To The Treetops!/Team Me | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up ノルウェー出身の男女混合6人組バンド,Team Meのファーストアルバム。中心人物のマリウスが、コンテストの最終選考でライブをやるために友人達に声をかけて即席のバンドを組んだところからスタートしたというユニークな経歴を持つバンドである。


 昔から感じているのだが、北欧や日本などロック・シーンのメインストリームから少し離れた地で活動しているバンドの中には、良い意味で音楽性の縛りが少ない。ピッチフォークに低い点数を付けられることもないから、臆面なく好きなものをまんまやれてしまう土壌がある。Team Meもそんな中で、自分たちの音楽性を育んでいったと思うが、彼らはアルバム前にリリースしたEPを世界中で売りまくった。そういう意味ではリスナーに正当に評価されているバンドである。


 北欧らしい、美しくてぬくもりのあるメロディーにスケールの大きいサウンドスケープという音楽性はアーケイド・ファイア、がむしゃら感あふれたポップネスはロス・キャンペシーノスあたりが引き合いに出されているが、一つの音楽性にとどまらない多様性をこのバンドは持っている。


 いきなり8分超えのRiding My Bicycle (From Ragnvalsbekken To Sørkedalen)でアルバムは幕を開ける。重厚なビートとハンドクラップ、聖歌隊のようなコーラスとインパクトも十分。確かに降り注ぐような多幸感はアーケイド・ファイアに通じるものがあるかもしれないが、僕はむしろ同じ北欧はデンマークのMewが描いているような、陶酔的な音世界を彼らも作り出そうとしているように感じる。


 そのせいか、サウンドスケープがめまぐるしく変わる、サイケデリック・ポップ調の曲も多く見受けられる。ただ、アニコレほど振り切れたものにはなっていないし、ドラッギーな感覚もあまりない。でも、メロディーが親しみやすいものばかりなので、むしろそこに重心をかけすぎないようにしたことが、結果的に彼らの魅力をよりアピールできる結果につながっていると思う。


 個人的ハイライトは壮大なスケールのWeathervanes And Chemicals泣きのメロディーにトライバルなビートが徐々に展開していくFool,Dear Sisterの中盤の3曲の流れ。今後格段の成長を見せたり、大化けするような感はないが、安定感は十分。このキラキラしたポップネス、いつまでも失わずに!


★★★★(09/05/12)