大学時代の思い出ですが、友人たちと話していて、僕が「物を片付ける」ことを意味して、「それをかたしてから…」と言ったら、西日本出身の同期生たちや千葉在住の後輩が不思議そうな顔をして、「何それ?『かたして』ってどういう意味?」とたずねてきました。
それで、初めて知ったのです。
僕が幼い頃からずっと馴染んできていた「かたす」という単語が、実は主に東京地方で使われる方言だということを。
本当にビックリしました~!
そういえば、テレビ、ラジオのニュースなどの放送では、アナウンサーは、みんな東京弁で話しています(ここでは大雑把に言います)。
東京弁が共通語であることは認めざるを得ないが、東京弁を標準語であるとまで言うことには反対だ、といった意見も他地域の方々の中にはあるようですね。
なるほど、と理解できます。
手話の場合も同じで、固有の言語ですから、背景となる地域の文化の影響を受けて成り立っています。
ですから、手話は、国や地域によって表現方法が異なります。
例えば、
「名前」を表す手話は、関東では一般に、左掌に右手親指を付ける(拇印を押すイメージの)仕草をします。
これに対して、関西では「名前」を右手の親指と人差し指で作った輪を左胸に当てます(名札やバッジのイメージ)。
また、「わからない」という手話は、関東では右掌で右胸を2回軽く払い上げる(胸の中に入っていかないイメージの)仕草をします。
これに対し、逆方向に払い下げる仕草で「わからない(知らない)」を表す地域もあります。
さらに、北海道では、「わからない」は、左右それぞれの親指と人差し指で作った輪を繋いでからパッと離す仕草をします。
これは、他の多くの地域では「関係ない」という意味を表す手話です。
ですから、北海道の人が「あなたの話はわからない」と手話で表すと、他地域の人は「あなたの話は関係ない」と読み取ってしまうおそれがあります。
違う地域の人が自分の知っている手話表現(に見える手話)をしても、その言葉を共通の意味で使っているのかどうか、注意が必要なわけです。
日本全国の各地域で行われている手話講習会では、その地域に住むろう者が使う手話表現を尊重して指導しています。
地域性を優先しているため、手話は、日本語の話し言葉ほどには共通化(標準化)が徹底されていません。
そこで以前から気になっていることがあります。
NHKで放送されている「手話ニュース」という番組のことです。
出演しているろう者キャスターの中には、山口県、静岡県、福島県、山形県、東京都などさまざまな地域出身の方がいます。
ですが、ニュースに使っている手話は、東京で使われている手話表現であって、他のある地方特有の手話表現は使われていないように見えます。
「この手話を地方のろう者の人たちが見て、ぜんぶ正しく理解できるのかなぁ~???」というのが、僕の疑問です。
それで、先日の日記に書いた横浜散歩の折に、関西のろう者たちに質問してみました。
彼らの返事はこうでした↓
「NHK手話ニュースは、たまにしか見ない。
キャスターが使っている手話表現を見ると、ときどき自分の知らない表現、文脈がつながらない表現、新しく作られて広まっていない手話が出てくる。
それでも、自分は字幕で内容を理解できるから良い。
でも、日本語の文章が苦手な高齢のろう者などは、キャスターの手話だけしか見ないので、ニュースの内容を誤解してしまっている場合がある。
現に、放送を見て、地域の手話と間違えて読み取って誤解していた友人に対して、自分が訂正して説明してあげたこともあった。」
東京のろう者の間では、このような意見を聞いたことがありません。
せいぜい新しい手話表現に対しての不満くらいでしょうか。
ですから、伝わらない部分は、手話キャスターの責任ではありません。
むしろ、音声放送と同じように東京弁で放送していることによる弊害と言えますね。
仕方ないことですが。
地方で手話を学んでいる方々の中には、NHK手話ニュースやネットの動画を教材にしている方も沢山いると思います。
僕もネットの動画はよく見ています。
その際には、地域特有の手話表現があること、また、その人個人の手話のクセなどもあることを念頭において、注意深く検証しながら勉強されることをお勧めします。
もともと素晴らしい手話表現を見せてもらっているわけですから、正しく活用しさえすれば、すごく勉強になると思います。
手話の地域性、実はこれ手話通訳にとっても、非常に大きなハードルなんです(^ ^;