第二局のアレ | スピカの住み家

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気まぐれで更新します

一通り文章を書いた後に、今この部分を書いているのだが、今回はずいぶん長々と書いてしまった。
正直、話題が話題なので不快に感じるかもしれない。閲覧注意と予防線を張っておいて本文に移るとする。




電王戦が始まった。初戦は私も見ていたが、普通に強くてびっくり。コンピューターというよりはトッププロみたいな印象を受けた。△5二歩などはとても参考になる。鈴木八段はありがたい手と評していたが、私はこの手でああ、もう勝てないなと感じた。手の善悪ではなく、自陣に目を向けられるのが嫌なのである。きっちり面倒を見てあげますよ、という王者の余裕が感じられた。
以下はやはりチャンスがなかったようで、押し切られてしまっている。△5二歩より前からもう悪かったか。敗着が菅井五段の言った通り▲6八角だとすると、人間は一生勝てないんじゃないかと絶望する。これからコンピューターはどうなってしまうのだろうか。


第二局のPVが話題を呼んでいる。
やねうら王がアップデートをすることになり、それはレギュレーション違反にあたるのではないかということだ。
Twitterでは論者達のありとあらゆる意見が流れてきて、正直うんざり。否定しとけばいい、みたいな風潮は嫌いだ。

というのも、私は今回の件について全く疑問視していない。私がドワンゴ、やねうら王、佐藤六段の立場だったらと考えると、こうなるのは自然の流れだったのではないか。そう思うのである。
ドワンゴに対する批判が多いが、私がドワンゴの立場だったら喜んで違反を認めたし、それを利用してより盛り上げたPVを作ろうとする。
なぜなら今回の電王戦は盛り上がりに欠けている印象があるからだ。人類反撃と銘打ってあるものの、前哨戦のような立ち位置であったアマチュアの100万チャレンジで、人類が一勝もできなかったのである。中にはプロ級の強豪も存在しており、これでますますコンピューターには勝てないという空気になった。

前回は得体の知れないソフトに対して、人類が潰してやろうという立場だったと思う。ところが人類は負けた。こうなると立場がガラッと変わり、人類が挑戦するようになったのである。
将棋に理解のある方なら、今回の電王戦の前に、心のどこかで(どうせ勝てないんでしょ)という思いがあったのではないか。あまりにも前回のGPSは衝撃的だった。
将棋を知らない方ならなおさらである。前回プロが負けたことによって、それで結論付け、もう見ようともしない。つまりコンピューターが勝ち過ぎたのである。強さを見せつけた反面、興味は削がれた。私の友人に至っては「電王戦あったの?」と聞いていたくらいである。

となると、ドワンゴはどうやって盛り上げるか。
正直、初戦が大きな一番だったように思う。
私ならこういうシナリオを作る。
人類反撃、そのためには初戦で人類に勝ってもらわないといけない。そこでソフトは今回出場する中で、最も弱い習甦にした。前回も阿部四段に負けているし、格好の獲物である。
人類も若手のホープ菅井五段。コンピューター相手に強いイメージがあり、加えて研究熱心。これなら人類が勝つのではないか。そう思った方は多いはずだ。
ところが、蓋を開けてみれば人類の完敗だった。これはドワンゴも頭を抱えたと思う。本来なら人類に勝ってあのPVにさせたかった。そうすれば見方も変わっただろう。

そうして第二局へと移る。
やねうら王という名前を聞いて、色物なイメージを持った方も多いと思う。そして、これなら佐藤六段に勝機があるのではないかと感じた方も多いのではないか。私はそうだった。
だが、やねうら王は強かった。24のレーティングで悠々3000点オーバーしてみせた後に、開発者からこれでもまだ完全体ではないという旨の発言があったのである。
これではアップデートしたやねうら王に勝つのは無理。私は匙を投げた。
同時に興味が薄れ、人類の五連敗かなと思うようになった。
根底にそういう気持ちがあったから、世間はアップデートを許さなかったのかもしれない。

私が佐藤六段の立場だったら、萎えていたことは間違いない。早大の過去問を問いていたら直前になって東大の問題を渡された。そんな言い得て妙な表現があったが、その通りである。
私は今回のアップデートが発表された時、佐藤六段には「今まで私が練習してきた相手は弱過ぎて勝負にならなかった。強くなってくれてありがとうございます」みたいなセリフを期待していた。たとえ嘘でも、そう言ったほうが株は上がったと思うし、より盛り上がったはず。ドワンゴは佐藤六段をそういうキャラだと思って今回の違反に踏み切ったと思うのである。だが、佐藤六段は紳士だった。マジだった。プロレスみたいに仕立て上げようとしても、佐藤六段は本気だったのである。私は胸を打たれた。
ただ、もちろん怒るのもわかるのだが、はっきりと怒りを露わにしてほしくなかった。こんな炎上商法で盛り上がるような展開、誰も望んでいない。

開発者のフェアな戦いという主張はよくわかるし、佐藤六段の怒りもよくわかる。
ならば怒りをどこに向ければいいのか。もうドワンゴしか残っていないのである。提案を受け入れたのがダメだったと。
そうなのかもしれない。だが、やねうら王さんの主張を聞いたら心動かされるものがあるだろう。もちろん、佐藤六段のように真面目な方なら文句を言いたくなるかもしれない。やねうら王は現実に違反をしているのであるから。

ただ、やねうら王に対して失格とかいう烙印を押しているのは早計であろう。将棋界から携わらないように促すのもしかり。
将棋界とはこんなにギスギスしていたのかと目を覆いたくなる。最近のLPSAといい、いろいろおかしい。

結局、私は今回の件で全く不満はない。あとは人間がコンピューターにどれだけ対抗できるかが焦点である。
とにかく、米長前会長の思いであった「ファンが喜ぶ展開」を望むばかりだ。