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後輩がなかなか仕事を覚えない、言われたことを守らない、仕事が必要とされる水準まで - Yahoo!ニュース(東洋経済オンライン)
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トヨタが「できる人」を作る秘密の仕組み

後輩がなかなか仕事を覚えない、言われたことを守らない、仕事が必要とされる水準まで達しない――。そんな悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。
その点、トヨタには「標準」という仕組みがあります。過去の失敗などが豊富に織り込まれた作業手順のことで、それをきちんと守れば、どんな人も一定水準以上の仕事ができるようになると言います。
「標準」は、簡単に言えばどんどん更新できるマニュアルのようなもの。どんな職場でも作ることはできます。『トヨタの失敗学』よりその効用と、正しい使い方についてご紹介します。 (文中、敬称略)■ トヨタが大事にする「標準」の威力

トヨタの職場でとても大事にされているものがあります。それが「標準」です。

 標準とは、現時点で最善とされる作業のやり方や条件のこと。過去の失敗からの教訓が豊富に織り込まれています。それらを踏まえたうえで「このやり方で作れば、必ずうまく作れる」という方法なので、標準を守れば誰が作業しても同じ成果が得られます。だからこそトヨタの各職場で広く用いられているのです。

 「標準」は日本人同士はもちろん、外国人に指導する際にも大きな力を発揮します。インドネシアの工場で現場従業員を指導した経験がある富安輝美はこう語ります。

 「日本人同士ならあうんの呼吸でわかることも、海外ではイチから説明が必要です。しかし標準さえ丁寧に教えてあげてそれが共通語になれば、言葉が通じなくても技術が未熟でも失敗を防ぐことができます。

 私が指導したある現地従業員は、標準に沿って仕事を着実に進めたことで、技能五輪の世界大会にまで出場して見事、銀賞を獲得しました。やすりさえ使ったことがない人がそんな賞まで取ってしまうのですから、やはり標準の効果は素晴らしいものがあります」

 具体的には、作業要領書や作業指導書と言われるものが「標準書」に該当します。この標準書は、単純に作業の手順を記載してあるだけでなく、間違いやすい点や判断に迷いやすい点が「要所」として具体的に記載されている点がポイントです。

「標準」とは?
 たとえば、ある部品のボルトを締めるという作業において、「しっかりと締める」とだけ記載してあっても、「しっかり」には個人差があります。本人はしっかり締めたつもりでも締め付けが緩くて、不良が発生してしまうこともあるかもしれません。

■ 「誰がやっても同じものができる」が標準

 この場合、たとえば「カチッと音がするまでボルトを締める」というように記載してあれば、誰が作業しても正しい強さでボルトを締めることができます。このように、「誰がやっても同じものができる」のが標準なのです。

 こう話すと、それはマニュアルでは? と言う方がおられますが、標準とマニュアルは違います。一度設定したら現場での変更を認められない「マニュアル」と異なり、もっとよいやり方が見つかったらどんどん改善していくのが「標準」です。

 製造現場でなくてもこの「標準」を作ることはできます。たとえば営業職であれば、配属直後から1人で営業をさせた場合、一人前になるまでに相当な時間がかかります。

 また、ベテランになっても一匹狼的な仕事スタイルであれば、他のメンバーの知見が共有されず、成長にも限界が生まれてきます。一方で、一人前になるための教育プログラムがあり、さらには顧客のタイプ別や商品別に有効なアプローチ方法が確立されていたとしたら、組織としては早期に成果を上げることができます。これも、過去の知見を豊富に織り込んだ一種の標準と言えます。これらは、チームとして成果を最大化することに役立ちます。

 ホワイトカラーの場合には、個々人で仕事の種類が異なるため、個々人での標準づくりが中心になるかもしれません。その場合にも、ある仕事をするときに毎回必要な確認事項を思い出すのではなく、仕事の種類ごとに必要な確認事項を一覧化しておけば、その都度考える時間や確認事項のヌケモレがなくなります。

過去の失敗は「標準」に落とし込むことで、時間がたっても他の人に活用してもらえる。

標準遵守の大切さ
 このように、さまざまな教訓が織り込まれた「標準」。それ自体を作るのはそう難しくはありませんが、大事なのは「守っていく」ということです。

■ 「標準」破りで大事件に

 標準の遵守について、苦い思い出とともに大切さを実感したというトレーナーの高木新治のエピソードをご紹介しましょう。

 トヨタというと生産性重視のイメージがあるかもしれませんが、実際には「一に安全、二に安全」と言われる位に安全が重視されています。生産現場では、ちょっとした不注意やミスが、ケガをする大事故につながるおそれがあるからです。

 高木が課長時代のこと。高木の部下が階段の手すりを持たずに一段とばしで歩いていたのを、上司である部長が偶然目撃しました。現場では安全のために、手すりをもって一段ずつ階段を上るのがルールでした。そのため、部長は高木を呼び出して厳しく叱責し、こう言いました。

