあります。

 

ビニルクロスや合板等から発生する発癌物質である「ホルムアルデヒド」同様、ペンキや塗料等が室内の空気汚染及び室内環境病の一因となっている疑いがあります。

又、幼稚園では、ブランコなどの塗料に含まれる鉛によって、子供が中毒を起こした例がいくつか報告れています。

剥がれた塗料の破片を吸い込んだり、手に付いたものを食べ物と一緒に口に入れたりして中毒になってしまうのです。

 

 又、亜鉛は、顔料に使用され、亜鉛華と呼ばれる白色顔料がよく知られています。

このように、私たちの身近にある多くの危険に、気付かずに生活しているということの怖さを感じずにはいられません。

 

*室内空気汚染物質の指針値

 

一般的に、塗料には、有機溶剤(ソルベント)(*3)が含まれています。

又、水性塗料の工程にも有機溶剤(ソルベルト)が必要です。

 

これらの有機溶剤の役割は、合成レジン、天然レジン、油脂、オイル成分等を溶解する役割を持ってい ます。

 

しかし、この有機溶剤(ソルベルト)は、私達人間の中枢神経系と造血組織に対して毒性効果を、与え、特に、中枢神経に悪影響を与えることが分か ってきています。

 

有機溶剤(ソルベルト)にも、様々なものがありますが、いずれも人間に対して悪影響とリスクが報告されています。

 

芳香族炭化水素類(*4)では、健康破壊脅威です。

 

 しかし、自然原料による有機溶剤の中にも問題のあるものがあるのです。

「テレビン油」は芳香族炭化水素と同様な危険性を持つとされ、オレンジピールオイルですら使用によ ってはアレルギー反応を起こす可能性があります。

又、『水性塗料なら安全』と、誤った考えがあり、設計者や、ハウスメーカー、建築会社、塗装メーカーや、塗装業者でさえ『水性なら安全、何故なら水性塗料は、水を溶剤の変わりに使い、水は安全である。』として、一般の建築主や消費者に説明している次第です。

 

水性塗装自体には、危険な有機溶剤、グリコール・グリコールエチレン・エステルアミン等の危険な成分が塗膜形成促進や適応用途特性改善のために含まれているのです。

 

水性壁塗料では、2%程度、建具用水性塗料では、7~8%、時には、10 %以上もの溶剤を含有しています。

これらの溶剤は、私たち人間の健康に重大な悪影響を与えます。特に、ブチルグリコール類は重大です。

アメリカの調査機関NIOSH(*5)は人間に与える影響は、危険なものであると報告しています。

又、アメリカの科学者達は、スキンコンタクトでは、非常 に危険であると言っており、何故なら、グリコールの皮膚浸透性は非常に容易で、わずか数分間の皮膚接触の方が、数時間に及ぶ労働時間内の吸入による悪影響を上回ると報告しています。

医学的調査では、赤血球、白血球、血漿板等の血液は、石油化学系化学成分で、悪影響を受けると言われています。

 

★スウェーデン ストックホルムのカロリンスカ研究所(電磁波の研究でも有名)の表

*ペンキ・塗料の血液組成に対する悪影響度

 

このように、水性塗料は、溶剤性アルキドレジンペイントよりも含有する芳香族炭化水素により一層強く血液組成に悪影響を与えることを立証しています。

 

特に、血漿板に与える悪影響が深刻に懸念されています。 

 (※血漿板は、神経細胞の素)

又、従来からのペンキ、塗料、そしてニスは、アレルギー反応の原因である様々な合成物質や化学薬品が含まれています。

 

一般的に知られているアレルギー物質は、   

★金属を含む顔料・・・・ニッケル・コバルト・クロム塩(ニス・釉薬に使用)

★ホルムアルデヒド・・接着剤・ニスに使用   

★エポキシ樹脂・・・・・・ニス・塗料剤として木材仕上剤に使用  

★アクリル樹脂・・・・・・水で薄くした塗料に使用   

★シアン化合物・・・・・・合成気泡は断熱材・充填材、二つの成分から造られるニス

★防腐剤・殺菌剤・防虫剤等・・・・薄めたニスに使用

 

多くの人々のアレルギー反応は、環境の影響で身体に反応していると言えるのでしょう。

 

NPO「木の住まいを創る会」を主宰し、株式会社スズキ建築設計事務所では、自然・天然樹脂有機塗料を基本的に使用 しています。

 

何故なら、合成塗料には、必ずと言っていいほど、防カビ剤、プラスチックその他の化学誘導体が含まれているからです。 

 

これらは、私たち人間にとっても悪影響を及ぼし、危険である上に、環境にとっても同様であることに変わりはありません。

 

私たちが使用する自然・天然塗料は、使用する国産材の内装材はもちろん、住宅にも呼吸をさせてくれます。

特に、私たちが使用しているドイツ・アウロ社の自然塗料や抗アレルギー性に富むドイツ・リボス社のメルドスオイルは、植物油の亜麻仁油をベースと した人間に安全なものです。

 

この亜麻仁油は、中世期以後、オイル採取用植物として亜麻仁油を採取する亜麻が重視されてきました。

その重要さは、「亜麻仁油の生む地は、最後には「金」を生む土地になります。」と言うほどに、ヨーロッパの民話にも見られるほどです。

 

何気なく使われている塗料ではありますが、人体や環境に与えるその影響の大きさは、計り知れないものです。 

 

