みなさん、こんにちは。
前々回は交流分析という心理学の考え方をお話しました。
その中で親である私達があえて「子供」のポジションを取ることで、お子さんの中にある「親」の人格を引き出すことがでできるという例を示しました。
今日はこの『自我状態のモデル』を使って、更に別のコミュニケーションスタイルをお伝えしたいと思います。
※ 前回の記事をお読みでない方は、先にこちらの記事をお読みください。
>>『子供の中の「親」を引き出す』
【大人ー大人のコミュニケーション】
大人である私達は、同僚との会議の席や友人同士の会話などでは、どちらの立場が上ということもなく、対等にお互いを1人の大人として尊重して意見交換をすることができます。
ですが家庭の中での子供たちは当然ですが、「子供」の役割を担っている時間が大半で「大人」を発揮する時間はほとんどありません。
父親や母親と大人同士のように、真面目な話しや意見交換をする場面はなかなか体験できず、「大人」の人格が育ちにくいものです。
これは言い方を変えると、親である私達が常に「親」の人格にとどまっていることで、子供たちの中にある「大人」の人格を押し込めてしまっているとも言えるのですね。
私の周りにはとても少数ですが、親に対して「大人ー大人」のコミュニケーションを取りながら育った友人がいます。
家族の一大事になると、親から呼び出され「お前はどう思う? お前の意見は?」と1人の大人として意見を求められ、家族が今後向かうべき方向性について意見したと言います。
大人になってわかる彼らの共通点は、自尊心が高く、明確な意見や信念を持ってリーダーシップを発揮する仕事に就いている点です。
家族という最初の社会の中でそれを求められたために、現実の社会に出た時には、自分の意見を伝えて影響力を発揮することに既に馴れていたのですね。
逆に、常に子供扱いで「子供」の位置に押し込められて来た子たちは、人の意見に不満を持ったり反抗したりすることはできますが、その代替案となる自分の意見を鍛えあげるような部分が弱いように思います。
「大人ー大人」のコミュニケーションは、それほどに子供達の人格形成に違いをもたらすのですね。
そこで、今日は親子の新しいコミュニケーション・チャンネルとして、「大人ー大人」の関わりに方に焦点を当てて実践法をお伝えしたいと思います。
特に5歳くらいからは、この「大人ー大人」トークは非常の楽しいものとなります。
【実践編】
子供と「大人ー大人」のコミュニケーションを取る際のポイントは、
大人である私達が、『自分の意見が正しいわけではなく、あくまで1つの考え方に過ぎない。正解は自分もわからない。』という姿勢で接することです。
それでは、実際に行われた会話を例に挙げたいと思います。
ウチの8歳の娘との寝る前の会話です。
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娘に学校の様子を聞いたり、父である私が小学生の時に考えていたことなどを話していた時にことです。
「のん。あんな。とと(お父さん)は思うんやけどな。うーん。これは正しいかどうか、わからへんで。わからへんけど。ととが思うことなんやけどな。
小学校っていろいろ学ぶけどな、学ぶのは家でもどこでもできるやん。だから勉強よりもいろんな友達と遊んだり、仲良くなる方法をみにつけた方がええと思うねん。
いや、わからへんねんで。何が正解かはわからへんねん。でもお父さんはそう思うな。」
この親の「わからないけど…」という姿勢を受けて、娘の目が驚くほどキラキラし始めました。
そして応えます。
「あんな。のんはこう思うんや。あんな。そら友達と遊ぶのも大事やんか。でもな学校は勉強教えてくれるところやし、話し聞いてなかったら分からんようになるやんか。
だからな。勉強も友達と遊ぶのもどっちもやるのがええんやで!」
↑出た! 優等生の答え!(゚д゚)! どの口が言うとんねん! と吹き出しそうになりましたが、まあ、良しとしましょう。
このように、答えを教えるのではなく親の個人的な意見を言うことで、それと協奏するように子供達が自分の意見をひねり出して考えるようになります。
自我を確立するというのは、ある意味で自分の意見や信念を練り上げて行くことです。そしてその信念に沿った行動を起こすことで、信念と行動の差を無くすことで自己信頼を築き上げることです。
こういった「大人ー大人」のコミュニケーションが、子供達の意見を練り上げるための訓練になれば良いですね。
繰り返しになりますが、大切なのは、『自分の意見が正しいわけではなく、あくまで1つの考え方に過ぎない。正解は自分もわからない。』という姿勢で接することです。
『答えの無い問いを投げる』と言っても良いかもしれません。
今度お風呂に入った時にでも投げかけてみてください。
「女の子として大切なことが5つあるとすれば何やろな…? 1つは笑顔やと思うなぁ…。笑顔の女の子は周りを明るくするもんなぁ。残りの4つは何やろ。う~ん…。」などと。
どんな答えが返ってくるのか。
想像を絶する答えが返ってきて、とっても面白いですよ(^^)