The XX/The XX | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 昨年度のBest Albumとしてすでに多く取り上げられていた新人The XX。バンドの結成のきっかけは、彼らが16歳の頃自分たちのベッドルームでワム!やピクシーズをカバーしていたことから。しかしながら、このThe XXが鳴らす音は、ワム!の無邪気なポップネスでも、ピクシーズの粗暴なバンドサウンドでもない。


 まだ20歳の四人組は、周りの空気を一瞬にして冷ややかにしてしまう透徹とした音を出すバンドだ。メランコリックなメロディーと退廃的なサウンドという組み合わせは特に目新しくないが、このアルバムには不思議と「ねらっている」感じがない。「こういうテイストでやってみました」というバンドの主張が出過ぎて素直に楽しめないアルバムというのが時々あるが、The XXには全くそういうところがない。自分たちの中にある物を突き詰めていく過程でたどり着いたのがこのサウンド、という風に聞こえるのだ。それ故に1曲1曲非常に研ぎ澄まされていて、余分な要素がない。


 ギターノイズもなければ、派手なエレクトロもない。あるのは最小限のギターと打ち込み、そしてサウンドのキーとなっている重低音。終始抑え気味の演奏で、過剰に上昇していこうとはしない。そこに退廃的な男女のヴォーカルが合わさり、甘美な魅力を醸し出している。驚きなのが、これらのサウンド全てをメンバーの四人で作り上げたという点だ。でも、おそらくその「密室性」が、高い中毒性を生む原因の一つになっているような気がする。他の人の手が入らないことで、彼らは自分の音を「純粋培養」することができたのだろう。詞もサウンドも大人びているのに、どこか無邪気な側面も併せ持っているのだ。ダークネスとピュアネスの不思議な共存。これこそがThe XXの存在をスペシャルにしているように思う。


 ヴェルベット・アンダーグラウンドやヤング・マーブル・ジャイアンツあたりの音が好きな人にはお勧め。でも、似ているわけではありません。


 おすすめ度★★★★(14/01/10)