米ミネソタ州、ミネアポリス出身の5人組ロックバンド、Howlerのデビューアルバム。メンバー全員20歳そこそこながら、ラフ・トレードのジェフ・トラヴィスが即契約にこぎ着けた、という事実だけで自分は買ってしまった。今年の新人勢の中でもかなりの注目株のようだが、今年のフジロックにも参戦ということで、どんなライブをやるのか今から楽しみである。
音楽性はざっくり言ってしまうと、ガレージかつサーフなギターロック。そんなバンド、掃いて捨てるほど居るんだけど、サウンドはほぼ全曲ギター中心に展開されていて、確かにここまで正面切ってギターロックをやっているバンドも今では珍しい。
オープニングはもろガレージ・サーフなBeach Sluts。サビへの傾れ込み方がリバを彷彿とさせる。続くBack To The Graveは暗黒世界のBeach Boysのよう。ノイジーなギターと清涼感のあるメロディーがぎりぎりのバランスを保っている。デビューシングルである、イントロのギターリフがクラシカルなかっこよさを見せるThis One's Differentはやはり出色の出来。クールに風を切っていくような、疾走感が心地よい・・・
Deerhunterのブラッドフォード・コックスをちょっとポップ目にしたようなヴォーカルと天衣無縫なメロディーライン、遮二無二かき鳴らされるギターサウンドは実に相性が良い。よくストロークスあたりが引き合いに出されているようだけど、個人的には最近のWAVVESに近いものを感じる。キャッチーなメロディーをラフに、ノイジーにやりきることで、できるだけギターロックのダイナミズムを増幅させようとする姿勢がかいま見られるからだ。
おそらく90,00代の豊穣なインディー・ロックにたくさんふれる機会があったのだろう。それほどバンドの個性を強調せず、自分たちが親しんできたロックを純粋培養したような素直なアレンジの曲が多いように感じる。でもそれが凡庸に写らないのは、メロディーが実に良くできているからだ。キャッチーという点では十分合格点を与えられる。同年代のインディー・ロック・ファンだけでなく、幅広い層にアピールできるだけの魅力を持っている。
惜しむらくは、アルバムを通すとやや一本調子な感があるところか。The Drumsは表現のテーマの幅を広げることで、同じ1stでその点をクリアすることができたが、Howlerは強烈な個性を打ち出していない分、そこが弱い。
そこは次作に期待。絶対にセカンドを出して欲しい。
★★★★(07/05/12)