確かに、防腐・防虫・防カビ・といった守りの姿勢も大切ですが、その選択を誤ると取り返しのつかないことになりかねません。

 

住まいのカラーコーディネイトや、防汚の目的の役目も大事ですが、私たち人間や環境に対しての配慮を考えないと、いくら国産材や自然素材を使用して居住空間を健康な空間にしたつもりでも、取り返しのつかないことになりかねません。


だから、私たちの家づくりでは、防虫、防腐、防カビ処理のされていない国産材や自然素材の建材を使い、塗料や、接着剤については、ドイツ、アウロ社の環境と人間に安全な資材を輸入し、基本的に使用しているのです。

 

最後に、自然塗料を使用するメリット・デメリットを、

メリットとして、(*6)
①木など素地の呼吸性能を妨げない。 
②静電気を帯びない。
③塗面積が合成塗料に比し広い。
④伸縮性が良い(素地の伸縮と連動する)
⑤有毒・有害なガスの発生がなく健康に悪影響を与えない。
⑥廃棄する場合、環境に負荷を与えない。
 ドイツでは、1996年廃棄物経済循環法の施行後、合成塗料を塗装したサッシ、建材は廃棄する場合メーカーが引き取るか、特別廃棄物として処理されることになりました。
⑦塗り直しを含め施工が簡単。


デメリットとして、

①乾燥(硬化)時間が合成塗料に比して長い。
②価格が割高

 

*石油化学系のアクリル塗料と、アウロ水性塗料との比較表(*7)

この表から、環境と健康に対して、自然塗料の良さが理解できるのかと思います。

 

関連ブログ
私たちは、なぜ、ビニル壁紙を使わないのか!・その1
http://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/entry-11993639453.html

も、良かったら読んでください。

 

*1:第3の皮膚

住まいを、ドイツの有名な医師で、自然研究家でもあった、パラセルサス  (1493~1541)は、人間には第3の皮膚があると提唱し、まず、害1の皮膚を、人間本来の皮膚と、次に、衣類、洋服を第2の皮膚、そして第3の皮膚は、人間が住む「住まい」と言っています。

 

*2:揮発性有機化合物(VOC)

Volaile Organic Compoundsの略。揮発性有機化合物のこと。塗料には、シンナーや添加剤などとして含まれる。
水性系の塗料でも凍結防止剤や樹脂の造膜助剤として一般に使用される。TVOCはTotaI VoIatile Organic Compoundsの略。総揮発性有機化合物のこと。

 

*3:有機溶剤:

埼玉県保健医療部薬務課薬物乱用防止啓発サイトより。

有機溶剤とは、塗料用のラッカー・シンナーや接着剤のボンドなどで、日常生活で誰もが手に入れやすいため、青少年などの乱用が問題になっている。

最近では、シンナーよりも純度の高いトルエンの乱用が急増している。

これらの有機溶剤には麻酔性があり、気化したものを吸い込むと中枢神経に強く作用して急激な酩酊状態(酔っ払った状態)となる。不安や緊張感が弱まり、興奮状態の中で、幻覚、知覚異常をおこす。

長期に吸っていると筋肉の萎縮による歩行困難、視力の低下、脳の萎縮による痴呆の症状などが現れる。

有機溶剤を乱用すると、自分が偉大な人間になったような気持ちになる。しかし効果が失われると極度の疲労感と孤独感に見舞われるようになるため、そこから逃げるために、さらに乱用を繰り返すようになる。すると徐々に幻覚や幻視は被害妄想へと発展していく。
それによって、突然周囲の人に乱暴をはたらくこともある。生活は自堕落になり、自分勝手な考え方しかできなくなる。

こうした神経へのダメージは、決してもとに戻ることのない致命的な障害となる。

シンナー、トルエン、ベンゼン、キシレン、エナメル、ラッカー等

 

*4:芳香族炭化水素類:

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より。

芳香族炭化水素(ほうこうぞくたんかすいそ、aromatic hydrocarbons)あるいはアレーン(arene) は芳香族性を示す単環あるいは複数の環(縮合環)から構成される炭化水素である。

略号として AH が使用されることがある。芳香族炭化水素が置換基となった場合の呼称はアリール基 (aryl group) であり、Ar− と略される。具体的にはフェニル基、ナフチル基などがアリール基の代表例である。
芳香族化合物 (aromatic compounds) と同義に使用されることがあるが、広義の芳香族化合物には複素芳香族化合物も含まれる。
芳香族炭化水素は、一重結合と二重結合が交互に並び、電子が非局在化した6つの炭素原子から成る単環あるいは複数の平面環をユニットとして構成されている。最も構造が単純な芳香族炭化水素はベンゼンであり、ベンゼン環として知られている6つの炭素からなる環状化合物である。

その構造が不明であった遠い昔、強烈な臭気を持つものが多かったので、芳香族炭化水素はそのような名前がつけられた。

 

*5:NIOSH:

National Institute of Occupational Safety and Health
労働災害の予防を目的とした研究・勧告を行う米国連邦政府の研究機関

 

*6、*7:

自然塗料のメリット、デメリットについては、安全な室内環境(エコリビング代表・加藤道生)から、引用しています。

*石油化学系のアクリル塗料と、アウロ水性塗料との比較表は、安全な室内環境(エコリビング代表・加藤道生)から、引用しています。

 

株式会社スズキ建築設計事務所
取締役相談役 鈴木 明

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