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"Food for Thought"

日々考えていることを、自分の思考をまとめるためにも書きつづっています。

【本心】 平野 啓一郎 著

 

「マチネの終わり」「ある男」に続いての平野啓一郎氏。原田マハ氏とともにファンであります。

 

亡くなった母の「VF(バーチャル・フィギャ―)」を製作し、「自由死」を希望した「本心」や過去を、語りによって解き明かそうという内容です。主人公本人も、依頼者とともにバーチャルで体験を共有する「リアル・アバター」という仕事を請け負い、仮想空間も物語に出てきますが、仮想空間やAIはこれからの物語に必須アイテムとなりそうです。

 

前半は「VF」中心で読み進むのが遅かったのですが、後半からは登場人物も増え、盛り上がってきました。終盤も現代的ともいえる終わり方で、「進化する平野啓一郎」という印象です。キラキラとした文章だった「マチネの終わり」と比べると古語が増えて文体が変わったような気もしましたが、読後は本心や人間の出生など、色々と考えさせられた一冊です。

 

 外出もままならないなか、友人に韓国映画の「国際市場で逢いましょう!」がよいと薦められ自宅で見た。

 

 再開発地域にあって古い雑貨屋を売ろうとしない頑迷な老人。周囲は手を焼いている。しかし、彼は、朝鮮戦争で父・妹と生き別れ、家族のためにドイツの鉱山労働者やベトナム戦争での技術者として働き、試練を経ながら親族の店を買い取ったことが徐々に明らかになる。「今」だけを見れば、単なる頑迷な老人である。しかし、ここに至るまで、自分を犠牲にして家族を支えた「歴史」がある。

 

 人にはみな「歴史」があり、我々はそのおかげで「今」がある。単に、敬老とか孝行という言葉だけの問題ではなく、われわれが平和で豊かな暮らしをさせてもらっているのは、数々の先人たちのおかげと思わずにはいられない。歴史を背負った人の「今」が如何なる状況であろうと、この1点だけは後進のわれわれは忘れてはいけないと思う。

 

 映画の後半で、若き日の主人公が語る言葉がある。「自分たちが経験したことを子どもたちが経験しなくてよかった」と。社会は少しずつ良くなっている。そして、そこには資産を残してくれた無名の人たちがいることに、感謝しなければならない。

 

 

 日立製作所を69歳にて再生に導いた川村元会長の随想録。「一俗六仙」とは著者の造語で、「俗世間の仕事は1日にとどめ、残る6日は仙人のように俗世間から離れて好きなことをやる」という意味とのこと。現在、81歳とのことながら、読書・小唄・スキー・ゴルフ・ハイキング・散歩・瞑想と「六仙」三昧の姿が描かれています。

 これらの「仙」のなかでも、最大の愉しみは「読書」。以前から読書家で知られた著者ながら、哲学・歴史・文学・地理・科学と読まれる分野は幅広く、その知見が全体に散りばめられています(「総論は哲学・歴史、各論は文学」とも)。ビジネス書についての言及はなく古典中心ですが、大企業再生にはリベラルアーツが必須なのかと思わせるほどです。

 「ザ・ラストマン」のラストシーンを飾る「一俗六仙」。早く自分も到達したいと願わずにはいられない一冊です。

 

 タイトルが顰蹙を買いそうなのですが、本好きの友人から「面白かった本。読みやすいし笑える」と紹介されたものです。図書館で予約したところ、結構予約が入っていて先日ようやく手元に届きました。

 

 著者は税理士ですが、(自称、美人ではない)「自分」という「商品」をどう定義し、(合コン・就職)「市場」でどう「ポジショニング」して売り込むかをマーケティング手法を用いて展開しています(「帯」には、「入山章栄氏推薦」とも…)。失敗事例も豊富で、確かに抱腹絶倒!

 

 本書執筆中の、美人編集者からのシレっとした「上から目線」質問も笑えるのですが、それに対する著者の反応には声を出して笑ってしまいました。

 

 ただ、「機嫌いい人であれ」、「(他者のみならず)自分も顧客」、「自分という商品がフィットしない市場なら、市場を変える」など、意外に「深い」ところもあります(また、本人のパートナー選びで重要な点に「箸の持ち方」が入っているのも意外でした)。

 

 確かに「読みやすいし笑える」ので、そうした本を読みたいときにお薦めの一冊です。

 

 「三体」で物理は面白いと思ったのですが(実は、高校のとき、物理は「赤点」)、いまだわからないのが「超ひも理論」。万物の元となる素粒子は「ひも」でできているという「仮説」ですが、いくら本を読んでもわからない…。と、思っていたところ、タイトルからしてうってつけの本がありました。本当に、わかりやすい!!

