やっかいな問題。
いつもの公園に行くと、まるで犬市のように常連犬達がごったがえし。
金曜日の夕方というのにパーティーにも行かず犬と遊んでいるとは、さすが
犬キチどもである。私達もその仲間であるが。
いつも見かけない犬もいたが、犬だけでなく子連れで来ている人々もいた。
七歳くらいの女の子がTABIをことのほか気に入って、追っかけまわして
いる。TABIは子供好きだから遊ぶのはかまわないが、この女の子はやたら
「お座り!伏せ!お手!持ってこい!」とコマンドを連発しては犬を従わせる
ことに執心。どの犬も嫌がって逃げていってしまう。
あまりしつこいようなら私が間に入ろうかと思ったが、TABIはこの子の
顔をキスぜめにしてついに彼女のほうから逃げてゆかせることに大成功。
賢い犬である。人間関係もこのテでいくと衝突が少ない。相手に攻撃的に
なるのではなく、やたら親切にして居心地を悪くすることによって相手が
去っていくよう仕向ける。「北風と太陽」の理論。
TABIのあと、この女の子はまだ生後一年あまりで子犬っぽいスタンダード
プードルにまとわりつき始めた。しかしこの犬はまだ子供なので手加減という
ことを知らず、荒っぽく遊んでいるうちに犬の歯が彼女の手に当たってしまった。
「ぎゃあああ!犬に噛まれた!」
と大声で泣き叫びながら父親の胸に駆け込む女の子。周囲の犬飼いは、凍り
ついたように注目。別に血が出たわけでなく、ちょっと痛かっただけのよう。
このようななんともないケースでも、もし親が騒いで当局に通報したり病院
へ駆け込んだ場合、その犬の飼い主にとっては大変な不幸になりうる。
そこへ彼女の母親が駆け寄り、厳しい声でこう言った。「犬に噛まれたんじゃ
ないよ、歯が当たっただけ!いい?!しつこくしたお前が悪い!」
そして気の毒そうにしているプードルの飼い主に「気にしないで、うちの子が
悪かったんだから」と。
いまどき珍しい、母の鑑である。
ポーズボタンを押したように凍り付いていた我々周囲も、ホッとして何事も
なかったように犬達と遊び出した。ま、今回はこれで済んだが、次回は子供
には気をつけなきゃね。