FUJI ROCK FESTIVAL '10 8/1(2) | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

 Vampire Weekendの後はしばし休むことにした。Foalsは魅力的だったが,夜は長い。ここは無理しちゃいかん。グリーンではブンブンサテライツのライブが行われている。バンパイアの後に,こういうデジロックは効くのだろうか,さらに人が増えたような気がする。それともトム待ちか。バンパイアとは違う観客の上がり方。


 いよいよAtoms For Peace。ステージ上にはつながれた蛍光灯のような照明が付けられてる。そして後ろを振り返ると,たくさんの人・人・人。明らかに3日間で一番の入りだ。


 そしてほぼ定刻にメンバー登場。あっ、フリーだ。真っ赤っかで目立ってる。歩く姿さえフリーだと思わせるような佇まいがある人だ。他のメンバーーがだいたい位置に着いたところでトム登場。神々しい。

 

 まず驚いたのはトムの出で立ち。タンクトップにヘアバンド。なんか昔のテニス選手のような感じ。髭は良い感じにぼうぼう。まずはピアノに向かって印象的なイントロを奏でる。オープニングはソロアルバムの1曲目、The Eraser。レディヘッドの曲も含めてだけど、イントロ一発で戦慄が走るというか、ゾクゾクくる。体でリズムを刻みながら歌う姿がめちゃめちゃかっこいい。そして曲の途中で立ち上がり、ギターを持ってフリーのところへ。


 二人で向かい合わせになりながら、激しいリフを繰り出すトム。それに呼応するようにフリーのベースも激しさを増していく。もう説明できないレベルのかっこよさである。




Surf’s-Up  この後バンドは「The Eraser」の曲順通りに演奏していく。ライブではディスクよりもパーカッシヴというか、実際ソロ作がすごくリズムを意識した作品なんだということが分かる。メロディーよりもリズムが主として機能するような音楽だ。だからフリーのベースやジョーイ・ワロンカーといった名プレイヤーの技量がこのサウンドの鍵となっている。ベースもドラムも有機的な響きを持って聞こえるが、その肉体的な感じがとてもマッチしている。アレンジは所々変えられていて、Skip Dividedではフリーがピアニカを吹いたり、Cymbal Rushでも電子音の部分がベースやドラムになっていた。


 そして、ハンドマイク1本で歌うことが多かったトム。その姿も新鮮だけど、あんなに体を激しく動かして歌うとは思っていなかった。トライバルなビートに合わせて取り憑かれたようにダンスする。Harrowdown Hillなんかすごく官能的に聞こえるほど、生々しさを体現するようなダンスを見せていた。かと思えば、「コンバンハー」「イラッシャイマセー」「ワタシハ、トムヨークデス」と日本語しゃべりまくったり、いきなり爆笑したりと気さくな面も見せる。

 
 アルバム全曲分プレイし終わると、一旦メンバーが下がる。そして、アンコール後に出てきたのはトム一人だった。ここからはソロで3曲プレイする。まず、アコギで重いリフを奏でながら、おもむろに歌い出したのはI Might Be Wrong。いよいよレディオヘッドナンバーが解禁となる。そして次の曲では、マイクを2本用意。まず片方のマイクを叩いてリズムを取りながらさわりの部分だけど歌う。練習なのかと思っていたら、なんと今歌った部分をサンプリングし、ループさせてバックトラックにしたのだ。それに合わせてアコギを弾きながら歌う。産地直送一人多重演奏。すげぇー。そして、極めつけはピアノに向かい、また印象的なイントロを奏でる。Videotape。にぎわっていた会場がしんとなり、空気がピンと張りつめる。誰もがじっとステージを見つめている。トムの声とピアノだけが鳴っているのだけど、それが会場に魔法をかけているのが分かる瞬間だった。


 再び、ステージにバンドメンバーが現れ、残り4曲をプレイして終了した。正直残りの4曲はソロの時の衝撃が強すぎて何となく聴いていたところがあったが、圧巻の16曲であった。


1. The Eraser
2. Analyse
3. The Clock
4. Black Swan
5. Skip Divided
6. Atoms For Peace
7. And It Rained All Night
8. Harrowdown Hill
9. Cymbal Rush

-Thom Yorke solo part-
10. I Might Be Wrong
11. Give Up The Ghost
12. Videotape

13. Paperbag Writer
14. Judge, Jury and Executioner
15. Hollow Earth
16. Feeling Pulled Apart By Horses


 そして、この衝撃は結局最後まで自分を支配することとなる。



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 Atoms For Peace終了後、地に足がつかないような感じのままホワイトへ。暗がりの道の向こうからIan Brownの声が聞こえてくる。自分がついた頃にはゲストとして出ていたらしいオレンジレンジのメンバーが下がり、F.E.A,R.が始まった。小雨が降る中、立ち姿はまさに肩で風切るKingって感じ。ニューアルバムから2曲やった後ラストはFool's Gold。やはり盛り上がる。ここで自分もやっと覚醒し、踊りまくる。いやぁこの音、いつまでも続いてほしい。高校生の頃の思い出がフラッシュバックされる、青春の1曲なのです。


 いよいよ最後はホワイトのトリ、Belle&Sebastian。トリといっても、正直ピンと来ない。ベルセバが物足りないという意味ではなくて、そういう「格」がどうのこうのという論点から遠く離れた感じが僕は好きで、自分の心がどんな状態であっても、聴きたいと思うのがベルセバなのだ。



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 登場して、いきなり女性ヴォーカルによる新曲を披露。しかし、新機軸となるようなサウンドではない。いつもながらのじわじわしみこんでいくメランコリックな曲である。スチュワートはTシャツにジャケット、変わったメガネとちょっとロックスターっぽい。結構気むずかしい人なのかと思っていたら、案外軽いノリの人でThe Boy With The Arab Strapでは事前に選んだ観客4人をステージに上げて踊らせたり、客席にダイブ(というか引っ張られたように見えたけど)したりと意外なエンターティナーぶりを発揮していた。


I Didn't See It Coming(新曲)
I'm A Cuckoo
Step Into My Office, Baby
Like Dylan In The Movies
I'm Not Living In The Real World(新曲)
If You're Feeling Sinister
Sukie In The Graveyard
Funny Little Frog

The Boy With The Arab Strap(観客のダンス付き)
If You Find Yourself Caught In Love
Get Me Away From Here, I'm Dying
Sleep The Clock Around
Judy And The Dream Of Horses
Legal Man


アンコールはLegal Manのみであったが、かなりお腹いっぱいになったステージだった。


 本当はクロージングのシザー・シスターズまで観たかったんだけど、シャトルバスのことを考えて、ここで苗場にサヨナラすることにした。数年ぶりだったけど、良いところは全く変わっていないし、やはり魅力的なフェスだ。一定のオーガニックさがあるのもいい。すごく快適に3日間過ごせたので、来年もたぶん行くと思います。


 ※ざっと書いてしまったので、まだまだ書き切れていない思いもあります。それはまた随時。とりあえずフジレポはこれで終了します。