 

 勿論、8割くらいわかったというところで、「人に説明せよ」と言われても無理なのですが、おおよそはこれでバッチリ!です。素「粒子」といっても粒ではなく、周波数をもった「ひも」の形をしていて、ひもの振動数や山谷がいくつあるかでその性質が決まるというもの(らしい)です。

 

 「三体」を読むと、荒唐無稽と思うところもありなのですが、「超ひも理論」になると、これが当たり前。原子を銀河系の大きさとすれば「ひも」はゾウリムシ程度で、「ひも」同士が飛び交ってエネルギー交換(電子が光子を吸ったり吐いたり)をし、この世界は9次元で、我々は「ブレーンワールド」という膜の中にいて、ほかにも宇宙がいっぱいあるのだそうです。もう、この世に何があっても不思議じゃない!という気持ちにさせてくれます。

 

 対話形式で、絵もたくさんあり、一瞬でもわかった気にさせてくれる一冊です。

 

【三体Ⅲ 死神永生】 劉 慈欣 著

 

 この著者の頭の中は、一体どうなっているのでしょう? 映画を観るような展開にグイグイ引き込まれるのは第一部・第二部ですが、科学的な見地にたった内容としてはこの第三部が凄いです。

 

 第二部までは、量子を中心にした内容でしたが、①四次元世界に入り込み二次元世界にも崩落、②空間をまげる曲率エンジンでの光速移動、③太陽系の脱出速度以下に光の速度を遅らせて太陽系全体を暗黒化、③18百万年の人工冬眠のあと小宇宙から大宇宙へ百億年移動、などなど(若干ネタバレですが、これでも何のことやら…?と思います)、次元・空間・光速・時間を自在に操り、科学をネタにこれだけの構想力をもって小説が書ける人は、そうそういないものと思います。

 

 著者の壮大な構想と知的格闘技を強いられ、頭脳に大汗をかきながら読了。宇宙を手玉にとるような本書を読むと、物事の見方が違ってくる気になります。

 

 それにしても、本当によくこんなことを考えるものだと、ほとほと感心しました。読了後、頭脳が少しだけ拡張したような気になる一冊です。

 

 「経営に生かす」とありますが、特に経営に限定したものではなく、易経の考え方を分かりやすく書いた著書と思います。

 

 易経は英語では「The Book of Changes」で、「変化の書」と呼べるのでしょうか。著者の本はほとんど読んでいるのですが、「竹村さん独特の」と書いたのは、易経の「乾為天」という卦での龍の成長過程についての記述から始まるためです(竹村さんご自身もここに感銘を受けたとあります)。

 

 龍もいきなり高く飛び立つのではなく、「潜龍」となって田に潜みながら志を確立し、師から基礎を学んで「見龍」となり、それを実践しつつも常に反省を怠らない「終日乾乾」の時を経て、やがて「躍龍」として天に昇ろうとし、遂には雲を呼び寄せ恵みの雨を降らせて人々を養う「飛龍」になるというものです。しかし、飛龍も驕り高ぶると雲を従えることができず「亢龍」というくだり龍となって「潜龍」に戻る、という「時の変化」を綴っています。

 

 時は変化するので、時流ではなく、その時にあった対応(これを「時中」と書かれています)をすることが大切で、冬に種を蒔いても無駄であり、尺取虫も伸びるためにはまず縮む時期が必要など、易経の考え方を分かりやすく記述しています。

 

 昨年1年は、個人的に色々とあったのですが、冬の時期は大地を養い、春の種まきに備えることが肝要でジタバタしないというこの著者の言葉には励まされたものです。

 

 陰と陽の捉え方もさまざまに書かれており、「時」について考えるのにはお薦めしたい一冊です。

初対面の人から言われる第一印象の言葉は、「優しそう」です。誉め言葉として話されると思いますが、実は、少しガッカリしたります。

 

