台風の影響で、一時は開催も危ぶまれた長崎での試合は、無事に開催されています。
選手たちは、木曜日のうちに新幹線で福岡へ入り、そこで一泊。
金曜日に長崎へ移動して、台風により移動困難を避けるべく、最大限の対策を取っていました。
サポーターも無事に現地入り。
飛行機の時間を変更した方も多くいたようですが、何とかスタジアムには到着し、必死に声を出してチャントを響かせて、アディショナルでの劇的同点ゴールを後押ししたと思います。
残留争いにあって、決して楽観できる状況にはなく、危機的であるのは誰の目にも明らか。
そんな中にあって、敗戦濃厚という中から奪い獲った勝点1は、きっと最後の最後で大きな意味を持つはず。
日曜日の試合では、残留争いにあるロアッソ熊本が敗戦したことで栃木SCは救われた形になりました。
他チームの敗戦を期待する順位、時期、状態にありますが、J2残留のためには他力本願は当然で、何ふり構ってなどいられないのです。
試合前、スタメンを確認して驚いたことがありました。
それは、選手起用ではなく、主審の割当て。
前節のヴァンフォーレ甲府戦で笛を吹いた石丸秀平主審が、この長崎戦でも笛を吹くと知ったとき、2試合続けて同じ主審が担当するということに驚かされたのです。
これは通常では考えられない割当てであることから、台風による移動手段も相まって、編成に苦労があったことが伺えます。
この石丸主審ですが、個人的な意見としては、笛に偏りを感じることはありません。
今シーズンからJ2を担当し、今回が栃木SC戦としては3試合目の担当になりますが、どの試合もストレスを感じることはありませんでした。
ただ、相性としては決して良くはありません。
3試合で2分1敗と、石丸主審のもと、まだ勝点3は得られていません。
まさか、次の藤枝MYFC戦も吹くことはないでしょうが、次の担当のときには、勝点3を奪ってくれると期待しています。
【結果】
V・ファーレン長崎 1-1 栃木SC
前半 1-0
後半 0-1
【会場】
トランスコスモススタジアム長崎
【得点】
前34 中村慶太(長崎)
後48 南野遥海(栃木)
【栃木SC警告】
後24 大谷尚輝(累積2枚目)
【栃木SCスタメン】
GK 丹野研太
DF 平松 航
DF 坂 圭祐 → 大谷尚輝(後18)
DF ラファエル
MF 大森渚生 → 森 俊貴(後26)
MF 朴 理吾
MF 青島太一
MF 福島隼斗 → 神戸康輔(後43)
FW 奥田晃也 → 山本桜大(後18)
FW 大島康樹 → 南野遥海(後18)
FW 宮崎 鴻
【栃木SCリザーブ】
GK 川田修平
DF 大谷尚輝 ← 坂 圭祐(後18)
MF 森 俊貴 ← 大森渚生(後26)
MF 神戸康輔 ← 福島隼斗(後43)
FW イスマイラ
FW 南野遥海 ← 大島康樹(後18)
FW 山本桜大 ← 奥田晃也(後18)
【審判団】
主審 : 石丸秀平(栃木戦、今シーズン3試合目)
副審 : 竹田明弘
副審 : 池田一洋
【入場者数】
11,061人
【天候/気温/湿度】
晴/27.4℃/69%
【第29節終了時順位】
18位
栃木のスタメンは、前節から2選手を変更。
神戸選手がリザーブへ回り、玄選手が初スタメンを掴み獲っています。
また、森選手がリザーブへ回り、大森選手がスタメン起用。
これにより、中盤のボランチは、玄選手と青島選手がコンビを組むことになりましたが、なかなか良いコンビネーションで、予想以上に機能していたと感じました。
気掛かりだったことは、前半と後半のチームとしての出来栄え。
特に、前半の攻撃は積極性が小さく見えて、どうゴールを奪うのかが見えて来ないほどに、チームとして弱さがあったと思います。
前半は長崎が主導権を握り、後半は栃木が主導権を奪い返した。そんな90分だったと思います。
前半10分くらいのこと。
