かつて、中国であった工場開所式の模様です。
・司会:「それでは、開宴に先立ちまして、○○様よりご挨拶を頂戴します。○○様、よろしくお願いいたします。」
・○○:「え~、ただいまご紹介にあずかりました××の○○でございます。本日は、ご多用のところ、また雨の後の大変お足元の悪いなかお運びいただきまして、誠にありがとうございます。多数ご臨席のご来賓の方々の中から、またこうして高いところからご挨拶をさせていただくのははなはだ恐縮ではございますが、ご指名でございますので、一言ご挨拶させていただきます。(では、君、訳してくれたまえ)」
・通訳:「…。ニーハオ!」
中国人通訳は、こうした前置きに意味がないものと考えて簡略化したのですが、このあと、「おい、君! あの通訳はちゃんと訳しているのかね!」と怒られたことは言うまでもありません。その後、この通訳は、中国の故事などを交え、「場を取り繕う」ようにしたとのことです。
日本の場合、こうした意味のない修飾が通例となっています。しかし、これをそのまま英語なり中国語に訳すと奇妙なことになります。最近、海外に行く方も増えたと思いますので、こうしたコミュニケーション上の「違い」について書いてみたいと思います。
企業の対外的なコミュニケーションを担うのは広報の仕事ですが、最も避けたい仕事は「謝罪会見」。私は2度も経験しました。日本では、何はともあれ「謝罪」です。自分に非はないのではないかと思っても、冒頭に「謝罪」しなければ「世間様」は許してくれません。「世間をお騒がせして大変申し訳ございません」など、英語で直訳できないし、そもそも欧米では謝罪から始まることはありません(淡々と事実を述べる)。日本の場合、「頭どり」と呼ばれる行事があり、ここで歩調が合わないと、「謝罪もできないのか!」と「世間様」から叩かれます。よって、①心の中で「1・2・3」と数える、②中心の人にタイミングを合わせる、という練習を必ずします。ついでに記者会見では、以下も注意します。
・会見用テーブルを白い布で覆う⇒貧乏ゆすりなどは「動揺がある」と見做される
・想定質問状は見えない場所に置く⇒「自分の言葉で語れないのか!」との批判を避ける
・発言者は事前に決める⇒発言者を探り合う「お見合い」になると、「責任者不在」と受け止められる
・ネームプレートを置く⇒後で記事にするときの発言者を記録できるようにする
・地味なスーツを選び、高級時計やブランド物を着用しない⇒以前、ロレックスの時計を付けた社長が記者会見をし、「世間に迷惑をかけながら、自分はロレックス」とそれだけが話題になった
恐らく、こんな国はほかにはありません(号泣などもってのほか)。冗長な修飾、謝罪を重視する対話、などなどですが、次回は海外との電子メールについて書いてみたいと思います。