UK出身、Eugene Mcguinnessのアルバム。実はこれ以上詳しいことは知らない。あと知ってることは、Dominoからのリリースということくらいだろうか。というわけで、バンドなのかソロなのかもわからないがおそらくソロなのだと思う。HPも無く、手がかりはMy Spaceくらいだが、偶然見た「Moscow State Circus」のPVがかっこよくて思わず買ってしまった1枚だ。
アコギがかっこよくかき鳴らされ、朗々と時々調子はずれに歌われる「Rings Around Rosa」から始まり、モリッシーっぽい「fonz」、リードトラックでもある「Moscow State Circus」は90年代のブリット・ポップの影響を感じる1曲。「Not So Academic」はホンキートンクなピアノをフィーチャーしたポップス。といったように音楽性は割と幅広い。(たぶん)ソロである利点であろう「制約のなさ」を十分に生かしたアルバム構成になっている。
特徴的なのが、たたみ掛けるというか縦横無尽に流れていくメロディーライン。激情的に高揚していくのではなく、曲の所々にツボとなるメロディーを配置することで、グルーヴを生み出していくという構造はArctic Monkeysを思わせる。メロディー主体で勝負するタイプではなく、リズムや歌い回しなど総合的なところで中毒性を生むタイプだと思う。
こういう作り方をする場合、重要となるのはセンスだ。あまりにも作り込んでしまうと、その継ぎ目や装飾がうるさく思えてしまう。そういうところでは、彼はいいセンスを持っていると思う。時にシンプルに時に適度に遊び心を入れたりと、聴き手の心地よさみたいなものをよく知ったアレンジが多い。王道ではなくて、あくまで「小粋」なところをねらっているのだなという感じがする。
非常にサクサクしているというか、独特の軽快さがあるアルバムだと思う。BeckともBadly Drawn Boyともまた違った、ロック・マエストロとしてどう成長していくのか楽しみでもある。
おすすめ度★★★★(27/11/08)
Moscow State Circus