川崎市、ヘイトスピーチ取り締まりに厳罰で臨む姿勢を打ち出す
神奈川県の川崎市で、全国初めてだという、ヘイトスピーチを繰り返した人に刑事罰を科すことを盛り込んだ、「差別のない人権尊重のまちづくり条例案」を発表したと報じられました。
25日から市議会で審議され、年内に成立する見通しだそうです。
刑罰の対象になる差別行為の規定と罰則は、以下の通りになるようです。
1.公共の場所で拡声機を使うなどし、外国出身者やその子孫に対し、以下のような行為をした場合に、ヘイトスピーチと認定し、刑事罰を与える
①居住する地域から退去させることを扇動、告知する
②生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する
③人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱する
2.この条例が成立した時は、来年7月1日から施行される予定
3.ヘイトスピーチ認定は、以下の手続きを取る
①ヘイトスピーチ1回目
→市長が有識者らでつくる「差別防止対策等審査会」に意見を聞いて、止めるように勧告する
②ヘイトスピーチ2回目(勧告違反と認定)
→市長が審査会に意見を聞いて、再度止めるように勧告する
③ヘイトスピーチ3回目(命令違反と認定)
→市長が審査会に意見を聞いて、違反者の氏名などを公表する
さらに刑事告発する
④告発を受けて、検察や警察が条例違反の捜査を行い、起訴する
⑤裁判で有罪となれば、最高で罰金50万円が課される
またこのようなことも、検討されていたようです。
4.インターネット上の「差別的書き込み」は、(どういった記述が差別的かの認定が難しいため)今回は刑事罰の対象から外した
5.川崎市は、当面はネット上の差別表現の「被害者」保護のため、削除要請をネット事業者への要請を支援する
6.市は、書き込み削除依頼や書き込んだ人の情報開示を求めることも検討する
川崎市の「人権尊重条例案」は、異議申し立てを認めない悪法なのか?
これ、刑事罰への手続きとしては、問題がありますね。
手続きがこの通りなら、「条例違反者」に、異議申し立ての機会が与えられていませんね。
川崎市長が有識者らでつくる「差別防止対策等審査会」とやらが、「条例違反者」の発言が、客観的に問題のない発言であっても、恣意的に「条例違反者」の発言を「ヘイトスピーチ」だと認定した場合、どうなるのでしょうか?
「条例違反者」に異議申し立ての機会が与えられないのなら、いくらでも恣意的に人を陥れることが出来ますね。
そして「有識者」がどういう基準で選ばれるのか、公平に、透明性をもって選ばれないのなら、審査が公平公正に行われない可能性が高くなります。
そして異議申し立ての機会を与えないのなら、少なくとも条例案の規定する人権侵害、差別、ヘイトスピーチの基準を明らかにすべきでしょう。
それをしないのならば、知らず知らずに条例に引っかかって、訳の分からないうちに、ヘイトスピーチ是正勧告を繰り返され、どう直せばいいのか分からないうちに告発を受け、逮捕、起訴されるといったことになる恐れがあります。
このままでは「条例違反者」に対する、重大な人権侵害を生み出しかねません。
閑話休題:私の差別表現に対する考え方
私は川崎市民ではありませんが、例えばこのブログ記事でも、川崎市の定める「条例違反」の範囲が分からなければ、違反に当たる発言をしてしまうかもしれません。
私は実のところ、記事を書くにあたって、表現にはかなり注意を払っているつもりで、あからさまに「差別表現」と受け取られかねない表現は、そうとしか表現できない場合を除き、避けるようにしています。
「朝鮮」という言葉すら、そうとしか書けない場合を除き、「コリアン」と英語表現に置き換えています。
コリアン自身が「朝鮮日報」など、その言葉を使用していますが、言葉尻で伝えたいことが伝えられないのでは、意見発信という目的を達成できませんから。
私自身、外国人に対する無用な差別はすべきではないと考えています。
ただしそれと、不当に日本人が貶められるような行為に対して抗議の声を上げることは、別の話です。
それは表現の自由の範囲。
間違った考えを持った人がいれば、日本人、外国人の区別なく、批判の声を上げる自由は、保証されるべきと考えます。
それをすべて「ヘイトスピーチだ」として口封じをするのなら、間違いです。
無用な差別表現は今後もしないように心がけますが、もしそれでもそう言われて、このブログが閉鎖を強制されたなら、川崎市や今後それに続く自治体の条例が、恣意的に運用されていると見て間違いないと思います。
憲法の精神に反する川崎市の条例案は、始めから無効とするか、公平に運用する内容に改めるべし
川崎市は、条例案を市議会にかける前に、その辺を明らかにし、ヘイトスピーチを止めさせるために人権侵害を引き起こさない仕組みを作るべきでしょう。
それをせずにこの条例を運用するのならば、運用の公平性は明らかとは言えません。
それで「条例違反」とされた人が裁判にかけられたとしたのなら、それこそ「条例違反者」に対する人権侵害です。
そのような手続きに問題のある条例(案)は、憲法の精神に反します。
このまま条例案が可決され、運用されるのならば、裁判では「条例違反者」に対して、全員無罪としたうえで、その条例を憲法違反として無効を宣言すべきと考えます。
人権侵害を引き起こす条例案は、法的に欠陥がある以上、無効とすべきです。
報道を信じる限り、この条例案は(ベクトルは真逆ですが)治安維持法並みの恣意的運用の可能性を孕んだ、悪法そのものです。
そして今回は刑事罰の対処としないとはしていますが、インターネット上の発言に対して、発言者が必ずしも川崎市内在住でない相手に、一地方自治体が一方的に発言の削除要請や、発言者の氏名公表というのは、越権行為です。
罰金刑を科さなければいいというものではありません。
あくまで現行刑法の名誉棄損に当たる不法行為でもない限り、そこまで踏み込むのは、権力の乱用です。
日本人に対するヘイトを処罰対象としないことも、公平さを欠く
そしてこの条例案のもう一つの欠陥は、外国人による『日本人に対するヘイトスピーチ』は、一切取り締まりの対象でないという欠陥です。
様々な情報を総合すると、既に川崎市で、そのような行為が行われている節を見受けるのですが、実際どうなのでしょうか?
この点も修正しないと、公平性にかけます。
その意味でも、この条例案は悪法だと断じて構わないと思いますね。
このような悪法が、他の地域に広がらないように願っていますし、川崎市議会は、この条例案を否決し、リーガルマインドに則った良識を示すべきと考えます。
それをしないのならば、日本政府は恣意的な条例制定をしないように川崎市に勧告して、撤回させるべきでしょう。
そもそも地方自治体の定める条例は、憲法、各法律はおろか、政令、省令等に違反してはならない、法の中でも低い権限しか与えられていないのです。
日本国憲法の精神と条文に反し、刑法の規定にも反する(内乱予備罪などの疑いがある)と見られるこの条例案は、国の命令で改めさせるか、市議会にかけないように勧告すべきレベルのものです。