アメリカ、アトランタ出身のDeerhunter、3rdアルバム。Pitchfolkで絶賛されるなど、これまでも高い評価を受けてきたようだが、個人的にはこのアルバムがDeerhunter初体験。
いきなりドラッギーなギターで幕を開ける。ここから怒濤のサイケデリックワールドに突入かと思いきや、急にギターノイズが止み、アルペジオが美しい2曲目「Agorafobia」へ。繊細でメランコリックな歌が紡がれていく。
この通り、浮遊感のあるトリップサウンドに終始するというわけでもなく、ノイズがたたみ掛けるシューゲイザーな曲もあれば、ガレージっぽく武骨なスタイルも見せる曲もある。全体を通して言えるのは、メロディーが意外とポップで、想像していたよりもずっと歌ものの要素が高い。The Cureが新作で見せた、漆黒の闇に咲く妖艶な花のような美しさを持ったアルバムだと思う。
また全体を包むサイケな雰囲気も、ムンムンというわけではなくてほどよく醸し出している感じ。まとめるとかなり「おいしいどこ取り」サウンドの様にもとれる。ただ、素晴らしいのはその「おいしいどこ取りを」見事に自分たちの音へと昇華させているところ。○○風であっても、結果的にできあがったものは紛れもなく自分たちのサウンドなのだ。
聴きどころは、表題曲「Microcastle」。ロード・ムービーのサントラのように緩やかな歌から、徐々にエモーショナルな展開を見せていくメロディーが見事。そして、その後に続いていく「Calvary Scars」「Green Jacket」の情念を感じる流れが美しい。
なお、僕の買った輸入盤は2枚組で、「Weird Era」という本編よりも曲数の多い盤がついています。こちらは詳しいことは謎ですが、こちらも本編に負けないくらい良いです。買うなら、この2枚組をおすすめします。
おすすめ度★★★★☆(26/11/08)
Agoraphobia
Microcastle