企業で働く身として、「優しい」ことがいいことなのか確信が持てていないためです。部下を厳しく管理する、押出し強く交渉する、社内政治を強引に推し進める、など、企業人として「優しい」にプラスのイメージはありません。かと言って、こうした性格は、長い年月のなか、色々な経験をして今の形があるので、いきなり「変身!」もできません。書籍などでは、「これからのリーダーシップはサーバント型(支援型)」「競争より共創」「共感が重要な時代」などと書かれていますが、実際の企業にあっては旧来のやり方・思考が残っています。だからこそ、こうしたキーワードがヒットするのであり、既にそうなっていたら、書籍は売れず、また逆のことを主張するでしょう。

 

先日も、同じことを言われ、致し方なしと思っていたところ、私淑する伊那食品・塚越相談役の記事を読んで、目の前がひらきました(以下、URL)。

 

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人への思いやりを優しさと言うんですよ。「にんべんに憂う」って書く。だから優しいという字は、思いやりの事なんです。「人を憂う事に秀でた人」って書くと、「優秀」っていう字になる。これは偶然じゃない。やっぱり昔の人は考えている。思いやりの優れた人が優秀な人なんです。知識がある、計算が早い、そういう事じゃ無い。

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「人の心の痛みを知る人財になってほしい」。新入社員のときに人事担当役員が話した言葉です。時代が変わっても、根底に流れる考えは変わらないのでしょう。

 

https://toyotatimes.jp/feature/010.html?padid=from_t-times_top_feature010_190101

 

〇〇年前の入社式。当時の人事担当役員のご挨拶がありました。「何でもよいので学び続けること」「人の心の痛みのわかる人になること」の2つをあげていました。利益をあげることが企業目的と思っていた当時、「何を甘いことを言っているのか」と思ったものです。しかし、歳を重ねるうちに、この言葉がとても意味深いものだと思うようになりました。

「傍を楽にする」という点では、自分以外の「傍」(他者)がどのような痛みを持っているかがまずわからなければなりません。「人」を相手としない仕事はないので、他者の理解が重要だと思うようになりました。

いま、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)が注目されています。しかし、実際のところ、GAFAより成長しているのはマイクロソフト。我々が使っているOffice365が好調です。一時の低迷期を乗り越え、大きく軸足を変えたのは、現CEOのサティア・ナデラ氏。



 

そのマイクロソフトにとって、いま最も重要なことは「共感」と言います。それは人の痛みを共有できる共感能力。「コンパッション(思いやり)」や「エンパシー(共感)」を重視した経営を行うと公言し、ナデラCEOは、自らを「チーフ・エンパシー・オフィサー」と称しています。

  私たちは、満たされていない、明確にされていない
  顧客ニーズに応えるビジネスを展開している。
  深い共感力、つまり他者の視点を持つ力なしには、
  この目的を果たし続けることはできない。

子どもたちの間で、「うんこドリル」というのが流行っているそうです。親しみがある(?)からのようですが、発行には相当勇気がいったのではないでしょうか。今回は、このネタで言葉を遺しますが、途中で読むのをやめてもOKです。

 

幸福を追及しながら、48期連続増収増益を達成し、個人的に尊敬している伊那食品の塚越氏(トヨタ・豊田章男社長も尊敬し、トヨタ幹部も訪問)。このウンチを使った表現は、なかなか的を得ています。

 

   「利益」は健康な体から出るウンチである。

   ウンチを出すことを目的に生きている人はいません。

   でも、健康な身体なら、自然と毎日出ます。

   だから、「利益」を出そうと思えば、

   「健康な会社」をつくることを考えればいいわけです

 

続いては、納税で毎年トップ10に入る斎藤一人氏。怪しい~という人もいるのですが、この方のお話は味があって面白いです。

 

 広い公園を散歩していて、犬のウンコを見つけるの

 すると、ず~っと、そのウンコの話をする人がいるの

 それって、話している方も、聞いている方も楽しいかい?

 それより、きれいなお花畑の話をしな

 みんな、気持ちが明るくなるよ

 

小さい欠点に注目するより、いいところに焦点を当てようということですね。もうひとつ、お師匠さんや素敵な人との出会いについて。高野さんも、師匠と仰ぐ人の存在が重要と言っていましたが、斎藤氏は別の言い方をしています。

 

   自分からいい人に寄っていく必要もないんだ。

   ウンコにはハエが寄ってくる。

   花にはチョウがとまる(笑)。

   それが神の摂理で、すべてにこのルールが通じるの。

   あなたが花になれば、必ずきれいなチョウが飛んでくるよ。

   間違っても、ウンコにならないようにしようね(笑)。