事前の下馬評と裏腹に善戦している(?)岸田前政調会長
自民党総裁選も、し烈な政策論争と、一部で(?)始まった対立候補のあら捜し情報の交錯が、激しさを増しています。
どこまで信頼できるのか不明ですが、毎日新聞が自民党に所属する国会議員の支持動向を報じています。
それによれば、19日時点で、次のような状況だといいます。
岸田文雄前政調会長(64)=岸田派 全体の3割強
河野太郎行政改革担当相(58)=麻生派 〃 2割台半ば
高市早苗前総務相(60)=無派閥 〃 2割ほど
野田聖子幹事長代行(61)=無派閥 〃 1割弱
こうなると残りの15~20%ほどの議員が、まだ態度を保留しているという事になりますね。
ちなみに時事通信による同様の調査では、岸田、河野両氏がそれぞれ約25%、高市氏が約20%、野田氏は5%ほどと報じています。
少々数字に揺れがあるようです。
マスコミの下馬評では圧勝かのように伝えられる河野陣営の焦りにも見える、「古い自民党」批判
さてこの動向については、報道を待たずして自民党所属国会議員の中では、ある程度票読みをしていたのでしょう。
それが河野陣営では予想外だったのか、総裁選公示前日の16日に都内のホテルで行われたという、河野氏を支持する議員の会合「河野太郎の総裁選必勝を期す会」で、小泉進次郎環境大臣が、次のように発言したと報じられています。
(リンク切れの際は、注目記事1952参照)
「派閥の行動が『自主投票』と言われている。だが、水面下の動きを見れば全くそんなことはない。議員1人1人に強烈な働きかけがある。そんな声が若手の議員から私のところに届いている」
また同会議に出席した石破元幹事長も、次のように発言したようです。
「変えなければならない自民党が存在している。古い自民党との戦いだ」
報道も入れない自民党の中で、何が起きているのか?
さてこれを報じたプレジデントオンラインですが、記事の冒頭でこのように書かれています。
今回の総裁選は、自民党内の7派閥中6派閥が事実上の自主投票となった。だが、派閥による縛りがなくなったというわけではないだろう。
こういう記事の書き方が、多くのメディアで散見されます。
よく読んだ上で他の情報と合わせて裏を取らないと、筆者の誘導に乗せられてしまいそうです。
これについてですが、自民党参議院議員の青山繫晴氏が、党内の事情を明かせる範囲で語ったと思われる動画があります。
【ぼくらの国会・第217回】ニュースの尻尾「河野さん過半数取れず 総裁選1回目投票」
それによると、河野太郎氏は、総裁選挙において過半数を取って、一発で勝ち名乗りを上げられる状況ではないとのことです。
その理由に触れる前に、まず自民党総裁選のルールをまず見て見ます。
総裁選は、自民党所属国会議員の議席数分の票(国会議員は一人一票)と、同数の党員票があります。
今回の場合は、直前に国会議員の竹下亘氏が逝去されたため、議員票が382票、党員票も382票となります。
1回目の投票の時は、都道府県の支部は投開票作業を行うだけで、都道府県支部ごとに集計された結果を党本部で一括集計、各候補の得票数をドント式で配分して、各候補への割り当て票数が決まります。
ここで過半数に達する候補者が出ないときは、上位を占めた2候補による決選投票となります。
この時は国会議員には一人1票の投票権がありますが、これに都道府県票として都道府県に各1票が割り当てられます。
楽勝のように報じられていた河野陣営は、1回目の投票で勝ち切らないと、『古い自民党』に負けるのが分かっているので吠えていた
つまり毎日や時事通信の報道が正しいとすると、河野氏は1回目の投票で勝ち切らないと、決選投票で勝てる確証が持てないという事になります。
なぜなら青山議員は動画の中で語っていますが、河野氏は自民党国会議員の中で、意外なくらい人気がないという事で、河野氏に投票することがほぼ間違いない議員は、90人いるかいないかだというのです。
これが事実なら、河野氏が固めている議員票は23%ほどという事になり、これを覆すなら、党員・党友票で有効投票数の実に77%以上獲得しないと、過半数に達しないことになります。
これはどう考えても、不可能な数字でしょう。
河野氏にそこまで党員の皆さんの中で人気が集まっているとは、到底思えません。
では国会議員の票を増やせるかどうかと言えば、ここで河野陣営の言う、『古い自民党』が立ちはだかってくるのです。
メディアでは、自民党の7派閥の内、6派閥が自主投票になったと報じていますが、青山議員によれば、それは表向きの話で、実は「自主投票」を決めた各派閥で、それぞれの候補者に何人割り振るかを決めて動いているというのです。
青山氏によれば、岸田氏と高市氏がほぼ拮抗し、その後塵を河野氏が拝しているというのです。
野田氏は、まあ言うまでもないでしょう。
