The Verveのフロントマン、リチャード・アシュクロフトの新ユニット、RPA&The United Nations Of Soundの1st。ヴァーヴをまた終わらせ、リチャードが新たに挑戦したことはヒップホップやR&Bを意識した作品づくり。プロデューサやバックミュージシャンにアメリカのヒップホップシーンで活躍する人材をそろえ、比較的自由なスタンスで取り組んできたソロ作品と比べても、かなりビートの効いた作品となっている。
ズシッとくるビートと壮大なストリングスに乗せて、リチャードが「準備はいいか?」と問いかける強烈なナンバーAre You Ready?でアルバムは幕を開ける。しかしこれ、強烈ではあるが違和感はない。ヒップホップというほどではないし、リチャードの呪術をかけるような歌い回しはそのまま。続くBorn Againはあからさまなタイトルと同じように喜びに溢れたソウルフルな歌。そして驚くほどポップに仕上げられている。
3曲目のAmericaからやっとヒップホップ的要素が強くなってくる。それでもリチャード自体は全く変わっていない。というかむしろ変わりようが無いのだと思う。ヴァーヴだろうが、ソロだろうが、自分のスタイルで歌を歌うだけ。どんな楽曲さえも圧倒してしまう存在感は見事。
というわけで、作品の色がどうのこうのという論点は外した方が楽しめる作品だと思う。個人的に好きなのは最もヒップホップ的なサウンドプロダクションのBeatitudes。喜びをかみしめながら、最後には歓喜の叫びへと変わっていくShe Brings Me The Music、郷愁的なメロディーが印象的なGloryなど。
と、けっこう良い曲が並んでいるんだけど、個人的には物足りなさがある。アメリカのルーツミュージックの流れを汲んだビート作品は好きなタイプなんだけど、少々オーバープロデュース気味なのと、サウンドプロダクションのとっちらかりぶりが勿体ない。
でも、リチャード自体は、ジャンルの垣根を越えるようなものにこそ、真の価値があると考えているのだろう。そういう意味ではぶれていないのだろうし、ヴァーヴよりも幅広いサウンドになるのは当然。それゆえに、上手い束ね方をしたらもっと違うものになっていたのでは、という想いが残る。
おすすめ度★★★☆(12/08/10)