Morning Phase/Beck | Surf’s-Up

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Morning Phase/Capitol



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ベック、通算12作目のアルバム。


前作Modern Guiltから6年経過しているが、今作に収められた楽曲は割とその当時に書かれたものが多い。ただ作成がなかなか上手く進まなかったり、そのうち体の不調もあったりして、思ったよりも時間がかかったようだ。


個人的にBeckの最高傑作は『Sea Change』だと思っているんだけど、今作はまさにそれに比肩するほどの素晴らしい作品になっている。見事に抑制のバランスが取れ、瑞々しいメロディーを感じることができる。多彩な表現を操るBeckであるが、今作ではエレクトロニクスを排し、アコースティックなバンドサウンドを基調とし、実にシンプルなプロダクションに徹している。


また、良質でメロウな楽曲がそろっていて、ジワジワと染み入ってくるような味わいもある。まぁ、地味と言えば地味。しかし、地味だけど、「簡素さ」は全く感じない。むしろ、ピアノ、アコギなど、練りに練られた一つ一つの音を、丁寧に配置しているというか、大事に鳴らしている印象がある。例えばSay Goodbyeでのギター、バンジョーの独特の張り詰めた感じは、聴いていてゾクゾクする。全体的に、アクセントとしてストリングスを随所に配しているが、決してわかりやすい華美さ流麗さをもたらそうとするのではなく、楽曲の感情を表現する方法として使われている。


Beckのストイックさが漲ったアルバムであり、聴くに当たって非常に集中力を要求される感がある。音だけではなく、『間』のグルーヴ感も同時に感じなければならない。短いストリングスCycleから,Morningへとつながるオープニング、フォーク・カントリーのお手本のようなCountry Down、ダークな流れを作るUnforgiven,Wave(ここすごく好きだ),そして感動的なラストWaking Lightまで、一瞬たりとも緩みがない。


Beckらしからぬ、ラストのあまりのわかりやすさに少々戸惑う部分もあるが、それを差し引いても、キャリアの余裕を感じさせる、十分に素晴らしいアルバム。大好きです。