それは誰しもがきっと持っているものであるのに、なぜか「それを言葉で説明しろ」と言われるとうまくできないものである。
俺は俺なりに楽しく37年間を生きてきたが、周りから見て幸せな人生だとは思えない。
でも、ある。そんな人生を過ごしてきた俺にも、青春はある。
こんなテーマで書こうと思ったことには、当たり前だが理由がある。
名古屋での仕事を終えた帰り道。新幹線の車内。
そこで俺の優秀なiPhone8+が流してきたのは大事MANブラザーズバンド、だった。
そして、曲を聞いているとアイルランドで乗ったバスの映像が、4Kテレビよろしく鮮明に俺の脳裏に思い出されたのだ。
改めて思った。俺の青春はアイルランドにあったのだ。
いや、まぁ、そんなことは大昔から分かっていたことだけれど。とにかく、強く再確認したのだ。
長く平穏に暮らした多摩や仕事を始めて引っ越したさいたまにも美しい思い出があるし、大好きな大事MANだって聞いていた。それでも、今、曲を聴いて浮かぶ情景はアイルランドのダブルデッカー(二階建てバス)なのだ。
何故か?
それはきっと18歳以後、訪れていない郷愁なのだろう。
故郷は遠くにありて思うもの。それと同じことが青春にも言えるのではないか。つまり、青春とは心の故郷なのではないか。
それを書きたくなったのだ。
俺が俺でなくなった町。それがアイルランド。優しくないはずの俺が少し優しくなった町。それがアイルランド。
自他ともに認めるほど、人格を変えた2年。
37の俺、つまり今の俺は、変わる前の自分も変わる最中の自分も、そして変わったあとの若かりし自分も、すべてを懐かしく大切に思い出している。
教会、公園、パブ、バス停、花屋、エトセトラ。どこにでも優しい人がいて時間がゆっくりと流れる町。バスや電車が遅れても、誰も怒らない町。怒るどころか、そんな出来事さえ新しい出会いのチャンスに変えてしまう町。
今でもね、覚えてるよ。忘れられないよ。
来年から、俺の新しい人生が始まる。住むところが変わる。仕事も変わる。
それでも、何も怖くない。
別れた同じ部活の彼女と顔を合わせたくない。そんな理由でアイルランドへ逃げることを決めたアタマの悪いクソガキが、言葉もまともに通じない国へ行った。
なのに、その結果、20年経った今でも当時の選択を全力で褒めたいくらい、大切な思い出を作れた。変え難い経験をした。それほど楽しい2年間を過ごしたのだ。
この先、俺に何があっても、俺は大丈夫。あれ以上の変化は、きっと、ない。
思い出しても手が届かない、俺の青春。それをもう一度求めるべく俺は仕事を辞め、住処を変える。
願わくば、57の俺が何かの曲を聴いてふと思い出す青春が、37の頃であるように。
そうなるために、俺はがんばる。
「ムラムラ」
約6年間、この名前で生きてきた。本当に楽しかった。
その名前を捨てるからにはそれ以上の楽しさを求める。そして、手に入れる。
色んな周りの人たちによって俺がムラムラでいられたこの6年間は、本当に幸せでした。
ありがとう。
そして、ムラムラよ。さようなら。