 「キミの部下はなってない。キミのことも信用できない」

 若い頃、トップダウンの上司のもとでメンバーが萎縮していた姿を目にしていた高木は、部下の自主性を重んじたいという気持ちを持っていました。ルールで縛ることは部下の自主性を抑圧するという懸念を持っていたので、高木はルール厳守を求める部長の姿勢に納得できませんでした。翌朝、120人の部下を全員招集し、管理監督者だけを連れて部長の元へ行き、辞表を提出しました。高木はその時のことを思い出して、こう振り返ります。

 「課長職にあったので若気の至りというほど若くはなかったのですが、私は感情的になっていたのだと思います。部長に叱責された時、私のポリシーもすべて否定された気になって、思わず感情的な行動をとってしまったのだとあとになって反省しました。勿論、辞表はその場で破棄されました……」

当事者自身が正確に理解することも大事だ
 それから2週間後、事件が起こりました。高木の部下が安全ルールを守らなかったことで、指に大ケガをしてしまったのです。部下は「これくらいは大丈夫」と思い、安全措置よりも作業を優先させてしまったのです。高木は自省の念を込めて、こういいます。

 「遅きに失するとはこのことです。事故が起きてようやく私は、あの時部長が激怒した理由を理解しました。階段を一段飛ばしに上る部下をみて、安全ルールを守る意識が欠けていることを感づいていたのです。

 結局事故に関しては、部長は私を責めることはありませんでした。しかし、二度と同じことが起きないよう、上司が毎日職場巡回をして、作業チェックをするという対策をとることにしました。部下の安全を守れず、職場全体にも迷惑をかけてしまい、私は改めてルールを守ること・守らせることの重要性を認識しました」

標準は作っただけでは意味がない。そこに込められた、数々の過去の失敗を思い、徹底して守り・守らせる努力をすること。
■ 他人に教えることは深い理解が必要

 標準を作り守らせることに加えて、当事者自身が標準を正確に理解しておくことも必要です。1つ目の盲点、「わかっているはず」に関するポイントをご紹介します。トレーナーの大嶋弘は、このように言います。

 「私たちトレーナーが顧客先で指導をする際には座学から入りますが、口頭で伝えるだけではメンバーの理解度は3割程度と考えています。たとえば、トヨタ生産方式などの基本的なことを教える時。これはトヨタの従業員でもさまざまな体験を通じて数年をかけて習得していくもので、言葉で説明しただけでトヨタ生産方式になじみのないメンバーがわかるはずがないのです。座学で説明をして、現場で実践してもらい、基本的な説明に加えてトレーナー自身の体験談なども織り交ぜて再度説明することは基本。さらに可能であれば、教えたメンバーが別の誰かに教えている姿まで観察できれば、完璧にわかったと安心します」

 誰かに教えるためには、自分で理解して完璧にできる以上に深い理解が必要です。このように、「座学+実践」に加えて「教え方を理解・アドバイス」というサイクルまで達することができれば、「わかっているはず」による失敗を防ぐことができます。

2つ目の盲点
 2つ目の盲点は「できるはず」です。再び、大嶋のエピソードを紹介します。

 「私がトヨタ時代にある設備の修理手順を要領書にまとめたとき、ベルト切り替えの方法を『設備にあわせてベルトを切って結ぶ』と書きました。後日、後輩がその要領書に従って作業をしたのですが、なかなか終わらない。心配になって見に行くと、私が5分でできる作業を後輩は2時間かかってもできていませんでした。結局、ラインを止めざるをえませんでした」

 理由は、簡単でした。ベルト切り替えの場所はスペースが狭く、手が十分に入りません。にもかかわらず、後輩は最初に設備ピッタリにあわせてベルトを切ってから結ぼうとしていたので、うまく結べずにいたのです。大嶋が行った作業は、ベルトを最初に設備に結んでから、余った部分をカットすることでした。こうすればベルトの長さに余裕があるので、狭い場所でも簡単に結べるのです。

 「上司から『要領書の書き方が悪い』と叱られたのは私でした。私にとっては『ベルトを結んでからカットする』のが当然で、そこまで書く必要はないと思い込んでいたのです」

■ 部下を「信頼」しても「信用」してはいけない

 これは「できるはず」による典型的な失敗です。しかし、あまりに簡単なことまで標準に落とし込むことは、部下を見下しているようで抵抗を覚える方もいるかもしれません。それについてトレーナーの原田敏男は、このように言います。

 「トヨタ時代の上司に、部下を『信頼』しても『信用』してはいけないと言われました。部下を人間として信頼し、『彼に任せておけば結果を出してくれる』というスタンスで接することは正しい。

