前回は15°ごとの三角比の表を作りました。
今回は1°毎のよく見る三角比の表にその値の常用対数を付けてみました。
三角比は比と付いているので掛け算・割り算によく使われます。そこで掛け算・割り算を足し算・引き算に変換できる(常用)対数を付けてみました。sinの絶対値が常に1以下なので常用対数を取ると0以下になります(赤色の理由はマイナスを赤にしようとしたため)。
使い方は、下の常用対数表を使って基にする量を常用対数にして、三角比の常用対数を足し(引い)てから再び常用対数表を用いて真数(普通の数量)に戻すことで楽に計算出来ると思います。
対数の恩恵を特に受けるのは桁の大きい数の乗除です。例として、大きな数の喩えである、天文学的数字がある天文学があります(対数の使い道としては物理量を感覚的な指標にする為、例:音程と周波数、音量と音圧、情報量と組み合わせなど)。よって、下の3行は天文学に出てきそう値(常用対数)を独断で並べておきました。
・1°(度)=60′(分角)=3600″(秒角)で、1周(360°)が2π~6.28 rad(ラジアン)です。
・真空での光速(c)はメートル(m)の定義に使われていています(c=299,792,458 m/sとなるように定義)。
・万有引力定数(G)は万有引力の法則(万有引力が2体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例する)の比例定数で、6.67430(15)×10⁻¹¹ N・m²/kg²と定義されています。
・天文単位(ua)は地球と太陽の平均距離で、149,597,870,700 mと定義されています。
・1光年は光速で1年間に進む距離で、9,460,730,472,580,800 mと定義されています。
・1年は現在の暦の上では閏年が400年に97回(31,556,952 s)きますが、光年(ly)の定義には4年に1回のユリウス年(31,557,600 s)が用いられます。
・1パーセク(pc)と1天文単位(ua)を2辺に持つ直角三角形の角が1秒角になるように定義されています。扇形とする定義もありますが、1秒角と角度が極めて小さいので殆ど変わりません(少なくとも10桁は同じ)。
行間の緑の数字は2つの数字の差です。間の値を推測するのに役立てられたらと思います。また、この数字は元の関数の微分と関係があります。真数の方は(π/180)cosθで、常用対数の方は(1/ln10)×(π/180)×cotθ、常用対数表は(1/ln10)x⁻¹です。
1°より小さい角ではsinの値は角度に(充分な精度で)比例します。身近な角度の例として、
・1°の坂は約1.7%と表記されます。
・鉄道では急勾配の値35‰(3.5%)は約2°になります。
・月や太陽の視直径は約30′(0.5°)で、月の軌道が歪んでいる(円とは言い切れない程度の楕円)ので月の視直径は30′〜33′の間で変化するようです。このため太陽より大きく見える時と小さく見える時があります(日蝕の時、前者は皆既、後者は金冠になる)。
・視力1.0は1′の物を見分ける視力で、視力検査にて使われる視力1.0のランドルト環は直径7.5mm、幅・欠けた長さが1.5mmの大きさのものを5m先から見ます。視力は距離に比例し、環の大きさ(直径)に反比例します。
・1海里(NM)は子午線の1′ぶんの長さで1852 mと定義されます。また、マイル(1609.344 m)とは異なります。
・比較的近い恒星との距離は年周視差(地球が公転軌道のどこにあるかで見える方向が変わること)を用いて求められます。年周視差が1″になる距離が1パーセク(pc)です。太陽系から最も近い恒星であるαケンタウリでも年周視差は約0.75″で、距離にすると1.34パーセク(pc)離れています。