夏休みが終わり、セラピードッグ活動が今日からまた始まる。
コーディネーターからのメールで、訪問先の施設のうち何軒かが今年から
新しいポリシーを打ち出してきたので、従って欲しいとのこと。
「セラピー活動に参加する犬は全て、毎年獣医による健康診断書を提出する
こと。その内容によっては、施設は犬の入館を拒否する」
添付された書類を見ると、予防接種、フィラリヤ予防、寄生虫駆除など
ありとあらゆる検査の記録を提出するようになっている。施設は老人ホーム
など体の抵抗力の弱った人々のいる場所が含まれるため、セラピードッグが
病原菌を持ち込むのを恐れるのは理解できる。しかし、逆に言うと病院では
院内感染の恐れが常にあるし、ハンドラーや犬が病気をもらってしまうこと
だってあるのだ。それをいちいち気にしていたら、セラピー活動なんて
できるわけがない。
おまけに、「生食をしている犬の入館を拒否する」という項目もある。
これを見て、思い出したのは七、八年前に入っていたセラピードッグのリスト
で、同じことが問題になったこと。やはり突然、訪問先の施設から健康診断書
の提出を求められ、しかも「生食の犬はダメ」と言われ、かなりのハンドラー
が立腹していた。
「セラピー活動は尊いことだが、活動を続けるためにうちの犬にドライフード
を食べさせたり必要ないワクチンを打ったりすることはできない。残念だが
引退する」と、涙ながらに活動を去ったハンドラーが後を絶たなかった。
全くそのとおりだ。
私達は完全なボランティアで、ガソリン代も自腹で活動のために遠くまで
出かけていく。老人達や患者達、子供たちは犬が来るのを楽しみにしている
からだ。それなのに、健康診断書の提出?いくらかかると思ってるのか?
五年前にアメリカ転勤のため獣医に書いてもらったのは、簡単な検査を含め
て三百ドル以上だった。これを毎年、払えというのか?うちは一頭だから
いいが、何頭もセラピー活動に参加させている人だっている。
ポリシーと言えば聞こえがいいが、結局「セラピー犬はもう来なくていい」
と言っているのと同じである。それならそうと正直に断ればいいのに。
まわりくどい言い方をするのは、何も日本人だけではないのである。