シアトル出身Band Of Horsesの3rd。サブ・ポップからメジャーのコロンビアに移籍し、今作もアメリカではかなり売れているらしい。かつてはネオ・カントリー・バンドの一つとして扱われていたが、今ではアメリカン・ロックの継承者として名前が挙げられるほど、着実に力を付けてきたバンドだ。
前作もそうであったが、アメリカン・ロックの良質な部分に、グランジやエモなど時代性をくぐり抜けた上で精製されたエッセンスを加えたようなサウンドを今作でも展開している。前作に比べると幾分レイドバックしたような感もあるが、美しいメロディーと豊饒なハーモニーを主体とした音作りは変わっていない。
のっけから壮大なストリングスの元に、流麗なハーモニーが広がっていくFactoryでアルバムは始まる。先日来日した際に、プラネタリウムでライブをした彼らであるが、この曲のPVを作るとしたら、ただ満天の星空を写すだけで十分だと思う。きっといろいろ作り込んでいるのだろうけど、全く感じさせないくらいナチュラルな魅力があるのだ。
2・3曲目はオーソドックスなバンドサウンドが続く。70年代のウエストコーストや南部あたりのテイストを感じさせる。4曲目Blue Beardの幽玄的なハーモニーとゆったりしたリズムはフリート・フォクシーズのよう。他にも、重厚なバックに美しく伸びやかな歌を聴かせるInfinite Arms、アコギとツイン・ハーモニーだけというS&Gを思わせるようなEvening Kitchen、もろカントリーテイストでサビの感じがとても切ないOlder、そして、グランダディがグランジダディになったようなNW Apt.など、意外と幅広いサウンドを聴かせる。
先ほど述べたように、かなりプロデュースが入って整えられているところはあるのだろうけど、手触りはとてもオーガニックな感じ。これは基本となる楽曲が、普遍的な美しさを持った強靱なものであるところが大きいだろう。だから、聴き終わった後、印象に残るのはサウンドよりもメロディーなのだ。そして、繊細なタッチの曲でも、弱々しさがない。小さくても凛とした佇まいを持った花のようなのだ。初期のニール・ヤング作品と同じようなテイストを感じる。
個人的にはこれまでの中でベストなアルバムだと思うし、出来ればこの感じを「王道」として突き詰めていってもらいたいと思う。だってこれ、自然が多くて夜になれば綺麗な星空が見える、自分の住んでる町で聴くのに最高なのだ。
おすすめ度★★★★☆(11/08/10)