Slow Summits/The Pastels | Surf’s-Up

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Slow Summits/Pastels



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 グラスゴーの至宝、パステルズのニューアルバム。


 以前、テニスコーツとのスプリットアルバムを出してはいるが、純粋な意味では16年ぶりの新作となる。


そもそもリリースのスパンが長い人たちなので、16年ぶりと聞いてもそれほど驚いている人は、ファンなら誰もいないだろう。


 個人的にも、それほど「待望」という気持ちを持っていなかった。というのも、何というかグラスゴーには、またはグラスゴー以外にも優秀なパステルズ・フォロワーのバンドがたくさんいて、彼らの遺伝子を感じられるギタポをあちこちで聴くことが出来る。そんなこともあって、それほど渇望感がなかったのだ。


 今作のプロデューサーはジョン・マッケンタイア。ポスト・ロックのタッチで、眩いサイケサウンドを作らせたらピカイチな人。そして、TFCのノーマン、ジェラルドら「グラスゴー一家」がしっかりレコーディングに参加している。


 オープニングは、カトリーナがヴォーカルを務めるSecret Music。 緩やかなギターサウンドと優しげなヴォーカルが淡く溶けていく。 静的な空間にメランコリアを展開するという、illumination以降のサウンドが継承されている。続くNight time Made Usではスティーヴンが歌う。個人的にはこのスティーヴンの歌こそがパステルズだと思っている。下手とも違う、微妙にメロディーを外していく感じ。それがなんとも心地よく胸に響いてくる。


 4曲目のSummer Rainが最高だ。ザックリとしたギターに、スティーヴンのヴォーカルというゴールデン・コンビから終盤ジャムっていく流れが素晴らしい。そして、アンビエントなインストAfter Imageへと雪崩れ込んでいく。そこがアルバムのハイライトだと思う。


 6曲目Kicking Leaveでは流麗なストリングスの調べに乗せて、切なさをかき立てるようにカトリーナが優美に歌う。Wrong Lightを挟み、8曲目Slow Summitではサントラ風のインストナンバーを披露している。ラストCome To Danceはこれまた彼ららしい、ホームメイド感溢れる、軽妙なギタポ。


 16年ぶりがどうしたの?って感じで、実にあっさりとアルバムは終わる。しかしながら、この作品とリスナーの関係性こそがパステルズの重要な要素なんだと思う。過度にドラマを作らずに、自分たちのペースで音楽を作り続ける。変わりようのないもの、また、代わりようのないものがここにはある。まさに、タイムレス・バンド。


 (07/08/13)