Is And Always Was/Daniel Johnston | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up USインディ界の「生きた伝説」、ダニエル・ジョンストンの昨年発表したアルバム。僕が彼に興味を持ちだしたのはGirlsを聴いたときに「これって、ダニエル・ジョンストンっぽくない?」と思ったから。


 その昔、音質モッコモコで雑なギターに甲高い声の歌にはついていけなかった。良さもわからなかったし、音楽性以外のところで注目されていたんだろうと、かなり失礼なことを考えたものだ。


 で、GirlsのLust For LifeやBig Bad Mean Motherfuckerなどを聴いているとふと彼のことを思い出した。ネット上で数曲聴いて目が覚めた。いい。めちゃくちゃなギター、オルガンに乗せてぶちまけられる彼の歌にすっかりはまってしまった。それから、僕の「ダニエル・ジョンストン祭り」が始まった。でも、昨年新作が出たことを知ったのはつい最近のことだった。


 前作から6年ぶりとなる新作は、あのジェイソン・フォークナーをプロデューサーに迎えている。しかもドラムではジョーイ・ワロンカーが参加。かなりバリバリなメンバーとともに制作された。かつてのような思うがままに録音するということもなく、形の整えられた楽曲が並んでいる。思ったよりずっと聴きやすいし、かつての「キング・オブ・ローファイ」な姿がなかなかこのアルバムからは想像できない。


 僕が驚いたのはFake records Of Rock'n Rollという曲を聴いたときだ。だってこのドライブ感は、まさに王道のアメリカン・ロックなのだ。さすがはジェイソン・フォークナーともいうべきか、疾走するポップからゴリゴリのロックまで幅広いアレンジでダニエルの楽曲を聴かせている。そのどれもがメロディーの味わいを損なっていない。過剰な装飾はせず、あくまでメロディックな歌とギターを中心に据えているところは、お互いに好きなビートルズの手法を踏襲しているのかも知れない。


 個人的にベストトラックはI Had Lost My Mind。映画「悪魔とダニエル・ジョンストン」ではオルガンの弾き語りであったこの曲が、歌詞もサウンドも「ピ○○ーズじゃねぇか」といわれそうなアレンジとなって登場。それでも、この曲の良さは失われていない。この「いかれっぷり」がないと、やはり寂しい。


 ダニエルのメロディーセンスは相変わらず絶妙そのもの。本当に素晴らしい。昔から素晴らしいのだが、こうやってちゃんとしたフォーマットにすると彼の楽曲が普遍的な素晴らしさがあることに気づく。聴きようによっては、エッジが取れてしまった、個性が半減する、とも取れる。確かに中にはあまりにもsophisticateされしまってる曲もある。が、こうやって自分の理解者の考えを受け入れ、共に素晴らしい音楽を生み出していることは、彼のこれまでの歴史から言っても感動的なことだ(興味のある人は「悪魔とダニエル・ジョンストン」を見てほしい)。


 おすすめ度★★★★☆(15/01/10)