DAY & AGE/The Killers | Surf’s-Up

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The Killersの3rd。前作「Sam's Town」では覚醒とも言うべき、本格派への道を歩み始めた彼ら。個人的には1stも2ndもストライクなはずなのに、これまでなぜかあんまり好きになれなかった。子どもの頃、自分が慣れ親しんだ80'sポップロック、アメリカン・ロック。しかしながらKillersの鳴らすそれは、「よくできている」という印象はあっても、「これが自分たちの音だ」という必然性があまり感じられなかったのだ。また言い換えると、「こういう音を聞くなら普通にDuran Duran聴いちゃうなぁ」という、The Killersへの欲求を自分がもてなかったのだ。


 で、この新作であるが、セカンドでのシリアスなロック路線からまた大きく舵を戻している。といっても、1stに比べると、メロディーのスケールは大きくなっている。自分が変化を遂げてきた過程を見直し、進化した部分を上手く組み合わせながら「自分たちの音楽」を作ろうとしている様子がこのアルバムから伝わってくる。


 リードサックスに薄いギター音が印象的な「Losing Touch」でアルバムは始まる。そして、もろシンセポップ、だけどメロディーは「The Joshua Tree」期のU2みたいな「Human」へと続く。3曲目はポジティヴなシンセロック「Spaceman」。4曲目「Joy Ride」は、まさにあの「Let's Dance」を思わせるファンキーなナンバー・・・


 後半になると、少しずつ前作のシリアスなテイストが戻ってくるが、全体を通して王道80'sサウンドがこれでもかというくらい鳴らされている。シンセ音、コーラスのかかったギター、軽めのドラム、そしてポップな歌メロ。近頃はすっかり珍しくなくなったが、極めて懐古的な音。それを今やる理由は何なのだろうか?


 彼らは「Human」の中でこう問い続けている。「僕らは人間なのか? ダンサーなのか?」。この歌詞はダンサー的メンタリティーを批判している人物に対して思い浮かんだ歌詞らしいが、まさにこの問いこそが、彼らの存在理由であるような気がする。クソみたいな人生をダンスフロアに変えてみせる、そのために選んだ武器がまさにあの黄金の80'sサウンドなのではないか。そう思えて仕方がないのだ。そして、そう考えるようになって初めて彼らの音楽にリンクすることができた。やっと良さがわかりました。



 おすすめ度★★★★(29/11/08)



Human