スーチーさん、大勝利 | 「アジアの放浪者」のブログ

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11月8日に総選挙が行われたミャンマー。

一部の選挙区では、国軍と少数民族の戦闘が続いているため、選挙の実施が延期されていますが、それ以外の選挙区では結果が判明しました。

 

結果は、スーチー国家顧問率いる「国民民主連盟(NLD)」が、上院(Amyotha Hluttaw =民族代表院、224議席)で138議席、下院(Pyithu Hluttaw =人民代表院、440議席)で258議席、合わせて396議席を獲得。5年前に行われた前回選挙では390議席でしたので、それを上回る大勝利だといえそうです。

 

軍関係者やその支持者が中核となっている「連邦団結発展党(USDP)」は、上院7議席、下院26議席、合わせて33議席と後退。それでも第2党です。それ以外は、少数民族であるシャン族が結成している「シャン諸民族民主連盟(SNLD)」が両院合わせて15議席で第3党、続いてラカイン族による「アラカン民族党(ANP)」が第4党、同8議席です。

 

NLDが圧勝となっても、過去の軍政時代に制定された憲法の規定により、ミャンマー国軍は上院議員を56人、下院議員を110人推薦できます。もちろん、国軍の推薦議員は国軍系のUSDPと協力しますから、軍部は実質、両院合わせて199議席を獲得したことになります。これがスーチー国家顧問の大きな頭痛の種です。日本に当てはめれば、自衛隊が国会議員の25%を指名できる権限を保持しているようなもので、これでは文民統制などあったものではありません。憲法改正など重要法案には、両院合わせて75%の議員の賛成が必要とされていますから、これは大きな課題です。

 

さらに、少数民族との関係もたいへん難しい…。今回の選挙で第4党となった「アラカン民族党」。今回は8議席ですが、実はラカイン州では治安悪化(ラカイン族の一部武装勢力と国軍の戦闘)により投票が延期されているところが複数選挙区あります。そのため同党は、今後選挙が行われたら、間違いなく議席を伸ばすでしょう。前回選挙では同党は22議席を獲得し、第3党となっていましたから、ラカイン族の勢力は、スーチー国家顧問らのビルマ族にとっても、無視できません。そして国際的に大きな注目を集めているロヒンギャは、このラカイン族が支配しているラカイン州に住んでいて、ラカイン族と敵対関係にあるのです。ロヒンギャ問題の解決を急ぐと、ラカイン族との関係が一層ぎくしゃくし、ラカイン族の一部過激派勢力による独立運動が、より活気づくことになります。

 

安定多数の議席を維持したとはいえ、スーチー国家顧問にとってはたいへん困難な舵取りが続きます。しかし前回総選挙を超える議席数を獲得したことは、紛れもなく大きな一歩。5年後の次の総選挙まで、少しでも国を前進させてほしいと思います。また、この5年で後継者育成にも努めて欲しい。国家顧問は、もう75歳です。