 しかし、どんなに信頼できる優秀な部下でも、すべてを完璧にこなせるわけではない。時には、ミスをすることもある。その意味で、信用はせずに、誰もがミスをすることを前提に仕事を頼むという心構えが必要です」

「信頼」しても「信用」は禁物。「わかっているはず」「できるはず」と思いこまず、完璧に理解できた姿を見届けるまで安心してはいけない。

10/8(土)に筆者のセミナーが行われます。トヨタメソッド、仕事の効率化に興味のある方は、ご参加ください。

岡内 彩


▲8/19付 Yahoo!ニュースより


このニュースにある「作業標準」は、

トヨタ自動車に限らず関連会社・協力会社から末端の下請けまで含めて、

或いはトヨタ自動車に関係のない工場でも取り入れているところもあるくらいの、

工場運営にとっては非常に重要なものです。


私自身も前職場での派遣会社所属時代に、

請負契約として仕事を始めるにあたって、

当時取り扱おうとしていた製品のすべてについて、

この「作業標準書」を作成したことがあります。


「どんなレベルの能力の人が読んでも理解できるように」

を考えながら作りましたが、

実情は、「誰も読まない。」のです。

もっと言うと、「読んでも理解できない。」といった方が正しいかもしれませんでした。

写真付きで分かりやすく作業の手順を記したのですが、

そういった類の書面を「読む」という習慣がついていない人がほとんどでした。


そう、ちょうど請負契約で仕事を始めて半年経った頃、

東北の震災があり、その後数ヶ月仕事が激減したことがありました。

定時前にその日の生産予定が終わってしまうので、

その空いた時間使ってその「作業標準書」を読ませたり、

過去の災害事例のファイルを読ませたりしたことがありましたが、

一部の人を除いて理解できていないのです。

理解しようとする意欲がないのか、

その能力がないのか、

それともはなから読む気がないのか…?

各作業の「要所」を記載してあるにもかかわらず、

結果、実作業ではそれができていなく、

余計な仕事を増やされることとなることがよくありました。

直接指導しても頭に入れてくれないのです。

しかも同じミスを何度も繰り返す始末。

「作業標準」は皆がそれに基づいて同じ作業ができ、

その結果いつも同じものが作り上げられるものでもあますが、

現場の実情はそれ以前の問題なのです。


読めない・読もうとしない・理解できない。

その結果、普通では考えられないおかしなことをする人が出てくる始末。

結局、管理監督者がその人に張り付いて見張りをしていなければならなくなってしまいます。

管理監督者もその場を動けなくなってしまいますから、

他の仕事に手が回らない。

そんなことの繰り返しでした。

せめて「読むことができる・理解することができる」能力くらいは持っていてほしいものです。

その為の訓練の期間が、

我が国の場合、義務教育の期間なのですから。

社会に出てからそれができないのなら、

自分自ら勉強するということもできるわけですし。

そんな人たちが多いのが、

いわゆる「派遣従業員・非正規雇用者」なのです。

現場の管理監督者もそうですが、

できる作業員たちも迷惑がかかります。

特にできる人たちは挙句の果て、

「そんな人たちと仕事はできない」という思いで、

自ら離れて行ってしまう事態になってしまいます。

そんな出来事も何度も見てきました。



派遣元も次々と人を連れてきますが、

「何でもかんでも」ということをしないでほしいものです。

配属前にきっちりと理解力をつける教育とその意識付けをした上で、

連れてきてもらわないと、

採用経費をどんどん損失していくだけです。

そう、採用する際の人を見る目も弱かった。

在籍人数を増やすことばかりに力を入れているから、

不採用にすることがほとんどないのも事実でしたね。

採用担当の面接力を上げることも重要なことの一つです。


折角苦労して作った「作業標準書」も、

読むことができない・理解できない人達ばかりが来られても、

宝の持ち腐れになるだけなのです。


全国各地に採用オフィスがあって、

その採用力だけは力強いものがある派遣会社でも、

採用判断力と現場配属までの基礎教育まで力を入れてもらわないと、

困るのは現場なのです。

さらに困るのは人の入れ替えの繰り返しに伴う、

無駄な採用費の増加による不採算により、

悪循環が出来上がってしまうことです。

挙句の果て、それを現場の責任にして…。



現場を知っている・経験している人が採用担当となれる環境を作り、

現場作業員のその後の道を作ってあげることにより、

作業員のモチベーションも上がり、

うまく運営することができるのではないでしょうか?

または、現採用担当が、

1,2年ほど現場作業を経験するという手段もあります。



いずれにしても、

応募してくる人たちとのファーストコンタクトをする採用担当が、

非常に重要な責を負っており、

その現場配属までの教育意識付けがどれだけできるかによって、

「作業標準書」を活かすことができるかどうかがかかっている、

と私は感じております。



本当に、一般常識の上で考えられないことをする人がいますから…。