その状況を知っているからこそ、小泉環境相と石破氏は吠えているのでしょう。
そう発言し、全国の自民党員の皆さんにアピールし、自分たちの障害になる『古い自民党』を悪者化して、票集めに走ろうという魂胆でしょうね。
このままでは第一回目の投票で過半数を取れず、決選投票は必至。
決選投票に残れたとしても、対立候補が誰になるにせよ、そちらに票が集まり、敗れる公算大と踏むから、焦っているのでしょうね。
青山議員も、すでに水面下では、決選投票における駆け引きが行われていると言います。
それがどうなっているかはさすがに語られませんでしたが、発言の印象からすれば、河野陣営にとってはあまりいい状況ではないのでしょう。
河野、石破、小泉たちが、派閥論理に勝てないのは、人望を得られない人となりだから
結局河野陣営も、派閥論理でしか動いていないという事です。
従来の派閥論理では、勝てないという計算で。
そもそも河野氏に人望がないから、麻生派の禅譲を受けられていないのでしょう。
麻生氏が80を越えて派閥の長にいるというのも、それを託すに足る人材に育っていないと見るからでしょう。
麻生氏の河野氏への説得(の趣旨)も、「まだ早い」という言葉に集約されていますね。
河野氏得意の突破力だけではだめだと見るからこその忠告だったのでしょうが、河野氏の心に響かなかったのでしょうね。
ついでに言えば、青山議員も指摘していましたが、石破氏は人望があれば、とっくの昔に総理になれていたでしょう。
それがあれば、総理になれていなくとも、自派閥が10数人、それも年々人数が減るなど、ないはずです。
小泉環境相にしても、人望があるならとっくの昔に派閥を率いていたでしょう。
環境相でトンデモ政策を連発することで化けの皮が剥がれましたが、あのような行動、言動をするようでは、党内でも(親に似たのか)変人扱いでしょう。
せめてあと10年は修行をして経験を積んでいかないと、その内党内でもあからさまに爪弾きに合うのではないでしょうか?
そんな考えが第一にあるなら、勝てるものも勝てないでしょう。
自民党員の皆さんも、バカの集団ではないでしょうから、そういうところは分かる人には分かります。
それを見透かされれば、党員票でも他候補に敗れる展開が、待ち受けているかもしれませんね。
総裁選の行方を占ってみると…
さてこれら情報から、総裁選においてどういう展開が待っているか、ありえそうなパターンごとにシミュレートしてみます。
1.河野氏が1回目の投票で過半数獲得→河野総裁誕生
2.高市氏が1回目の投票で過半数獲得→高市総裁誕生
3.1回目の投票で過半数獲得の候補が出ない
①河野 VS 高市 → 高市総裁誕生
②河野 VS 岸田 → 岸田総裁誕生
③岸田 VS 高市 → 予測不能
1と2は、党員票で圧倒的多数の票を獲得しうる候補のパターンです。
党員票では岸田氏が圧倒的多数の票を獲得するという事は考えにくいため、挙げませんでした。
1のパターンは、自民党員が高市氏を正当に評価していない場合にあり得ます。
2はその逆ですね。
その場合は、かつての小泉純一郎氏が下馬評を覆し、国民に沸き上がった人気を背景に、圧倒的多数の地方票を集めて、本選でも圧勝したパターンですね。
ネット上の高市人気を多くの自民党員の皆さんが正しく評価したならば、あり得ない話ではありません。
まあ、願望も含んではいますが。
そして決選投票になった場合ですが、先に説明した通り、河野氏が決選投票に残る場合は、岸田氏、高市氏のいずれでも、敗北は必至でしょうね。
都道府県票を仮にすべて取ったとしても、国会議員票で勝てないなら、どうしようもありません。
岸田氏と高市氏の一騎打ちになった場合は、予測不能ですね。
岸田氏は『古い自民党』には支持を集めやすいポジションですから、これまでの自民党が踏襲されるなら、岸田氏の勝ちでしょう。
ただ今は内外に多くの問題を抱え、岸田氏がそれを乗り越えられるかついては、不安しか感じない人が多いでしょう。
平時なら安定感のある岸田氏が良いと思う人も多いでしょうが、今は大乱世と言ってよい状況です。
どんなに厳しい事を突きつけられても、主張を曲げない度量を示してきた高市氏の方が、今の時代にあっていると多くの議員たちが考えるなら、高市氏が勝つでしょう。
この辺は自民党の姿を外からしか見ることが出来ない私には、読み切れません。
願わくば、自民党員の皆さん、そして所属国会議員の皆さんが、政策や人柄で仰ぐべき総裁は誰なのか、きちんと判断の上、選んでいただきたいですね。
私だけでなく多くの国民も、自民党員の皆さん、そして所属国会議員の皆さんが、内輪だけでなく、国民の声、視線を反映する意識をきちんと持っているのか否か、見ているでしょう。
それを忘れた選択をするなら、目前の衆議院議員総選挙で痛い目を見るのは、自民党でしょうね。