長崎の流れるような攻撃に守備が慌てている中で、エリア中央から強烈なシュートを打たれると、これがクロスバーに当たって難を逃れましたが、この一連の攻撃は本当に脅威でしかありませんでした。
栃木の攻撃は、流れるようなパスは見られず、それでも、両サイドの深い位置まではボールを持っていけるものの、どうしても、クロスが入りませんし、シュートに行けない時間がずっと続く厳しいものがありました。
エリア内へ向けての鋭いパスはその気配すらもなく、入れられた場合でも精度にやや欠ける緩やかなハイボールが多かったことから、長崎の守備にクリアされていて、決定機は見られずに、やっと打てたシュートは、前半39分に放った玄選手のミドルでした。
前半の攻撃は、かなり推進力が小さかったと思います。
ボールを奪ってからの攻撃に速さはなく、ボールをゆっくり回しながら、サイドへ出してそこから何とかゴール前に上げて、宮崎選手の落としから得点を狙っていたように見えましたが、長崎の守備は組織立っていて崩すには相当な難しさがありました。
何とか無失点で前半を切り抜けて、選手が入替った後半勝負。
そんな期待をしていたときに、無情にも先制点を奪われてしまいます。
この長崎の先制点は、攻撃の推進力と、栃木の戻りの遅さが重なってしまいました。
カウンターからの守備は、ボールを運ぶギリェスメ選手を注視していましたが、その反対側を全力で上がる中村選手をカバーできていませんでした。
その中村選手を守備が追えていなかったことは、そこに緩さがあったからだと思います。
あっという間にゴール前に走り込む中村選手。
完全なるフリーでしたし、そこにボールが出された瞬間、失点を覚悟するには十分過ぎるほどの完璧なクロスが入っています。
豪快に揺らされてしまったゴールネット。
今シーズン初スタメンの中村選手が、見事に結果を残した素晴らしいゴールでしたが、栃木としては、凄まじく痛い先制点となってしまいます。
失点後、一箇所に集まって、電光掲示板に映された先制点の場面を見返して分析する選手たち。
どうして失点に至ったのか。どうすれば防げたのか。短い時間でしたが、選手たちの身振りで、話し合いを持ったいたことは分かります。
この失点から先、長崎の6番、7番、両外国人選手への寄せが早さを増して、2選手を意識した守備に特化したような感じも受けています。
何とか1失点で切り抜けられた。
でも、攻撃での期待値が小さい。
そんな印象を持った前半でした。
負けている試合にあって、先に動いたのはリードしている長崎でした。
後半13分に先制点を奪った中村選手を下げていますが、正直なところ、個人的には追加点を奪いに行く交代というよりも、守備気味な交代に感じられました。
ここから、栃木は南野選手、山本選手という、個人技も高く、前への意識が高い選手が入ることになるのですが、その対応策を先に講じたようにすらも感じたのです。
そのことから、何となくですが、栃木にもチャンスがあるのではと思ったのですが、その南野選手、山本選手がピッチに入ると、徐々に試合展開の主導権は栃木に傾き始め、厚みのある攻撃が展開される時間も増えて行きます。
前半と比べれば、後半のその攻撃が格段に良くなりましたし、それは、別チームかと思わせるほどのものでした。
前半、たった1本だったシュートは後半だけで10本。
どれだけ攻撃力が上がったかが分かります。
驚いたことは、最終的に長崎よりもシュート数が上回ってしたこと。そして、支配率すらも上回っていたということです。
それだけ、後半にギアが上がり、チームとして良い状態にあったことになりますが、本音を言うのであれば、だったら、どうしてその後半のメンバーで頭から行かないかということです。
行って欲しいという期待がある一方で、そうなると、後半の選手交代でギアが上がらず守備に回る展開になることから、なかなか厳しいのかなという不安もあることはあります。
ただ、それでも、後半のメンバーでスタメンを組むのも残留のためには必要なのではないでしょうか。
良い攻撃を繰り返しても、なかなかゴールを奪えないまま時間が無常に経過して行きました。
攻撃には厚みがありました。
それでも、どうしてもシュートが決まってくれません。
敗戦か……残留は厳しくなるぞ……何とか決めてくれ。
時間は既にアディショナルタイム。
敗色濃厚な時間帯であって、トランスコスモススタジアム長崎の観客のほとんどは、長崎の勝利を疑っていなかったと思います。
その中、一部のごく少数の歓声を除いて、悲鳴とため息がスタジアムを包みました。
後半48分。
とうとう、やっと。
選手一人一人の執念が繋がって、最後は南野選手が押し込んで、栃木SCがゴールネットを揺らしたのです。
下を向く長崎の選手。
息を吹き返し、走って位置に戻る栃木の選手。
それを見たとき、逆転すらも期待できるほどに、試合は完全に栃木に傾いていました。
ゴール裏のチャントが更に大きくなり、残留に向けて、いや、そんなことでなく、この試合、今、この長崎に勝つんだという雰囲気が、僅か数十名のエリアから強烈に沸いていたと思います。
混戦の中から、最後はDFの大谷選手がシュートを放っていますが、長崎の選手たちは反応ができていませんでした。
それだけ、守備に追われていて防戦に徹していた証拠なのですが、その大谷選手のシュートは無情にも枠を逸れていたのです。
実は、ゴール裏からでは、各看板が目隠しとなっていて、ボールの行方が目視できない状況でした。
決まったと思った大谷選手のシュート。
しかし、ネットが揺れずに、看板の間からボールがゴールラインを超えて見えたときには、そうか決まらなかったのかと残念に感じたものですが、DAZNで見返してみると、そこにDFの大谷選手いたこと、シュートを打てていること、紙一重だったことと、栃木としては、素晴らしい攻撃を展開していたことが分かりました。
実は、同点ゴールとなった南野選手のシュートも、ネットが揺れたことすらもゴール裏からでは把握できずに、選手が駆け出したことから、押し込んだことが分かった感じでした。
悲観すべき勝点1ではありません。
当然、状況は依然と厳しいことは分かっています。それでも、この土壇場で奪った勝点1は意味がありますよ。
残りは9試合ですが、この劇的同点の試合の意味をより高くするためにも、次節の藤枝戦では絶対に勝って、残留争いを猛追しないといけません。
そのことからも、次節に繋がる勝点1でした。
試合後、ゴール裏に来た選手たちをチャントで向けたゴール裏。
そのチャントに涙を流して悔しさを隠さなかった青島選手。その姿を見たら、こっちも涙が溢れてしまいました。
押している中で、サポーターに勝ちを見せられなかったことが悔しかったのでしょうが、それでも、必死に戦う姿勢に、そこで、同点に追いつたことに感謝すらもしています。
その悔し涙は、最後は嬉し涙に変えましょうよ。
絶対にJ2に残留しないと。
自己満足かもしれませんが、それでも、現地でしか感じることのできない空気があると思うのです。
この長崎戦、終了間際の選手とゴール裏は、一体感があったと思いますし、試合終了後の気持ちの共有もしっかりとできていたのかなと、そう思った試合でした。
試合後、長崎のゴール裏からブーイングも聴こえて来たかな。
それだけ、勝利を欲していた試合であって、自動昇格が難しくなった試合結果でした。
それでも、試合後は温かく言葉を掛けてくれる長崎のサポさんは素晴らしい方ばかりでした。
本当に素敵な空気があった長崎。絶対に栃木は残留して、同じカテゴリだったのなら、来シーズンも必ず遠征したい地です。
遠征された皆さま、お疲れ様でした。
試合後の半分祝勝会、半分反省会は、ちょっとした驚きの出会いもあって楽しく呑むことができました。
それぞれが、それぞれの会場で、長崎の夜を楽しんだと思います。
また、来シーズンも。
この長崎をもっと楽しむために。
残り9試合も、全力で応援して行きましょう。
お疲れ様でした。
押してください。